【いま思うこと】「移住」は大事(おおごと)という概念が無くなる日。

移住の変化

「移住」・・・広辞苑によると他の土地または国に移り住むこと。と書かれています。

この「移住」という概念は、その時の社会とともに変化してきているように思います。屯田兵やブラジル移民、在日朝鮮人の帰還事業などの国策まで含め、移住の形がさまざま変化してきた中で、直近で大きく変化したのは3.11がきっかけではないでしょうか。3.11以前は「移住=スローライフ」、「移住=シニア層がするもの」というイメージが大半であったと思います。現に当時の移住雑誌等の媒体ターゲットはシニア層ばかりでした。

もちろん今でもスローライフやシニア層といったイメージは残りつつも、3.11以降、明らかに変わったのは、スローライフ思考ではない若年層が移住という選択肢を選びはじめたということです。
私自身も3.11以降に東京から移住してきましたが、福岡での暮らしにスローライフを求めたわけではありませんでした。

▲移住後、観光プログラムを作っていた際の写真

3.11により都市集中型、年功序列といったこれまでのステータスとされてきた価値観も変わり、より主体的にこれからの暮らし方を考え、その移り住んだ先で何をやっていきたいのか、何のためにやるのかをそれぞれが素直に考えはじめたのが移住の動きにつながっているのだと思います。

追うように国による地方創生のもと、各自治体でも移住プロモーションが行われ、移住はもはやスタンダードな選択肢になっていきました。

そして、この新型コロナウイルス。感染拡大防止のため3密と呼ばれる密集を避けて暮らす対策。そしてwithコロナに向けた新生活様式。今また3.11の時以上に価値観が変わろうとしています。

企業は半ば強制的にテレワークの導入をはじめ、Twitter社は希望者の永久リモート勤務を許可。東芝は週休3日制の導入、自社オフィスを解約する企業まで出てくるなど、そうはいかない職業もあるものの社会が変わろうとしているのは明らかだと思います。

私たち福岡移住計画にも不動産の相談が増え始め、出勤する必要のない暮らしを選ぶ方が増えてきているように感じます。高い賃料払って密集する大都市に住む意味が薄れ、距離的にもベースコスト的にも余白のある非都市型の暮らしを求めてくる方が今後ますます増えてくるのではないでしょうか。

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インターネット環境の整備や、企業側からすると労務管理の調整など課題はあるものの、社会の動きを踏まえればリモート勤務の常態化や出勤時間で管理する労務は無くなっていくのだろうと感じています。

要は今よりもっと当たり前に、会社の所在地に関わらず“好きな場所”で暮らしながら働ける世の中になってくると思います。
そうなるとこれまでの「移住」という概念も、引っ越しくらいの感覚のものになるのではないでしょうか。「移住」という言葉も必要無くなるくらいに。

学生時代を思い返すと、就きたい職業の会社が地方にはなく、そういった会社があるのは首都圏ばかりで、結果、首都圏に出ないといけないもどかしさがありました。住み慣れた街から離れ、まるで仕事のために生きるような感覚になったのを覚えています。

「移住」は大事(おおごと)というような概念が無くなり、場所にとらわれず働ける世の中がもっと浸透すれば、よりやり甲斐をもって仕事に臨む人が増えるのではないでしょうか。労務環境が変わることで実力や成果主義のワークスタイルになることも経済的には良い効果をもたらすかもしれません。

さらには、労務環境が変わることで、「働く」という概念も変わってくるのではないかと思うのです。

当たり前のように平日の9時〜18時で働くのではなく、平日の日中でも子育てしていいし、畑や釣りなどの趣味をやってもいい。逆に土日に仕事を入れることもいい。仕事とプライベートがいい具合にグラデーションする感覚のように。
労務管理面ではいろいろとハードルがありそうですが、テレワーク導入で“意外とやれる”と気づいた企業も多いはず。社会の流れと法律が合わず実態と法律の乖離がきっと出てきていると思うので、タイミングがあえば労務関係のプロの方にでもそのあたりの話をうかがってみたいものです。

「移住」は大事(おおごと)という概念が無くなる日。その時、働く個人にとっても企業にとっても今よりもっと素直で優しい社会になっていればいいなと思います。

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