いま最も地域に溶け込みやすい仕掛けのある賃貸物件。八女里山賃貸のこと(後編)

連載後編のテーマは、八女で暮らしていく仕事のヒントと子育てについて。どんな仕事がある?という発想を、どんな仕事ができる?と広げてみると、意外な可能性が見えてくるかもしれません。

空き家×地域資源

まず仕事について伺うのは「八女のことをいろいろ知りたいならこの人」と名前が挙がる中島さん。空き家を改修した泊まれる町家『川のじ』を奥様と経営したり、福岡県建築住宅センターの空き家相談員もしている空き家のプロです。
中島さんはまちづくり、特に空き家含め不動産の活用について精通されていますので、地方で課題となっている空き家を活用したお仕事の可能性についてお聞きできればと思います。

中島宏典さん
(公財)京都市景観・まちづくりセンターにて、京町家の保全活用や地域まちづくり支援に携わった後、2014年に出身地の隣町・八女にJターン。国の重要伝統的建造物群保存地区の八女福島のまち並み保存によるまちづくり活動を約15年継続中。建築を入口に林業の川上にも関心を持ち、まちづくりと森づくりを連動させる「林業リノベ」に挑戦。ほか八女の伝統産業など様々なジャンルを横断した事業調整が得意な個人事業主として、多様なプロジェクトに関わる。八女里山賃貸住宅の立ち上げにも参画。

ーー人口の多い街中での不動産活用(場づくり等)は成り立つイメージがあるのですが、こういった山奥での場づくりってどうなんでしょうか?

中島さん:可能性は大いにあると思っています。たとえば長屋の隣町である黒木町では、筒井時正玩具花火製造所さん(国産線香花火の製造メーカー)が築70年の空き家をリノベーションして花火をじっくり楽しめる『川の家』という1日1組限定の宿を今夏に開業される予定です。この場所ならではのホタル鑑賞や川遊びもできるので、「空き家×伝統花火×川」という組み合わせは豊富な地域資源を活かした価値あるものではないでしょうか。

空き家をどうしたらいいかわからない地元の方も多いため、そういったものも資源として捉え、有効活用していければ仕事としてやっていけるかもしれません。地元の方に信頼されれば茅葺民家を譲り受けたりするような世界って実際にありますし、八女の場合は、川上が近いというのもあって、興味があれば木材生産・加工・建築・まち並みづくりまで一貫して関われる“顔の見える関係性”も特徴です。

ーー中島さんが思う地域に関わる際の注意ポイントってありますか?

中島さん:そうですね。いきなり大きな変化を持ち込むとハレーションは起きがちです。一見さんお断りじゃないんですけど、人を選んでいるというか。だからこそ今の伝統や街並みが生き残っていると言えると思います。
関わり方として、たとえばイベントの場合だと、規模感はまず小さく始めて徐々に慣れていくと「こういうことか」と、スムーズに関係性が築いていけると思います。あとは都市部とはスピード感が違うこともあるので、押し付けがないようにしていくことも必要だと思います。

決めつけすぎに柔軟に

次のお話をうかがうのは、カフェバーとフリースペースの『クマノス』を経営する田中臣仁朗さん。得意なアウトドアスキルを活かしながら、飲食やスペース運営にチャレンジしている臣仁朗さんはどんな計画を描いて、いまの仕事をつくっていったのでしょうか。

田中 臣仁朗さん・浩子さん
臣仁朗さんは大阪出身、スポーツ用品店のアウトドア部門の勤務歴がありBBQやアウトドア講習が得意。奥様の浩子さんは久留米出身、東京在住時には商業写真を仕事にしながらアートな写真作品も制作。それぞれ八女市にIターンし、地域おこし協力隊として従事中に出会い結婚。浩子さんは『ライフレーベル』を立ち上げて写真・動画撮影やデザインを広く手がける。パッケージだけでなく生産現場まで撮れて、ホームページ等にも広い裁量で関われるようになった八女での仕事は、思い入れが強くなったと楽しそう。

臣仁朗さん:『クマノス』は元々ぼろぼろの倉庫物件でした。協力隊の応募面接では、退職金でカフェバーを開くというストーリーを話しました。飲食だけだと上手くいくまで相当年数がかかるだろうと思ったし、当初はキッチンも下水道もなかったので、バーベキューのイベント出店やケータリングをしながら徐々にハードを整えようと考えていました。

当時八女市にはフリースペースというのがまだあまりなかったのですが、お客さんのやりたいことを柔軟に具現化できるスペースを作りたかったんです。逆にもしこれだけ広いスペースの用途をガチッと決めて整えてしまうと、それなりにお金もかかってしまいます。シンプルだからこそ、広く受け入れることができます。

ーー計画は描くけど決めすぎず、できることから始めて、お客さんを広く受け入れる。そうした柔軟さで場をつくってきたんですね。

臣仁朗さん:コロナ前には山口製材所さんと八女杉DIYマーケットという木材市をクマノスで開いたりもしました。そうしているうち、製材ででる端材はもったいないけど焼くしかないという話を山口さんから聞いて、僕から見たら価値があると思ったので『クマノス』で端材の販売をさせてもらっています。うちには木工機械もあるので、要望があれば大きな端材板で看板も作れます。

あと知り合い農家さんの採れすぎた野菜を受注販売したり地元の食材を使った商品開発もしています。いまは実験でやらせていただいているので、モノを預からせてもらえるだけでもありがたいですが、ゆくゆくは『クマノス』がいろんな人が寄り合う場所になって、地域のモノも売れる、そんな流れを作れたらと思っています。

ーー地域の人や資源とつながって新しい価値を作り出しているんですね。どのようにしてつながりを作っていったのでしょうか?

臣仁朗さん:2014年にIターンでやって来た時には、1日にバス2本しかこない上辺春という場所に住んで知り合いもいないというスタートでした。そこから郷にいれば郷に従えという考えで、出ごとなどにたくさん参加していました。たとえば地元のお祭りを取り仕切るNPOにも入って、アイデアを出したりちょっとした仕事も手伝ったりしていました。すると地域の重鎮みたいな方たちとも知り合えて、その人がまた人を紹介してくれたりして、そうやって広がっていきましたね。

とくに外から移住してきた方にお伝えしたいのは、時には「これが田舎だ」と受け入れることも必要です。たとえば「最近留守だったね」という地元の方から言われた何気ないことも“見張られている”ととるか、“見守られている”ととるかで違ってくると思います。デリケートな部分ですが、考え方ひとつでプラスマイナスは大きく振れます。まずは落ち着いて自分の中でいったん処理をしながら地域付き合いするといいと思いますよ。

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地域ぐるみで子育てを応援

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