【ぼくらが連れて行きたい店vol.47】優しい食と木の道具たち。大切な気持ちが手渡されるカフェ(jingoro)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

「食と木をテーマにカフェを作ります」というお話をうかがったのは、1年と少し前に記事にした取材時のこと。そしてつい先日、お店をはじめた明田ふき子さんから「新しい空間が出来ました」とお知らせが届きました。
耳納連山の麓。草木がそよぎ、秋の気配が感じられる風の中、新たな活動を始めた『jingoro』。これからのお話をうかがいに行ってきました。

―前回取材をさせていただいてからオープンされるまで、きっとあっという間だったかと思います。木工所と同じく、木の香りが漂う空間に癒されます。今回はふき子さんたちがカフェ立ち上げを決められるまでのお話と、これからのことをうかがえたらと思っています。大学時代は東京でしたね? どうしてこちらへ戻ってこようと思われたのでしょう?

娘を授かったから、ですね。私自身が自然に囲まれた(うきは市)吉井町で生まれ育ったので、娘が東京で生まれ育っていくことに対して、はたしてどうなんだろうと。
あと就職活動の時も同じように疑問を感じたんです。“この会社でずっと働き続けたいです”と正直に言えなくて。そうやっていろいろと考えていた背景があって、両親が“本当にやりたいことが見つかるまで、こっちへ戻ってきたら?”って言ってくれたんです。移住については夫もすっと受け入れてくれて、2人でこちらへ戻る決意をしました。

―娘さんが生まれたあと、夫・一城さんはお父さまである山口和宏さんの木工のお手伝い、そしてふき子さんは娘さんの保育所入所まで子育てを中心に暮らしていらっしゃいました。一城さんにとっては全く初めてのことに向き合ったわけで、言わば「吸収の時期」だったろうと思います。それから「カフェを始める」までは、どのように辿り着いたのでしょう?

最初のきっかけはいまお店で夫が担当している珈琲ですね。こちらに戻ってきてから珈琲の作り手の方々とご縁がつながったんです。その中で、だんだんと珈琲に興味を持つようになっていた時に、“昔、東京の青山でお店を営んでいらした『大坊珈琲店』の大坊さんが、神戸で珈琲を淹れる機会があるよ”と耳にして。神戸まで飲みに行きました。そしたら更に興味が出てきて、大坊さんに珈琲を教えていただける講習会を大阪へ受けに行ったり、『富士珈機』から限定50台で出たオリジナルの焙煎機を買い求めたり。今もここで使っています。

▲夫・一城さんが珈琲の焙煎を担当。

それと、父も“作っているものを気軽に見ていただける場所を作りたい”という想いがありました。最初は木工所横の敷地内に作ろうとしましたが、建築基準法の関係で出来ないとなって。そうこうしている間に、この場所とご縁がつながりました。前回の取材は、確か図面が出来上がった頃です。

▲お店には父・山口和宏さんの作品がずらり。

―「実際に器や家具に触れていただける場所を作りたい」という気持ちに、一城さんの珈琲が加わって。色々なことが熟成されて出来上がったのがこのお店なんですね。オープンに至るまで、たくさんお考えになったことがあると思います。まず、なぜ吉井町の町中ではなく、この山苞の道に構えられたのでしょう?

もともと木工所の横に作ろうとしていたこともあり“山の中の方がうちっぽいよね”と。自然の中でお店をしたい、お客様をお迎えしたいと思っていたので。それと、ご近所の方々にとって農作業の途中の寛ぎ場所のような、老若男女関わらずちょっと立ち寄れるような場所にしたかったんです。実際にお店をオープンしたら、学生時代の担任だった先生が来てくださったり、木工所のご近所さんたちが連れだって来てくれたりがうれしくて。同級生も家族連れで来てくれて、そんな体験なかなか無いでしょう。すごくうれしかったです。

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これからの作り手と一緒に成長したい

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