企業も新様式へ。GMOペパボはどのようにしてテレワークを常態化したのか?

プロセス重視型に変更

――顔を合わせる機会が減ることで難しくなるのが「人事評価」。何か対策はとられているのでしょうか。

船橋さん:今年の1月から新しい評価制度を取り入れていたのですが、実は1年前から準備していたもので、コロナとは無関係。ただ、テレワーク環境にフィットする評価制度なので、今後もこのまま継続する予定です。

――どんな評価制度なのでしょうか。

船橋さん:弊社は等級制度を用いているのですが、以前の評価制度は各等級に則した半期毎の評価と、期初に設定した目標の達成率に応じた評価で運用していました。刷新後は、新設した等級要件をベースに、プロセス重視型に変更。具体的には、各パートナーに自己評価をテキストでまとめてったものをもとに評価するフローになったので、マイクロマネジメントをしなくても評価を行えるようになりました。

――テレワークになると、サボってしまうパートナーがいるのでは、という懸念はないですか?

船橋さん:実は、サボっている人がいるかも、というアンテナは張っていないですね。私の部署の場合、東京と福岡に分かれているんですが、これまではコミュニケーションがどうしても東京勤務のメンバーに偏重してしまっていたんです。全員がリモートになったことで情報が均一化され、それぞれの動きが偏りなく見えるようになりました。また、テキストでの情報共有の機会も増え、情報が可視化されるだけでなく、アウトプットの重要性をより感じています。

伊早坂さん:私も同じ意見です。オフィスにいた時には、上司と2人で話していたことも、「Slack」などのオープンな場所でテキストで会話をすることが増え、上司の言葉をそのままみんなと共有することができるようになりました。情報が一律化されて、同じ情報を同じタイミングで知ることができますし、その会話を見て、「私この情報持っていますよ」と新しい意見やアイデアをもらえたりすることも。属人化してしまっていた業務が減り、効率化が図れるようになったと思います。

▲上長とのコミュニケーションもSlack上がメインとなり、チームへの情報共有が一律化された。

これからのテレワーク、これからのペパボ

――採用の仕方も変わっていくのでしょうか?

船橋さん:単純に、選択肢や可能性がすごく広がったと思います。弊社は価値観の共有を大切にしているので、リアルなコミュニケーションをまったくゼロにすることはしませんが、これまでのように毎日会社に行くというルール自体が見直されたので、国内であればどこに住んでいても仲間として迎え入れる準備ができたっていうことは、私たちもとてもうれしく思います。

――今後の課題などは見えていますか?

船橋さん:まだwithコロナのフェーズなので、ポストコロナにシフトした時、どういう状況になっているのか正直読み切れない部分があります。現時点では大きな課題はありませんが、それは短期的な観点であって、長期的にどんなところが課題になるのか現状では見えていません。今後は、この体制を継続しながら、問題点を素早く察知し、変動する社会に対しても先手を打っていかなければいけないと思っています。

――テレワークを基本体制として実施してきて「こういうところを改善してほしい」などといった声はパートナーからあがってきているのでしょうか?

伊早坂さん:「ノートパソコンのみでは作業がしづらい」や「作業用の椅子や机がなく不便」などの声が上がっていたので、オフィスで使っていた椅子を貸し出したり、モニタやデスク、椅子の購入の際に補助を出したりしています。

――テレワークについてはこれから取り入れたいと思っている企業の方も多いと思います。まずはどういったところからはじめたらいいと思われますか?

伊早坂さん:弊社としては「どの会社もテレワークを導入するべき」という考えはまったくありません。弊社がテレワークと相性がよかっただけであって、いろんな働き方がある中のひとつだと思っています。もし、これから導入を考えている会社さんがいらっしゃれば、作業環境の整備だけでなく、社員のみなさんからの声を事前に集めて、様々な想定をしておくことがとても重要になるかと思います。また、先行してテレワークを導入した企業の事例も参考になりますよね。弊社でも「ペパボHRブログ」などで情報をアウトプットしていますので、ヒントにしていただけたら幸いです(笑)。

船橋さん:そしてもう一つ、弊社は企業理念やミッションのほかに、“わたしたちが大切にしている3つのこと(みんなと仲良くすること・ファンを増やすこと・アウトプットすること)”というのを掲げています。これはパートナー全員が自然と口にするほど本当に大切にしていて、この価値観をみんなで共有=約束しているっていうのは弊社の強みのひとつになっています。
働き方が変わっても、パートナー全員の中にこの約束ごと(結束力)が軸にあるからうまくいっている部分もあるのかな、と思っています。
また、私の部署では 2〜3年前から“新しい働き方に備える”をテーマに、評価制度の改定、労務管理のシステムや育児介護と仕事を両立させているパートナーに対する制度の制定など、様々な取り組みを行ってきました。そしてこのコロナ禍でのテレワークの導入。これがたまたま弊社にはぴったりハマったわけです。
制度もテレワークも結局“手段”であって、大切なのは事業運営や、会社の活動を通してどんな価値を提供したいのかということだと思います。何をするのか、なぜこれをやるのかということを念頭におきながら、適切な“手段”を選んでいけばいいと考えてます。その上で、テレワークという手段が有効なのであれば、他社様においても私たちの取り組みを参考にしていただければうれしいですし、私たちも他社様の動きを参考にさせてもらうこともあると思います。もちろん私たちも今が最高だとは思っていません。もちろんその時々のベストは尽くしますが、今後も試行錯誤は続いていきます。

2011年よりスタートした訓練による経験やノウハウの蓄積。さらにはパートナー同士の結束力の強さ。すべてがうまく混ざり合い、調和することで、テレワークで成果を上げることができたのではないでしょうか。今後さらに多様化していく働き方の“お手本”となっていくことは間違いありません。

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