うなぎの寝床とリ・パブリックがタッグを組んだ「UNAラボラトリーズ」が考える地域文化とこの先目指すもの。

※こちらの記事はメール取材および過去撮影素材、提供素材にて構成しております。

白壁土蔵の町並みが印象的な八女市福島。決して人通りは多くないこの場所で、2012年、筑後地方の手仕事から生まれた作品や特産品を集めたアンテナショップとして「うなぎの寝床」はスタートしました。久留米絣をつかった「MONPE(もんぺ)」を販売し、現在では全国各地のセレクトショップで取り扱われるほどのヒット商品に育て上げ、セレクトショップとしてだけではなくメーカーとしての地位も確立。そして、2019年夏。うなぎの寝床代表・白水高広さんと地域でのイノベーション創出に取り組んでいる株式会社リ・パブリックがタッグを組み、新会社「UNAラボラトリーズ」が立ち上げられました。さらに、2020年1月下旬には、新雑誌『TRAVEL UNA』を創刊。
今回は、“「UNAラボラトリーズ」が考える地域文化とは?”をテーマに、共同代表の白水さんと、『TRAVEL UNA』編集長の田村あやさんにお話をうかがいました。

“物”だけではなく、“体験”を提供したい

ーー「UNAラボラトリーズ」を立ち上げたきっかけ、事業内容についてお教えていただけますでしょうか。

白水さん:うなぎの寝床として、“物”と“人”を通して地域文化を伝える活動をしているのですが、“物”を流通させることはできても、使い手(買い手)側に地域文化や作り手といった背景の部分までなかなか伝え切れていないというジレンマをずっと抱えていました。うなぎの寝床のメンバーは“物”を流通させることに関してはプロなのですが、“情報・体験”を伝えることができるメンバーはそう多くはなかったのです。“物”を届ける人材と“情報・体験”を届ける人材は違う、というより、別の方がいいだろうと考え、地域でのイノベーション創出を数多く手がけている、リ・パブリックの代表・田村大さんと共同で「UNAラボラトリーズ」を立ち上げることにしました。

ーー白水さんは、「うなぎの寝床」を“地域文化商社”と謳っていますが、「UNAラボラトリーズ」として考える地域文化とはどのようなものなのでしょうか?

白水さん:地域文化を考える時、まず「文化とは何か?」を考える必要があると思っています。「UNAラボラトリーズ」の“UNA”は、United Native Acumenの略。「故郷の〜」などの意味を持つ“Native”という単語が入っています。僕なりの文化の解釈は、「土地と人、人と人が関わり合い生まれる現象の総体」。つまり、地域文化というのは地域における土地と人、人と人の関係性から生まれる現象と風習ということになります。その土地独自に醸成された知恵のようなものがNativeで、文化の中に独自のNative性が潜んでいると考えています。

ーーそれぞれの地域に独自の特色があるということですね。その地域文化に関わる面白さやビジネスとしての可能性を教えていただけますでしょうか。

あやさん:わたしは会社の転勤で東京から福岡に移住してきました。それが約6年前です。福岡はコンパクトで住みやすく、人もフレンドリーで、すぐに大好きになりました。ただ、もともと映画や演劇を見るのが好きだったので、ミニシアターや劇場が少ないことを残念に思っていました。当時は生意気にも「福岡には文化がない」と思っていました。しかし、ある仕事がきっかけで、九州には東京とは違うあり方の文化があることに気づいたんです。そして、それは福岡市のような都市部よりも都市と離れたところに存在することが多いことにも気づきました。地域の文化というと、どうしても東京との対比で、素朴・癒し、あるいは伝統などの文脈に解釈されがちですが、わたしは洗練、知的、先進性などの面もあると思っています。そして、便宜上「九州の文化」と言っていますが、九州と一括りにできない多様性もあります。「UNAラボラトリーズ」として、こうした地域文化の多層的な面白さを伝えていけたらと思っています。また、移住者であるからこそ、郷土愛とは違う側面から、九州の地域文化を捉えてみたいと思います。こうした地域文化に興味をもつ人は多くはないかもしれないけれど確実にいると感じています。これをグローバルに展開していくことでビジネスチャンスも生まれるのではないでしょうか。

単なる雑誌ではない『TRAVEL UNA』

ーーグローバルに展開していくというひとつの形が、「UNAラボラトリーズ」から出版された『TRAVEL UNA』ということでしょうか?

あやさん:日本の方に読んでいただきたいのはもちろんですが、海外の方にも読んでいただきたいと思い、全ての原稿を日本語と英語で併記しました。テキスタイルの専門用語も多く、日本の文化的背景にもとづいた内容だったので、翻訳の部分では苦労しました。でも、おかげさまでInstagramなどを通じて繋がった海外の方から注文が入ることもあり、文化を共通言語に地域と地域がグローバルに繋がっていく手応えを感じています。

ーー初回のテーマを「ネイティブテキスタイル」にしたのはどうしてですか?

あやさん:取り上げたいテーマはたくさんあったのですが、うなぎの寝床が久留米絣のモンペを中心に活動してきたこともあり、創刊のテーマに選びました。「トラディショナルテキスタイル」や「ローカルテキスタイル」ではなく「ネイティブテキスタイル」としたのはわたしたちの提案です。「ネイティブ」という言葉には、プロダクトとしてのテキスタイルを消費するだけでなく、その背景にある作り手の想いや、歴史や風土を一緒に感じて欲しいという想いがあります。単に昔から続いている技術だから素晴らしいとか、グローバル資本主義はダメでローカルは良いなどというつもりは全然なくて、ネイティブを大切にしつつ、他の地域と交わりながら現代にアップデートしていくことが重要だと思っています。


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時代とともに変化してこその伝統

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