トークセッション「福岡の未来を考えてみよう会議 in TOKYO」が開催されたのは昨年10月のこと。東京・渋谷のTRAIN TRAIN TRAINを会場に、福岡に拠点を構える投資&コンサル会社「株式会社ドーガン」の森大介代表取締役と、福岡出身で地方プロモーションを多く手がける博報堂ケトルの日野昌暢さんのふたりが、「福岡の未来」をテーマに語り合いました。
福岡は「独自のお祭り体質」で横のつながりがすぐにできたり、みんなで仕事を盛り上げやすいプラス面が語られる一方、「専門人材が不足している」や「老舗企業の古い体質の壁がある」といった課題についても議論されました。一方で森代表によると「びっくりするような優秀な人材が移住をしてくるようなことも増えたと実感する」とも語られました。
こうしたことを踏まえて、今年1月21日に同じ会場にて「福岡の未来を考えてみよう会議 in TOKYO Part.2」が開催されました。
今回は橋本正徳さん(株式会社ヌーラボ代表取締役)、両角将太さん(F Ventures LLP パートナー)、林龍平さん(ドーガン・ベータ代表取締役パートナー)、さらに前回に引き続き日野昌暢さん(博報堂ケトル プロデューサー)が登壇。「地方最強都市」と呼ばれることもあり、盛り上がっているらしい福岡の実情はどうなのか。そして、福岡で仕事をするとはどういうことなのか……福岡を愛してやまない4名による熱いトークが繰り広げられました。
福岡人は、福岡のネットニュースをシェアしがち
▲博報堂ケトル日野昌暢さん
日野:一時期、転勤で福岡に戻ったことがあったのですが、引越した当初に東京出身の嫁さんが福岡の人の「距離の近さ」にびびっていました。会った途端に以前からの友だちのように接してくる。この「距離の近さ」は、福岡人の特長でもある「コミュニティ気質」のベースになっていますよね。初めて会ったけど、同じ街に住んどう人やし、俺もしてもらって来たけんお前にもしてやるばい!と、というような。
林:大きなスタートアップを成功させた人たちが、次の若い人たちや教育機関に投資する、シリコンバレーの「ペイフォワード文化」が福岡にもある気がするんですよね。コミュニティが永続的に発展するために、次の世代にどんどんバトンを渡して行こうと。他の地方に講演に行く機会があるんですけど、そのたびに福岡っていいなと思うんです。地域の問題を自分ごととしてどうにかしたいという意識がある。どこのことかは言えませんけど、ある県の行政企画イベントに登壇させていただいた際、お客さんから意見を募ったら、「行政は何をしてくれるんですか」というようなものしか出てこないんです。こうした自分ごと意識が福岡は進んでいるという感じがありますね。
橋本:地方創生というと、よその誰かがやって来て解決してくれるのを待っちゃう傾向があるんだけど、そんな都合のいい話は現実にはないんです。福岡の場合、やりたいことがある人たちが、誰かを待たずにそれぞれスタートしているところがあるんですね。そうした人同士が自然とアンサンブルを組んで目立ってきた。ヒーロー登場を待たず、自分の「やりたい」という気持ちで駆動してきたから福岡が注目を集めるようになってきた。他の都市も、真似するべき福岡のいいところだと思います。
林:他の地方だと圧倒的に行政が強く、地域の優秀な人材はほとんどが行政にいて、行政主体で物事が決まっていくんですね。だけど、福岡は歴史的に、民間主導で進めていくところがありますよね。
両角:行政に頼らない「自分ごと意識」や「民間主導」って、福岡の人が福岡を大好きすぎるところから出てきていると思うんですよね。ウェブで福岡のニュースが出ると、SNSで福岡の人たちが一斉に拡散してくれるんです。福岡のニュースというだけでみんなが応援する。
日野:僕も福岡市が運営するメディア「#FUKUOKA」に携わっていますが、PVの割にシェア数が多いんですよ。記事を公開すると、1000とか2000とか「いいね!」される。これってすごいと思うんですけど、PVもいいね数のちょっと上くらいだったりすることも。読んだ人はほぼ全員シェアしてるやん、みたいになってて(笑)。
橋本:スタートアップのニュースメディア「THE BRIDGE」でも、福岡界隈の記事を出すと福岡からのアクセスに偏るそうですね(笑)。
日野:#FUKUOKAのアクセス数は7割が東京をはじめとする域外からなのですが、東京に潜む福岡人たちのうごめきも感じます。福岡の人たちは自分たちの街で起こっていることを「いい!」と思ってるけど、よそからちゃんと取材されて、ウェブで記事になるってことが少ないけん、(第三者である)メディアが書いてくれた時には「ほらみて!みて!」ってシェアするんでしょうね。でも自分たちの地元が好きっていうのはプラスでしかないですよね。それが地域を盛り上げる原動力ですから。
ネックは地元企業の古い体質……でも変わりつつある?
▲ドーガン・ベータ代表取締役パートナー・林龍平さん
日野:前回の「福岡の未来を考えてみよう会議」では、林さんの上司の森大介さん(株式会社ドーガン代表取締役)にご登壇いただいたんですが、その際に森さんは「地元企業の古い体質の壁で苦労することが多い」と話されていました。
林:古い企業体質という部分なんですけど、二極化されてきた印象があります。確かに心配になるぐらい古いところもまだまだあるんですが、個人的にはそういうところはもう半分を切るぐらいには減ったかな、と。半分を切ったなら、あとはほっといてもだんだん変わってくるはずで、解決できるレベルになってきたなという感じがしています。
日野:それはいい流れですね。ただ、新しいことを受け入れて変化しているとして、それを自分たちで発信していくしかないわけですけど、地方の企業って情報発信がまだまだ下手な場合も多いですよね。すごく新しかったり、面白かったりすることをやっている企業もきっとあるんでしょうけど、(一般の人が)Uターン希望でそういう会社を知りたいと思っても、なかなか見つけることができない。これってどうしたらいいんでしょうね?
林:僕に個別に聞いてもらえれば、ベンチャースピリッツのある会社かどうかざっくりフィードバックできますけど。
日野:林さんに直接聞く(笑)。
林:あとは、会社のアウトプットを見ていると、なんとなくわかってくるかと思います。プレスリリースとかですね。
日野:確かにプレスリリースには会社の気持ちや情報リテラシーが出てきますね。いい方法ですね。