【F-LIFE SHIFT story vol.14】オランダから移住し、世界53カ国で読まれるコーヒーカルチャー誌を福岡で編集する理由。

福岡はアムステルダムに似ている

―当時はアムステルダムにお住まいだったんですよね。そこから、東京や大阪ではなく福岡に拠点を移された背景とは何だったのでしょうか?

STANDARTの日本語版をやる上で、本国側には「別にどこに住んでもいいよ」と言われていたんです。ただ、アムステルダムは物価が高い。それに、僕も妻も海外で暮らした経験が複数あるのですが、いわゆる先進国で暮らす分には、どの国も結局あまり変わらないなと思っていて。ならば自分たちのルーツがあり、親も孫に会えて喜んでもらえる福岡に戻ろうという話になりました。

―住んでみて、思い描いていたイメージと比べてどうでしたか?

福岡は本当に住みやすいです。仕事で東京や大阪にも行きますが、通勤ラッシュや物価の高さは、住むには大変そうだなと。かたや福岡は物価も安いし、どこの場所にいても、1時間くらいあれば海にも山にも、川にも街にもパッと行ける。そんなところはなかなかないなと。
そういう街の規模感や自然へのアクセスの良さは、アムステルダムに似ているんです。だから、福岡に帰ってきたあとも違和感がなかったのだと思います。自分の家族ができてから福岡に暮らすのは初めてですが、その変化を経ても、すごく肌に合っている街だなと感じます。

世界中に点在するメンバーと、チームで働く

―今はご自宅で編集のお仕事をされているのですか?

はい。春日市の自宅の、6畳くらいの部屋でちまちま作っています(笑)。

―世界に7名のメンバーが散らばって、53カ国で読まれる雑誌を作っているというのはおもしろいですね!

そうですね。そこは自分でもこれからの働き方として最先端だなという感覚があって。もともとこの仕事をしたいなと思った理由のひとつに、働き方に惹かれたというのもあるんです。
まずチェコにオーナーとデザイナーがいて、スロバキアにスロバキア語とチェコ語版を作っている人がいて、ちょっと前まではブラジルにコンテンツを考える人がいて……今はイギリスに戻りましたけど。ロシア語版を作る人がモスクワにいて、僕と日本語版を一緒作っている友人がオランダ、そして僕が日本の福岡にいて。ちなみにオーナーは今年25歳で、とても柔軟な発想力の持ち主です。
そんなチームはわくわくするし、住もうと思えばどこにでも住めるし、すごく魅力的じゃないですか。それに前職では残業が多かったので、子どもが生まれてからは働き方を変えたいと考えていたんです。

―今は、1日どんなスケジュールで働かれているのでしょう?

コワーキングスペースに行くこともあれば、朝10時くらいまで子どもたちと遊んだりしてから、家で仕事をすることもあります。家にいる日はランチも家族と一緒に食べて、13時くらいからまた仕事をして、18時ごろにはまた家族と夕食をとったりして。
もちろん、時差の関係で夜の22時以降にビデオ電話でミーティングがあるなど、国境を超えたリモートワークならではの大変さもあります。それでも、以前オフィスに23時くらいまでいたような日々とは違って、まったく苦じゃないんです。傍らで子どもたちが寝ているのを見ながら仕事をしているというのは、いいなという感覚がありますね。

福岡を、さらに誇りの持てる街に

―今後取り組んでみたいことはありますか?

僕はコーヒーをコミュニケーションのツールだと思っているんです。だから、雑誌やコーヒーを通じてつながる人たちのネットワークを使って、福岡で何かをやってみたいですね。
福岡は東京に次いで、コーヒーの技術やカルチャーがとても発展している土地。そんな福岡で、世界的なコーヒーカルチャー誌が作られているって、すごくおもしろいと思うんです。これからももっと福岡の人に誇りと思ってもらえるような雑誌づくりや、コーヒーを通じたつながりづくりをやっていきたいです。

―福岡移住を考えられている方へメッセージはありますか?

福岡って、旅行で来るとあまり魅力が伝わらないんですよ。「どこを観光すればいい?」と聞かれても、いや、どこってこともないなと(笑)。でもそれは地に足がついているというか、住むにはすごく住みやすい街なんです。
福岡が合うかどうかは、何を求めているかによるかもしれない。例えばビジネスで大きな成功を収めて稼ぎたい人には、東京のほうがいいのかもしれないですし。福岡はもうちょっと、仕事をライフスタイルの一部にしてゆっくりとしたペースで生活をしたい人に向いている気がします。もちろんビジネスで大きな成功を納めている方もたくさんいらっしゃいますが。
そのゆっくりとしたペースは、僕らの雑誌で伝えたいメッセージともすごく合っていると思っていて。この雑誌は、人や物につながるものとしてありたいという思いがあって、Webの時代にあえて紙の有形物にしているんです。そんな面でも、『STANDART』が福岡に編集の拠点をおく意味はあるのかもしれません。
(取材協力:BASKING COFFEEClick Coffee Works

【STANDART】
https://www.standartmag.jp/

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