移住して、仕事はあるの? やっていける? 東京・渋谷発のトークイベントで語られた 「福岡と仕事、ホントの話」

福岡は東京より、自分の裁量で自由に仕事ができる


▲株式会社ヌーラボ代表取締役・橋本正徳さん

林:福岡に戻ってくる方も多いんですが、最近は東京出身で福岡に移住される方も増えています。UターンだけじゃなくてIターンですね。東京では仕事をしていても殺伐としていたり、精神的なストレスや摩擦が嫌で、「東京は疲れた」とか「東京は息苦しい」とかいう気持ちを持っていたんだけど、旅行とかで福岡に来たら非常に楽しくて、移住することにした、という話も聞きます。僕が仲の良い東京からの移住者は、福岡から上場企業を出そうとやる気満々ですね。

日野:そういう人が出てくるのは嬉しいですよね。でも橋本さんはそういった移住者に厳しい意見を持ってましたよね。

橋本:はい、厳しいです(笑)。単に東京の忙しさや人の多さが嫌で休息を取りたいのなら、他のリゾート地などに行けばいいんですよ。だけど、「東京は息苦しい」という表現をされる人のほとんどは、東京で自己表現ができない、やりにくいということだと思う。東京の企業はすごく組織的だろうから、個人個人の裁量がそれほど渡されていないということがあるんじゃないでしょうか。それが福岡に引っ越してくると、仕組み化されていない小さな会社が多く、大きな裁量を渡されるから、東京にいた頃の小さい裁量から解き放たれてずっとアクティブに活動ができるようになる。

日野:僕も以前、広告会社の営業で福岡に転勤しましたけど、組織が小さい分、個人の裁量がでかくなりましたね。

林:「がんばる」の定義がこの10年ぐらいで変わってきていると思うんです。限られた裁量の中でがんばるんじゃなくて、もっと自由なフィールドで自分のやりたいことをやっていくのが今の「がんばる」。自分の裁量で自由に働くと、仕事も人生も楽しくなる。福岡ではそれが実現できる状況になりつつあるということじゃないでしょうか。

日野:もちろん、その分自分で考えなきゃいけないってことでもありますけどね。組織の中で役割を果たすことに慣れちゃってる人が、急に「勝手にやっていいよ」と言われるとそれができないっていうのは実は多い。福岡の人たちは自分で何かやらないと始まらないから最初から自由にやっていて、それが街のムードも作っている。そういう福岡がいいなと思うんですよね。

福岡に必要とされている人材とは


▲F Ventures LLP パートナー・両角将太さん

日野:前回の森さんは「福岡には専門人材が圧倒的に不足している」とも話されていました。皆さん的に、こういう人が福岡にきて欲しいというのはありますか?

林:僕らの取引先でいうと、ファイナンスができる人、プログラムが書ける人。他もあらゆる人材が不足している状況です。ただ、友人の転職相談を受けていると、福岡に帰って働くならこういう会社があるよという話をしても、40ぐらいまで東京の大手にいた人はそれまでのキャリアを損失してしまう心配や、奥さんの反対、いわゆる“嫁ブロック”とかでなかなか難しいという現状もあります。

日野:給料も最初は下がっちゃいますしね。

林:でもベンチャースピリッツさえあれば活躍できる場はいくらでもあります。あとは給料が下がるのは覚悟の上で、でも仕事を楽しくやりたい、故郷に貢献したいという気持ちがあれば、ですね。

橋本:僕もベンチャースピリッツがある人がいいですね。必要なのは、戦略が組める人、デザインができる人。デザインというのは、グラフィックという意味ではなく、ユーザーエクスペリエンスとかストラテジーとかを含む広義の「デザイン」。今はまだ戦略とデザインは東京にあり、福岡はアウトソーシング先なんですね。でもシリコンバレーとかを見ていると、デザインと戦略が現場にあり、それ以外を外部という形で成長している。福岡がもっと伸びていくには、そういう人たちに福岡にきてもらうことが必要になると思っています。

林:福岡の盛り上がりはスタートアップと見られがちですけど、僕はあくまでも盛り上がっている事象の一つにスタートアップがあるという理解の仕方をしています。人と人の距離が近いので、小さいコミュニティの中で何かやるというのもやりやすい。

両角:僕はレガシーな産業にイノベーションの余地があると思っています。投資の戦略として、若い人たち、それとレガシー分野に挑戦する30代以上の人たち、この二つに的を絞ろうと決めているんです。例えば、インスタグラムなんかは若い人にしか見えなかったトレンドですし、そういうのを生み出すのは若い人の役割。対してレガシーな分野、農業とか、法律の規制が厳しい領域で戦うのはある程度社会経験を積んだ人たち。

林:農業はもちろん、医療や介護もそうですよね。車でちょっと行ったら介護施設がたくさんありますし、同じくちょっと行けば田んぼだらけ。地方ならではの課題を理解して、熱量を持って取り組んでいけるなら九州に限らずいいと思っています。

「福岡が一人勝ち」はウソ

日野:ただ、そういう人たちをどうやって地方に呼び込んでいくのか。さっきから福岡出身の人は福岡に帰りたくて当然という前提で話してるけど(笑)、必ずしもそうじゃないじゃないですか。僕らが大学出たのは20年前とかですけど、当時は福岡を出て東京に就職するのがかっこいいという感じがありましたよね。

林:その辺はだいぶ変わってきていると思いますね。両角さんがイベント”TORYUMON ”などで学生をインスパイアして地元のベンチャーとか投資家とマッチングされてますけど、そういう形で若い人を取り入れていくのが早いでしょうね。

日野:地方に残る方がかっこいいってね

両角:僕は東京と福岡を月半々ぐらいで行き来しているんですが、こうした2拠点生活のようなスタイルも今後増えてくるんじゃないでしょうか。最近はLCCもあって移動のハードルも下がってますし、ネットにつながればいつでも情報を得られるしSNSでコミュニケーションもとれるし、仕事も遠隔でできるようになる時代が来ると思います。

日野:2拠点はいいですよね。僕も福岡に戻ろうかと考えた時期もあったんですが、東京にも拠点や仕事がある状況で地方に関わる方が、お役に立てることが多いのかなと感じはじめています。こうやっていろんな選択肢が増えてはいますが、橋本さんの会社は福岡を拠点にしながら世界中から人を採用されていますけど、どういうやり方で?採用、大変じゃないですか?

橋本:普通に求人広告を出したり(笑)。うちの会社を選ぶというより、福岡に行きたいというモチベーションで調べてうちの会社を見つける、というケースもあるようです。あとは東京のすごく優秀な人と仲間になって、福岡に来てもらうということもやっています。現状は福岡一人勝ちみたいに言われてますけど、まだ勝ってないですからね。そう思ってる方は、メディアに騙されてますよね(笑)。

日野:ローカルでは地域から外に向けての情報発信の方法がまだまだ確立できていないですよね。私もコミュニケーションの仕事のプロとして、そこをなんとかしたいと思って地域の仕事に取り組んでいます。今日のようなイベントを通じて、福岡で何かやれるチャンスを見つけるきっかけになることを願っています。
(テキスト:田中元)

1 2

"暮らしのこと"の関連記事

keyboard_arrow_up