【特別連載 4/4】ソコナラMEETの成果と未来 – 参加企業インタビュー vol.2 株式会社博水 | 江越雄大専務取締役・高山真弓さん(店舗スタッフ)

関西電力グループのソコナラは、2024年7月、代表の三宅庸介氏の地元である福岡で人材マッチングサービス会社として設立されました。福岡移住計画ではソコナラの創業特集を計4回にわたって連載してきました。最終回の第4回目は株式会社博水の江越専務と社員の高山さんへインタビューしました。株式会社博水はソコナラが主催する人材マッチングイベント「ソコナラMEET」をきっかけに採用を実現しています。ソコナラ代表の三宅氏を交えて、それまでの経緯とこれからを聞きました。

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ー本日はありがとうございます。まずは江越専務へ質問です。株式会社博水について聞かせてください。

株式会社博水 専務取締役 江越雄大さん

江越専務取締役(以下敬称略):株式会社博水は博多で121年の歴史をもつ練り物屋です。さつま揚げ、いかしゅうまい、魚のすり身をコロッケにした福岡独特の「ギョロッケ」などを福岡市南区清水の自社工場で製造販売しています。企業理念については、現社長である父の代から「人を良くする」というテーマがあります。これは良い作り手によって良い製品がうまれ、会社も良くなるという考えに基づくものですが、将来的には私が5代目のアトツギとして会社の経営を担っていくことになります。私はこの考えを受け継ぎながら、博水のビジョンや経営方針をあらためて再設定していきたいと考えています。

ー江越さんは博水の専務としてどのようなことを目指し、活動をされているのですか。

江越:まずは博水がお客さまにとっての「推し企業」になることを目指しています。「推し」ということばはアイドルやキャラクターに使われることが一般的ですが、「推し活」を地域の企業に対してもしてもらうことで、人にも地域にも企業にも貢献できると考えているからです。具体的には博水の思いを演劇にした「愛は練り物」を制作してもらって、作品に自ら出演しています。また今年は、練り物を食卓の主役にすることをめざした新商品「HAKATA BOKOMEN!」を開発したのですが、資金集めにクラウドファンディングを活用したり、各地のイベントに出店するなどして博水の広報活動を積極的におこなっています。

※「HAKATA BOKOMEN !」は2024年10月31日に行われた第26回福岡デザインアワードで銀賞を受賞しました。

ーソコナラMEETに参加した理由を聞かせてください。

江越:博水は過去10年以上、新規の採用はおこなわず、十数名規模のまち工場の延長のような家族的な経営を続けてきました。私は博水の会社としての体制や制度を、将来的にもっと整えていきたいという思いがあり、採用部門の知識や経験値も積んでいかなければと思っていました。あと、先ほど話した地域の「推し企業」になるという目標に向けた活動や、これからの博水のビジョンを一緒に考えて実現してくれる仲間を探してもいました。そんなときに三宅さん(ソコナラ代表)から声をかけてもらったんです。

ー三宅さんは、なぜ株式会社博水さんをソコナラMEETへ招こうと思ったのでしょうか。

三宅(ソコナラ代表):江越さんの経歴やこれまでの活動内容をみていて、当社の理念に共鳴してくれると直感的に感じたからです。江越さんとは共通の知人もいませんでしたが、私の方からSNS経由でメッセージを送り、ソコナラMEETへの登壇をお願いしました。

ソコナラ 博水

江越:三宅さんからメッセージが届いた時、最初はちょっと驚いて、怪しいなと思いました(笑)。でもソコナラが関西電力のグループ会社であるという安心感と、三宅さんの人柄や起業の経緯を知ってそこに共感したので、ソコナラMEETへ参加してみようと思いました。

