いとしまシェアハウスに聞く、いま考えたい「農のある暮らし」

棚田オーナーをきっかけに

--シェアハウスは人が入れ替わるけれど、浩一さんと千春さんのお二人がずっと変わらず暮らしを続けているからこそ地域の人に信頼されているのだと思います。今年3年目になる「棚田オーナー制度」というのも取り組まれていますが、元は地域の人からの声かけから始まったのでしょうか?

そうですね。空いている棚田があるからシェアハウスで何かできないかと声をかけてもらいました。棚田は美味しいお米が育つと言われる反面、平坦地の田んぼに比べて「手間は2倍、収穫半分」というくらい生産性が低くて。だからといって田んぼをやめてしまうと棚田はあっという間に山に戻ってしまう。3年で木とか生えてきますからね。そうなると畑へのイノシシ被害なども増えるし、何よりも今まで守ってきた里山の暮らしが失われてしまう。であれば棚田をお米という物だけではなく、里山の価値を伝えるコンテンツにできないかと考えました。それが「棚田オーナー制度」です。

--「里山の価値を伝える」…どういうことでしょう?

「田んぼ体験」というと、田植えや稲刈りがクローズアップされがちですが、実は草刈りだとか水を引き込むための土木作業だとか通年でやることがたくさんあります。さらに、今回の棚田は集落の中でも小さくて農業機械を入れることができず、田植えなどすべて手でやる必要があります。でも、人の手でしなくてはいけない作業が多い分、手植えや天日干しなど、昔ながらの里山の暮らしや営みに関われる。薬に頼らず人間が草刈りをがんばることで無農薬のお米ができる。手植えで人が田んぼに入ることで稲にもいい刺激になる。そうやって手をかけたことでお米をより身近に感じたり美味しく感じたりできる。何より棚田で感じることのできる自然は気持ちよく、みんなでの共同作業は楽しいです。そんな体験も含めた価値を届けたいと思うんです。

--確かに、普段の買い物とか、食べ物に対する意識が変わりそうです。棚田オーナー、面白そうですね。制度の内容をもう少し教えてください。

先ほどお話したように、棚田は普通の田んぼ以上に手間がかかります。日々の管理以外にも、イノシシよけの柵をつくったり、石垣を直したり・・・。棚田をこれからも残し続けるため、持続可能な形にするために、オーナーさんからの支援金を元に地域に雇用までつくっていきたいと考えています。
オーナーさんには、6月の田植えから、夏から秋にかけては毎月田んぼに来てもらって、草刈りなどを通して里山の暮らしの営みを体験いただきます。他にも、米づくりのイロハを学んでもらったり、子どもと一緒に泥だらけになったりと、色々な楽しみ方があります。もちろん基本的な管理はこちらが行うので「そんなに田んぼに通えない」という方でも大丈夫です。

--オーナーは個人でもなれるのでしょうか。

今までは企業オーナーのみでしたが、今年から個人オーナーの募集も始めました。個人オーナーは月あたり1,500円からご参加いただけます。田舎暮らしにちょっと興味あるけど、なかなか一歩が踏み出せない人などが、先ほどお話した「野菜づくりキット」同様に「農のある暮らし」を気軽に始められるきっかけになればと思っています。昨年は東京から来てくれる方もいました。福岡移住も検討している方で毎月の田んぼ仕事の傍ら、移住の下見もしていました。移住したくても、移住先探しやネットワークづくりってなかなか難しいですよね。この棚田オーナー制度を通して、移住先の検討もしてもらえると面白いと思います。

--それはいいですね。縁がないと、なかなか地域のことってわからないですしね。

ほかにも、将来は自分で田んぼをやりたいけれど、わからないことだらけで不安…みたいな方にもおすすめしたいです。棚田オーナー制度では、田植えから収穫まできちんとサポートしますので、安心してご参加いただけます。この体験をベースに、自分で田んぼを借りてみてもいいし、トラクターに乗ってもう少し大規模な田んぼに挑戦するなど、ステップアップするのもいいと思います。

--棚田オーナー制度をきっかけに、色々広がりそうですね!ところで、今はコロナのことは無視できないと思いますが、オーナー制度を行う上ではどんな影響がありますか?

そうですね。企業オーナーと個人オーナーの田植えの日は別にして、人が密集する状況はつくらないようにします。個人オーナーは1枚の田んぼを複数人で体験してもらうのですが、そのときも距離を保てるよう配慮します。
それから交流の部分。昨年はオーナー同士の交流があったり、新年会をやったり、自分で育てたお米を持ち寄って、人と人との交流を大事にしていました。今年も交流はあきらめたくないので、オンラインでの実施などを考えています。田植えの様子などもオンライン配信していきたいですね。

--オンライン配信!今ならではですね。

ゆくゆくはVRなどの技術を使って「バーチャル田植え」体験などしていきたいですね。新しいことはどんどん取り込んでいきたいと思っています。
僕は新しい体験がすごく好きなんです。田舎暮らしは単調に思われがちだけど、実際は刺激がとてもあるから毎年飽きない。今年も田植えの時期だ!とか、冬から春にかけては野草を採って食べたり、1年ぶりのたけのこを楽しんだり
そんな里山暮らしのカルチャーに共感して、実践していく人が増えるといいなと思っています。がっつり関わる人だけではなく、都会にいながらも応援してくれるとか、皆それぞれ心地の良い形で「農のある暮らし」に関わってもらえるようデザインしていきたいです。
自分たちの代で営みを続けて、次にこの土地に住みたい人にバトンを渡していければいいと思っています。

ハードルの高そうな「農のある暮らし」。お話をうかがって自分で暮らしをつくれることによる安心は、これからの暮らしを考える上では改めて考えてみたいテーマでした。一方地域側にも田や畑を維持しなければならないという課題もあります。『いとしまシェアハウス』がまさにそのパイプ役として良いきっかけをつくってくれていると思います。気軽にはじめられる「野菜づくりキット」や「棚田オーナー」、興味のある方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

「棚田オーナー」へのお問い合わせはこちらから。
http://itsmsh.com/blog/2020/05/17/tanada_co_owner/
暮らしのDIYキット定期便「Be」
https://itoshimash.thebase.in/items/29661895
DIYキットにおける想いはこちらのブログから
http://itsmsh.com/blog/2020/06/06/be/

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