【連載】福岡からデジタルイノベーションを起こすメンバーズグループの採用戦略(1/2)

大企業を対象にしたWebサイト運用とデジタルクリエイターの育成に力を注ぎ、「社員が幸せになれる、デジタルクリエイターが活躍する社会を創りたい」と掲げるメンバーズ。そんな中、同社が福岡を舞台に取り組む採用活動はその理念を表すプロジェクトのひとつです。そこで本連載では福岡での採用活動について深堀りしつつ、メンバーズグループがどのような人材を求めているのかをお届けします。

人手不足を「育成」で解決する

「人手不足」が叫ばれ、求人と求職の需要と供給のバランスが大きく崩れている今日この頃。これは、IT業界といえども変わらない状況です。それどころか、IT業界は今後さらに求人難が拡大するという分析もあります。
経済産業省が2019年4月に発表した「IT人材需給に関する調査」では、2018年に22万人だった人材不足が、2020年には30万人、2025年には36万人、2030年には45万人にまで拡大し、大幅な労働生産性の向上などがなければ、IT業界の人材需給ギャップは続くとしています。
さらに、今後需要が拡大するとみられるIoTやAIなど先端IT技術を持った技術者の需要は一層増えると見込まれています。

▲出典:IT人材需給に関する調査(概要)より抜粋(平成31年4月 経済産業省)

その状況に一石を投じ、大きく注目を集めているのが株式会社メンバーズを中核とした、メンバーズグループです。メンバーズは、インターネットの黎明期にあたる1995年に設立。当初はインターネットでのビジネス支援や広告の取扱い全般が業務の中心でしたが、現在は「社員が幸せになれる、デジタルクリエイターが活躍する社会を創りたい」という思いから、大企業のWebサイト企画やWebサイト運用、システム開発、ソーシャルメディアマーケティングなどデジタルマーケティング領域を総合的に支援するだけでなく、Webサイト運用と人材育成に特化したグループ会社を立ち上げるなど、デジタルマーケティング領域を総合的に支援できる体制へと大きく方向転換しました。メンバーズグループが掲げるのは、「1万人構想」。デジタルクリエイターの育成に力を入れ、グループ企業全体で1万人体制を目指します。

そのメンバーズグループが福岡を舞台に採用プロジェクトをスタートしました。「福岡からデジタルイノベーションを!」をキーワードに、100人のデジタルクリエイター(Webデザイナー、エンジニア、ディレクターなど)を採用するという取り組みです。すでに、ワークショップや勉強会・交流会も開催し、採用活動がスタートしています。

今回は、メンバーズグループの株式会社メンバーズキャリアで代表取締役社長を務める嶋津靖人さんに、メンバーズグループの採用戦略、そしてなぜ福岡に拠点を開設したのかなどについてお話をうかがいました。

幸せを追求するために世界一幸せな国へ

――メンバーズにはグループ全体では「1万人」を目指すという構想もあるとうかがいました。まず、メンバーズグループとはどのような企業グループなのか、そこからお聞きしたいと思います。

デジタルクリエイターとして働くことで、社員やスタッフみんなが幸せになることを追求する会社です。ちょっとフワッとして見えるかも知れませんが、弊社は50歳を過ぎた経営サイドの人間が「幸せってなんだろう……」なんてことを大真面目に話し合うような会社なんですよ。

――幸せ、ですか。人によっていろいろあると思いますが、例えばお給料がたくさんもらえるとか、勤務時間が短いとか、有給休暇を取りやすいとか、そういうことでしょうか?

もちろん、それも幸せのひとつだと思います。
実は、僕らは本当に「幸せな働き方」を追求するためにデンマークに視察に行ったんですよ。デンマークは、国連の「世界幸福度ランキング」でずっとトップ3、何度も1位になっています。そこで世界的に有名なデザインファームや教育施設の見学をしたり、いろんな人たちに幸福感についての話を聞いてきました。そしてわかったのは、幸せの原点には「デモクラシー」がある、ということです。

――デモクラシーというと民主主義のことですね。会社での幸せとデモクラシーとなると、経営の課題について多数決で決めるとか……?

いえ、デモクラシーとは多数決でものごとを決めることではないんですよ。弊社の場合は、会社の経営や意思決定のプロセスに、民主的な形で社員がコミットできることを意味しています。いわば「全員参加型経営」です。自分たちの意見が会社の仕組みや方針に反映されることで、社員にやりがいを感じてほしいのです。
実際に、社員の代表と会社の役員が話し合う「メンバーズ協議会」を毎年度1回開催しています。これは有志の社員からなる「MEMBERSWAY委員会」が主催する取り組みで、メンバーズグループ全体の方向性や会社の仕組みなどについて議論し、協議会として役員との話し合いに臨みます。協議会の模様は、全国の拠点にオンラインで配信しています。
協議会では、これまでにも公認バカンス制度(連続5日間以上の有給取得を強く推奨し、土日を含め9日以上の休暇とする)やリモート飲み会応援制度(各地方拠点間の交流や社員の横のつながりを促進するため、常駐社員とリモートワーク社員、時短勤務社員も含めて交流を促進する)など、社員からの意見を基にした新しい取り組みが実現しています。

▲メンバーズ協議会

――「デモクラシー」「社員代表と役員の交渉」と聞くと、ちょっと組合運動っぽいですね。

いや、それは全然違うんですよ。弊社では、社員は「労働者」ではなく、役員と一緒に経営に参画する「経営の主体」だ、と考えています。こうやって仲間と一緒に、会社と一緒に成長し続けることが、仕事をする上での「幸せ」を実現するために大きな糧になると考えています。
他には、「上司を役職名で呼ぶの禁止」ということもやっていますよ。「社長!」とか「部長!」じゃなくて、「○○さん」と呼ぶようにする。こうやって、立場や年齢に関係なく自由に意見を言い合える社風を作っています。

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東京一極集中に風穴を開ける

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