ー実際にソコナラMEETに参加してみてどうでしたか。

江越:参加した当時は、採用意欲がそれほど高いわけではありませんでしたが、プレゼンで会社の事業内容や理念に加え、推し企業のことや演劇の話などをしたところ、参加者の皆さんからとても好感度の高い反応をいただき、自信がつきました。
また、イベントの中のグループワークのあとに、何人かの参加者から博水で自分の経験を活かせるという提案をいただきました。食品製造会社の業務内容やイメージを違った角度から見てもらえたからだと思いますが、可能性はいろいろとあることに気づけました。そして、今正社員で働いてくれている高山さんとはこの時に接点ができたんですよ。

三宅:企業の経営層が会社のPRのために演劇をつくって自ら出演しているという話を聞いて、広報活動にはそういう手法もあるのかと我々にも気づきがありましたね(笑)。参加者の方々も江越さんに親近感をもち、この会社の人たちと一緒に仕事をしてみたいと思ったのではないでしょうか。最もイベントが沸いた瞬間が経営層の方が趣味に没頭されるエピソードでもあり、今後も経営層の方のプライベートな一面を企業の魅力として多くの人に知って戴きたいと考えています。
ソコナラMEETのグループワークは、最初にキャリアの棚卸をしたあと、もしも自分がその企業で働くとしたら何ができるかというワークをします。その作業によって参加者は企業を別の視点から見ることができるので、異なる業界であっても自分の経験やスキルがそこで活かせることに気づける仕掛けになっています。

ソコナラ 三宅庸介

株式会社ソコナラ代表 三宅庸介さん

ー高山さんはこのときのイベントに参加されて、その後株式会社博水へ転職されました。このとき参加したきっかけとイベントの印象をおしえてください。

高山真弓さん(以下敬称略):イベント告知で練り物屋さんの名前を見たのが参加のきっかけでした。IT企業などが参加する中で「練り物屋さん」というのは自分にとって親しみを感じる言葉だったので参加してみようと思いました。
私の前職は事務職で、与えられた業務をこなすことがメインの環境でした。でも私は元々、仕事が人生の中心で、やりたいことは仕事で実現したいタイプです。過去に乗馬クラブや飲食店で働いた経験もあって、そのころは面白く仕事をしていましたが、ハードワークでバランスを崩し、悩んだ末に事務職に転職したという経緯がありました。それでもやはり、仕事で何か面白いことをしたい、自己実現したいという思いがどこかにあって、バイトでもなんでもいいから仕事として面白がれる何かを探していました。
ソコナラMEETのグループワークでは、自分の発言に対して初対面の人たちからさまざまな意見やフィードバックをもらえたことが良かったです。気づくことがたくさんあって、自分のこともそれまでとは違う見方をすることができるようになり、とても貴重な体験になりました。

ソコナラMEET

ソコナラMEETで転職のきっかけをつかんだ高山さん(株式会社博水)

ー高山さんは本来、仕事をする上で主体性や創造性を求めるタイプなのでしょうか。博水さんに対してはどんな印象をもちましたか

高山:そうですね。博水は店舗で新しい接客サービスをつくったり、お客様と体験を共有することができるワークショップをやりたいといっていて、それは面白そうだと感じましたし、自分の経験も活かせると思いました。当時はすぐに転職する考えはなかったのですが、博水に関心を持ったので、イベント終了後に自分から江越さんに連絡をして詳しく話を聞かせてもらう機会をつくりました。その時から副業で博水のアルバイトをすることになり、数か月後に正社員になりました。今はまた仕事が趣味みたいになっています(笑)。

ー博水へ入社して、今後どんなことを目指していますか。

高山:正社員になった現在は、店舗での接客から商品の提供、通販部門の事務など幅広く業務に関わっています。店長(江越さんのお母さん)が新人のアイデアでも積極的に現場に取り入れる方なので、自分のアイデアが形になっていく面白さを感じています。
今後は専務(江越)の話にもあったように、これから博水が地域の推し企業になるために力を尽くしたいと思っています。そのためにまずは自分がよい接客をして、お客様が繰り返しお店にきていただけるようにしていきたいと思います。地域に貢献することが、少しずつ地域のみなさんとの関係を深めていくと思うので。そして将来的には私たちから地域に対して何かしらの働きかけができるような会社になっていけたらと思っています。

