いま最も地域に溶け込みやすい仕掛けのある賃貸物件。八女里山賃貸のこと(前編)

2020年、新型コロナウイルスの影響により「これからの暮らし」について改めて考えている方が増えているように感じます。私たちがご紹介する不動産情報についても問い合わせが増え始め、今まさに新たな変革期にあるのではないでしょうか。
そんな中、今回ご紹介するのは福岡県八女市の星野川沿いにある『里山ながや・星野川』という2018年につくられた長屋の賃貸物件。設立当初から注目されていたこちらの物件が2年の月日を経てどうなっていったのか、運営者や入居者、そして地元の方々も含め前後半の連載にてご紹介していきます。

前編では物件とエリアのストーリーを、後編では八女暮らしの魅力について。日々変化する社会の中で次の暮らし方を探る人にとって、良いヒントが見つかるとうれしいです。

山の中の長屋『里山ながや・星野川』

ご紹介する『里山ながや・星野川』は8軒が連なった長屋になります。クオリティの高いデザインでタイニーハウスのようなコンパクトさ。間取りは2LDKのメゾネットタイプで一軒家だけどシェアハウスみたいなご近所関係ができています。


中に入ると木のいい香りに癒されます。地元八女産の杉をふんだんに使い、お風呂は木風呂。庭先菜園の草花を揺らす風が家の中でも心地よく、すぐ目の前の川や山が彩る四季を室内でも感じられます。

そんな『里山ながや・星野川』を運営するのは八女里山賃貸株式会社の沖さんご夫婦。なぜこの八女市に長屋の物件をつくったのか背景のところからお話をうかがいました。

過疎地に人の循環を生み出したい

システムエンジニアとして都内で働いていた沖雅之さんが八女市を訪れたのは、八女市の町並みや林業を見学するトビムシのツアーがきっかけでした。トビムシとは林業を起点に持続可能な地域を実現しようと事業展開する会社で、沖さん夫婦はこの会社のファンだったといいます。

そしてトビムシが八女市で会社を立ち上げようというタイミングでトビムシに転職。妻の可奈さんと八女市に移住し、キャリアを変えて八女里山賃貸と八女流の2つの会社で働くようになりました。

沖 雅之さん・可奈さん
雅之さんは八女里山賃貸株式会社と循環型林業モデルを構築する地域商社、株式会社八女流(やめりゅう)の代表取締役で、株主である株式会社トビムシの社員。可奈さんは地域おこし協力隊として八女福島の重要伝統的建造物群保存地区のにぎわい創出業務と並行して株式会社八女流で事務業務を担当。ご夫婦で八女里山賃貸住宅の立ち上げから参画し、自身も管理人として長屋に暮らして3年目。

雅之さん:この長屋は『里山ながや・星野川』という名前で、目的には2つの軸があるんです。自然豊かな奥八女地域で暮らしたいけれどなかなか家を借りられない移住希望者と、いろいろな事情で貸せない地元との間のミスマッチ。1つ目はこのミスマッチを解消して「あの人なら貸してもいいよ」となるために、田舎暮らしを試す数年間で信頼も貯めていけるファーストステップ住居となることです。

2つ目は、八女には地域資源としていい杉があるので、これを使っていい空間をつくれることをもっと知ってもらえるようなショーケースとして機能することです。だから移住希望者さんにも見てもらいたいし、家を建てたいという人たちにも「八女の杉を使うとこんな風になる」と見てもらいたいと思っています。

ーーなるほど、モデルハウス的な目的もあったのですね。都会から移住するような方にはいわゆる“昔ながらの家”はハードル高そうな気がしますが、この長屋なら暮らしやすそうですね。

可奈さん:そうですね。田舎暮らしにはある程度DIYスキルがあるといいかもしれないですが、DIYに慣れていない人でもすぐ住める家でしかも賃貸で、というのは実はなかなか見つからないんですよ。
でも、ここなら修理やリノベなしに暮らし始めることができるので、自分なりの田舎暮らしを作ってもらえたらと思います。虫はそれなりに出ますけど。
それと、地元の方や慣習に徐々になじんでもらえるように私たちがおつなぎしてサポートします。
なので家賃は約7万円と比較的高いかもしれないですが、田舎でどんなライフスタイルをつくりたいかじっくり考える時間も作れるし、地元の人との関係性を築くための時間も含まれている、というような捉え方をしてもらえたら嬉しいです。八女市には家賃補助金もあるので活用のアドバイス可能です。

ーー八女での暮らしをはじめやすくなる仕掛けになっているんですね。長屋を通して信用を貯めながら、気に入ったら長屋を卒業して家を買うか借りる。空き部屋にはまた新しい人がくる。そうして田舎で暮らす人が増えていく循環ストーリーが素敵ですね。

雅之さん:実はこの長屋はハード面でもまだまだ育てている最中なんですよ。2018年6月築なので建ってから2年が経ちましたが、杉は日焼けすると色が銀色になってくるんですね。設計してくれたアトリエ・ワンの塚本由晴さんも杉が銀色になった時が完成形だと考えて、パイプとかもあらかじめグレーにデザインされています。
住んでいく中で完成していく、育てる家なんです。さらに長屋を通して、この久木原(くきはら)地区に新旧まざった新しいコミュニティも育ちつつあると感じています。田舎の中でも都会から入りやすいエリアになってきているのではないでしょうか。

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マイルドに地域に溶け込める

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