イベント「時代を置いていく ぼくらのワークスタイル」〜トークセッションレポート〜

違和感が生む別軸の流れ

窪田:ではこれから本題に入っていこうと思います。時代の変化とともに働き方とか暮らし方が多様化してきている世の中で、今後もいろいろなサービスが生まれてくると思いますが、新しいことを先駆者として仕掛けているみなさんはどんな未来像を描いているのでしょうか?
特に木村さんは、これまでのアパレル業界の通説を覆して、クラウドファウンディングという新しい形でブランドを立ち上げられているので、そのあたり聞かせていただけないでしょうか。

木村さん:そうですね。『ALL YOURS』立ち上げ前は大手アパレルメーカーに勤務していました。当時1,200億円だった売上が、900億、800億…と年々低迷。それが2008年頃でした。それまでは自己表現の手段が“洋服”という人が多かったのですが、インターネットの一般的普及により自己表現の手段がどんどん多様化していったわけです。と、同時にSNSが盛り上がり、おしゃれをしたい人はどんどん洋服を買い換える。だからファストファッションブームが起こった。だったらぼくたちは、そのサイクルや大量生産で勝負するのではなく、ずっと着続けたいと思える洋服を作ってみたいと思ったんです。そしてそのアイデアを叶える手段として、IT業界がやっているような、プロトタイプをまず公開して、そのフィードバックをプロダクトに反映してくというようなことを洋服でもできないかなと考えていた時に思いついたのが、クラウドファウンディングでした。「こういうのを作りますよ」っていうのを先に出しておいて、欲しい人を募る。さらに、生の声を反映させる。そのことによって、販売した時にすごく歓迎されるようになるんですよ。

▲『ALL YOURS』のクラウドファンディングページ

白水さん:木村さんのやり方を見ていても思うんですが、より“体感”を大事にする時代に差し掛かったのかな、と。あっ『うなぎの寝床』代表で山田さんと同じく今日は『Bike is Life』の人としてこのトークに参加しています白水です(笑)。
ぼくはもともと建築業界にいたのですが、建築も自転車やアパレルと少し似ているんです。昔は、見た目が豪華だったり、個性的だったり、表現としての建築がすごく評価されていたんですが、今はクオリティの高いリノベなどを手がける業者が増え、体感がより重視されるようになっていますね。

木村さん:それ、すっごくわかります。ぼくたちもファッション領域で勝負しようと思うと、見た目のかっこよさや豪華さでは絶対勝てないんですよ。だからぼくたちはかっこよくない洋服を作りたいと常々思っているんです。

白水さん:それはどういうことですか?

木村さん:洋服をファッションとして見るのではなく、ライフスタイルに溶け込むプロダクトと捉えているんです。
服はコレクションで「流行り」が決まって、そこから一般的に浸透するまでがひとつのサイクルになっているのですが、以前はそのサイクルに3〜5年要していたんです。しかし、インターネットが普及してからというもの、それがすぐにストリーミングされ、ファストファッションブランドが同じようなプロダクトを販売するようになった、つまり3〜5年かかっていたものがほんの数ヶ月の短期サイクルになってしまったんです。そうすると、誰がトレンドを作っているのかもはやわからなくなってしまいますよね。だからぼくは、そのサイクルの外側にいたいなって思ったんです。情報や流行りで商売していくのではなく、ブランドの信頼で勝負したいと思っているんです。

山田さん:実は自転車も1年サイクルという短期でデザインや仕様が変化しています。半年経ったらもう型遅れになって売れなくなってしまう。それにはかなり違和感を感じていましたね。

窪田:だからこそこれまでにない新しい取り組みをはじめたと。みなさんはそういった業界全体を変えていこうということでしょうか?

白水さん:いや、業界を変える必要はないかなと思っています。流行のサイクルとはまた違う流れを作って、そこで勝負していければいいかな、と。

窪田:時代の流行と違う流れをつくるというのは、簡単なことではないと思いますが、その中で大切にしているものってどんなことでしょう?