ー江越さんに伺います。新しい社員も加わりました。今後の株式会社博水の展望をお聞かせください。

江越:地域の推し企業となった後の長期的な話をすると、もう一つ実現したいことは日本の伝統食でもある練り物食品の認知度と普及率の向上です。
現代では練り物の認知や需要が昔よりも下がっています。また福岡近隣には鹿児島や山口など練り物の強い県がありますが、その中でも福岡の練り物業界が弱いという現状があります。そういった状況を乗り越えて、博水を福岡の練り物業界を盛り上げ牽引する企業にしていきたいと思っています。
また、ローカルに根差しつつも海外にも目を向けてグローバルな展開を目指したいですね。ただ生産量を増やすということではなく、本物の日本の伝統食の認知と普及の拡大に取り組みたい。練り物で実績をつくれたら、納豆や味噌など他の日本の伝統食にも事業を広げていけたらと考えています。

株式会社博水

ー最後に三宅さんに聞きます。博水と高山さんのマッチング事例は、まさにソコナラが今後実現させたいことではないでしょうか。実績や人脈もない実証期間中にこの成果が得られたポイントは何だったと分析されていますか。

三宅:好奇心と行動力をもって動いている企業の経営層である江越さんと参加者であった高山さんがお互いの思いに共鳴したことが一番のポイントだったのではないでしょうか。好奇心から目の前の「ソコナラMEETに参加する」という行為を選択した二人がお互いを引き寄せる形となり、結果的に企業として、人生として素晴らしい転機を生み出されました。このような偶然の出会いから、人・企業・地域の転機を創造し続けていきたいと、江越さんと高山さんのお話を聞いて改めて感じました。お二人のような人生の転機を作り出すために、ぜひ皆さんにも積極的に「行動する」という選択肢を取っていただきたいと思います。ソコナラの存在が皆さんの「転機」のきっかけとなればこんなにうれしいことはないですね。

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株式会社博水:創業121年の5代続く練り物製造会社。原料と製法にこだわった練り物を製造。日本伝統食のひとつである練り物を後世に繋ぎ世界に広めるため、地域の学校給食から海外輸出まで販売を行う。「魚を主菜から主食に」をコンセプトに練り物で作る麺を開発し、練り物の魅力を改めて発信している。

株式会社ソコナラ:本社を創業者の地元福岡市に置く関西電力発の社内ベンチャー。転職支援サービス「ソコナラ」を通じて、転職希望者が経営層との対話により新たなキャリアを描く場を提供しています。また、代表の三宅氏は雑誌「Ambitions」で日本のイントラプレナー50人に選出され、その革新性が注目されています

取材後記
4回にわたって掲載してきた特別連載は今回で最終回です。取材を通じて、三宅代表の起業の思いやそれに共鳴した福岡の企業の経営層の話を身近に聞くことができました。この方々との出会いは福岡移住計画としても大変大きな出来事でした。人と地域とそこにある仕事を盛り上げる取り組みを、私たちが今後も続けていくことで、福岡はもっと面白いまちになっていくことでしょう。過去の記事もぜひ読み返してみてください。

前回までの記事
【特別連載1/4】福岡で未来を創る!関西電力グループ・ソコナラが挑む新たな人材マッチング ~ 代表 三宅庸介氏、単独インタビュー

【特別連載 2/4】「ソコナラMEET」未来を創る企業と人が出会う場所 – 関西電力グループ・株式会社ソコナラ 2023年度イベント開催レポート

【特別連載3/4】ソコナラMEETの成果と未来 – 参加企業インタビュー vol.1 株式会社クアンド | 佐伯拓磨CFO・笹木椿さん(広報経理担当)

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撮影:霜田広太郎
撮影協力:個室型シェアオフィス・レンタルオフィスMol.t(モル・ト) / 博多イーストテラス

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