商品やサービス自体は知っているけれども、どこのどういう会社が手がけているものだろう?
ふと、そう思ったことはないだろうか。このコーナーはそんな会社の中身を見学・取材させていただくことで、福岡県内の素敵な会社の本質を紹介していくものです。
<<本記事は前編に続き「ふくやが考える福岡への想い」についてお届けします>>
―以前、私たちは『紅乙女酒造』さんを取材させていただきました。ふくやさんが福岡の企業再建やイベントの支援などを積極的に展開されているのはなぜでしょう?
冒頭にお話したように、創業者が「世の中のためになる生き方をしなければいけない」という強い信念を持って創業した会社だからです。そもそも社会の役に立つために作った会社であり、食料品や明太子を売って儲けるために作った会社ではないのです。
紅乙女酒造さんの場合は、ゴマ焼酎の元祖であり、田主丸で大きな雇用を抱えていらっしゃったので、地域のためにもうちで引き受けることにしました。
―支援の依頼がきたら、全て検討されているとうかがったことがあります。確か『福岡サンパレス』も支援されていますね。
そうですね。『福岡サンパレス』は、財団法人で大きな赤字が続いていて、やめるか民間に委託するかという段階になり、ホールを残したいという思いで、うちが民間委託で受けました。私自身も3年目から社長を務め、どうにか黒字化できました。
M&Aを含めて、ご相談の話はよくいただきます。実際にお会いして話を聞いたりして、もちろん全部検討させていただきお返事しています。ただ、何でもかんでも支援するわけではないんですよ。新規性のある・誰もやったことがない・地元のためになることを、期間限定で応援したり、少額でも長く応援したり、お金だけでなく人を出したりしています。イベントは特にスポンサーがつきにくいので1回目にうちが支援して、呼び水の役割を担うこともあります。
スポーツ支援でも、ぶっちぎりでオリンピックに行くような選手ではなくて、もう少し頑張ったら出られるような、最近では卓球の早田ひな選手を応援したり、『アビスパ福岡』の支援も2013年から続けています。
―福岡のイメージアップにも貢献されていますよね。
福岡がいいイメージであってほしいという思いはあります。福岡が元気で活発なイメージがあるからこそ、私たちの明太子も福岡・博多の名物として売れるわけで、地域ブランドに対してお金や時間を使い、維持していかなければいけないと考えています。
創業から70年経つと創業者の思いは薄くなりそうですが、私たちはそのまま引き継いでいます。創業時の思いが強く、今の会長ももっと支援したいと話していますから。今は営業利益の約2割程度を支援にあてていて、年間1億5,000万円以上になっています。
我々はきれいごとを言い続けるためにも、ちゃんと本業で利益を出し続けなければいけないと思っています。
―御社にとっての課題があれば教えてください。
一つは、本業をどう頑張っていくかということですね。社会の変化に伴って、事業構造をどう転換していくかという真っ只中にあります。今は明太子を軸にしていますが、同時に仮に明太子がなくなったらどうしようかということも考えています。
もう一つお話をすると、私の後継者をどうするかという問題もあります。同族経営にしろ、プロパー社員から社長を出すにしろ、どちらにしても次はもう創業者を知らない世代になってしまう。私は祖父を直接知っているので、世間から見ると変なことでも納得いくのですが、創業者を直接知らなくて歴史上の人物になってしまうと、この思いを継ぐのは大変だろうと思うんです。
―どんな形で思いを継承していくのでしょうか?
70周年を機に、写真資料などを豊富に入れて社史を作り直しました。あとは「めんたいぴりり」のようなドラマや映画を通じて、創業者のコアの思想はここだと伝わるような形を残していきたいと思っています。私自身は高校から演劇畑なので、どう伝えるかという部分はこだわってよく考えています。
―最後に、ふくやさんの今後の目標や展望についてお聞かせください。
いわゆる地域貢献や社会貢献の部分で、「お願いします」と頼まれたことを断らずに受けられるようになりたい。それができるくらい、きちんと本業で利益を出したいです。
―社会貢献がメインですか。
そういう会社ですからね(笑)。社会貢献の活動をしやすくするために、財団法人の設立も考えています。今は本業の利益の中から出していて、事業価値があるかどうか外から見て判断しづらい面もあります。会社が危なくなったら支援もとまるというのは困るので、続けるために何ができるか考えたいと思っています。
そもそもの会社設立の目的は、“世の中の役に立つこと”。一方で、お中元やお歳暮などの贈答用をはじめ明太子を作って販売することで世の中に立つという方向もあります。そこで出た利益を何に使うかという話でいくと、もちろん事業投資もしますが、社会や地域に対して還元していく。そのボリュームが大きくなればたくさん還元できるので、本業の商売を頑張りましょうという話ですね。
―本当にすごい。
私はここで育ってきたから疑問を持たなかったのですが、一般的に見たら変かなと思う部分もあります。私の講演の演題が「ふくやという変な会社」というくらいですから。ただ、今は時代が追いついてきている感覚がすごくあって、10年前に講演していたときと今では温度が違う。いわゆる欧米の資本主義だけが正解ではない。こんな変な会社が当たり前になったらいいなと思います。前はCSRという言葉もなかったけれど、今は公益資本主義という考え方も出てきて、少しずつ社会にも広まっているように感じます。ひとりで栄えるんじゃなくて、みんなでやろうやという感じですね。そして、「福岡はよかろうが」「福岡はよかろうもん」と言い続けられるようにしていかなければいかんですね。
【株式会社ふくや】
https://www.fukuya.com/
福岡県福岡市博多区中洲2-6-10