木村さん:ひと昔に比べて今はものすごい情報量ですよね。そんな中さらに、アルゴリズムで最適化されて自分が興味を持っている情報しか入ってこなくなっているじゃないですか。そうすると違和感に触れる機会って圧倒的に少なくなります。となると、リアルな現場っていうのがより大事になってくる。だから今、『ALL YOURS』は47都道府県を対面販売してまわるイベントを実行中なんです。インターネットで拡散することには限界を感じていて。それよりも、現地で違和感を持って「何それ?」「なんだか面白そう」って見に来てくれる人と出会いたいなと思っているんです。そこで出た意見とかで新たな流れができるんです。

白水さん:違和感を作っていくのって面白いですよね。ぼくが自転車業界に携わりたいなって思ったのが、徒歩や車では感じることのない、様々な違和感や体感が生まれると思ったからなんです。

山田さん:実体験でいうと、八女を自転車で走った時にお茶の香りがして、すごく感動したんですよね。それって表面的な情報だけは得られないもので、リアルな体感ならではなんです。情報量が多い今の世の中で体感って本当に重要になってくると思います。

白水さん:あと別な話をすると、ぼくらに共通するのは業界の通説と違って、販売している自転車は丈夫さにもこだわっているので、『ALL YOURS』さんの洋服と同じで、ずっと同じものを使い続けられるんです。

窪田:ということはつまり、新しくものを買い換えない人が増えるっていうことですよね。会社としての売上は厳しくなってくるのではないでしょうか?

山田さん:そうそう。理想と会社を維持するための現実の差はありますが、自転車が何かしら課金することで壊れなくなり、半永久的に乗れる、かつ会社にも継続してお金が入ってくるという形。その形を実現しない限り、ほかの自転車メーカーと何ら代わりのないものになって、ぼくらの想いと違うものになってしまいます。だからこそ違う軸で挑戦し続けているんです。

白水さん:今後はレンタサイクルの事業も考えています。また地域とコンテンツをつなぐツールとして自転車を使ってもらい、実際に乗っていただくことで安全性や楽しみ方も伝えていこうと思っています。

木村さん:コンテンツ専攻で開発している自転車メーカーってないから、面白いですよね。ツーリズムパッケージ化していくのもいいですね。ぼくらも服を作って売るだけでなく、服ができる前の原料の産地や工房から相談を受けることもあります。そういった違う軸で新たな価値と会社としての広がりを持たせていきたいと思っています。

窪田:そういったところから流行に左右されない新たな流れが出来上がっていくんですね。

木村さん:昔は1週間のうち5日間は仕事着、2日は普段着という感覚でした。しかし、時代とともに、その境界線は曖昧に。今は週7でカジュアルウェアを着用している人も多いのではないでしょうか。だからこそ、先ほどの流行サイクル話含めストレスのない仕事着で着られる普段着として『ALL YOURS』の洋服を手にとっていただけたらと思っています。「インターネット時代のワークウェア」と言っているのもそういった意味合いがあります。
ちなみに『ALL YOURS』の洋服は着ていることすら忘れてしまうんで、今ぼくは、感覚でいうと裸なんですよ(笑)。

白水さん:裸!(笑)。木村さん、窪田さん、そして大五朗さんの話を聞いていても思うんですが、世間や会社がどうというよりも自分が何をしたいかをすごく大事にされていますよね。だから自分がどんな立場だろうと、自分ごととして問題や違和感をどう捉えるか、そういう体感が増えるのが理想だなと思っていて。ぼくは実際、大五朗さんに出会う前までは、自転車は乗れればなんでもいいと思っていました。しかし、いざ自分が関わることになると体感してみないとものの本質ってわからないものだなとつくづく感じたんです。

窪田:たしかに自分ごとに落とし込むと、シェアオフィスの席数に依存する運営って面白くないんです。それだと単なる箱貸しの場と変わらない、ぼくらが手がけるシェアオフィスでなくてよくなるんです。だからこそ入居いただいている方々のコミュニティを大切にしています。そうすることで運営側だけでなく、入居者発で新しいコトが生まれるんです。
あと体感という視点でいうと、シェアオフィスという空間はいろいろな人が出入りする場なので、多種多様な価値観に触れられるんです。これまで自分の中にあった“常識”とは異なったものに触れることも多く、それがきっかけで視野も広がるので、そこで得たものをアウトプットとして世の中にまだないものを生み出していきたいですね。

―――
常識にとらわれず、自分の価値観をストレートに表現しているみなさんの姿は、参加者のみなさんにとってもいいヒントになったのではないでしょうか。『ALL YOURS』『Bike is Life』、そして『SALT』の今後の活動に注目していただければと思います。
(メインおよびラスト写真撮影:小金丸和晃

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