【朝倉・東峰のいま(3/5)】民泊業でスタート。好きな町のためにやれることを。

2017年7月5日、九州北部豪雨。わずか数時間の間に記録的な豪雨が襲った朝倉市及び東峰村。大切な住民の方々の命が失われ、また、各所に甚大な被害がもたらされました。今回私たちはあれから1年が経過しようするこのタイミングで、朝倉市・東峰村の人々の“いま”をお伝えしようと取材を行ってきました。この地で再び立ち上がり、日々の暮らしや生業を再生しようと前へ進み始めた方々のいまをご覧ください。
(注)この記事は「平成30年7月豪雨」以前に取材したものです。

九州有数の柿生産地であり、福岡の奥座敷とも呼ばれる『原鶴温泉』を抱える朝倉市杷木町。ここで、新たに民泊業を始めた女性がいます。日頃は都市部に住まわれながら、昨年まで朝倉の池田という地区で、築100年の古民家ギャラリーカフェ『心古』を営んでいた山口久美子さんがその人です。北部九州豪雨で大きな被害を受けた杷木町。山口さんが感じた「あれからの1年」と「これからの朝倉・杷木」のことをうかがいました。

訪問したのは原鶴温泉の中の『原鶴グランドスカイホテル』。ホテルの中に分譲マンションが同時に存在するという面白い業態です。その中の812号で、山口さんは新たに民泊業を始められました。

―実は、何年か前にたまたま『心古』に訪問させていただいたことがありました。おばあちゃんの家のようで、寛げる雰囲気だったことをおぼろげながら覚えています。山口さんはそもそもこちらのご出身ではないとうかがっていたのですが、どうしてこの朝倉でカフェをしようと思われたのですか?

そもそもは、血縁も地縁も何も無いんです。7年ぐらい前に、家族で田畑付のセカンドハウスを持ちたいねという話が出まして、このあたりに来てみたら、筑後川の向こうに耳納連山がわっと見えて、筑後平野があって。鳥のさえずりも聞こえるし、四季を充分に感じることが出来て、本当に人生の贅沢を感じられる場所だなぁと思って。それであの物件を購入しました。週末、こちらへやってきてリフレッシュ出来たらいいなぁと思って。私たちもですが、都会の方々にもそういう風に過ごしていただけたらいいなぁと思ってカフェをスタートしました。それと、おじが『かしいうどん』というお店を営んでいたのですけれど、歳なので閉店しまして。でもこの味を残さなきゃと思って、ちゃんと修行して、ランチにはうどんランチを出していましたよ。お出汁もちゃんと羅臼昆布と鹿児島の鰹節。そうそう、オープン前は半年かかってDIYもして。平日は都市部で暮らして週末は朝倉でカフェをして。地元の方々とも出会って、都市部の方も地元の方も来て下さって・・・大変だけど楽しかったですね。

―今回の集中豪雨ではそのお店が直撃されましたね・・・前を通ったら、解体されて空き地になっていて、何というか・・・寂しさを感じました。地区全体もかなり被害を受けられたようですね。

そうですね。うちだけじゃなく、朝倉は全体的に被害がひどかったですからね。でも被害を受けた中にも温度差はありますよ。もどかしさも感じます。

―どういった部分で感じられますか?

被害を受けた地域によっても違うし、被害の程度でも違いますね。仮設に入った方、みなし仮設の方でも違うし。うちで言うならば、なかなか作業の手が入りませんでした。朝倉市の指定業者じゃないと扱えない・・・というような話で。でもそうすると、目の前で建物が朽ちていくのを見るしかない。道路から丸見えの場所なので、見ず知らずの人たちが写真を撮っていく・・・被害の現状をその方たちなりに感じてのことだとは思いますが、当人からして見れば、本当に複雑な気持ちですよ。それと、被害の程度が違うっていうことは、その住民の方たちのこれからのビジョンも違うわけですよ。数週間前に市・県・国の職員の方々と、役員さんをはじめとした地域住民で話し合いがありました。私も週末だけですがこちらの住民なので参加させていただきました。区画割りの話とかですね。そうすると、完成は数年後という話なんです。思わず、それはどうなのかと。住んでいる方の中には大勢の高齢者の方々がいるんです。その方々を待たせて、完成後は自助努力しろというのか・・・と声をあげてしまいました。土地を集約した上で大手と提携して同一農産物を作るとか、方法は色々とあると思います。課題に優先順位をつけて、スピード感のあるきちんとしたビジョンをたてなければ、地域はもっと弱体化してしまうと思います。

―なかなかこの地域の住民の方、女性だとなおさらこうした発言はしづらいし、地域課題を俯瞰したご意見だと思います。山口さんご自身が外からの視点をお持ちだからこそ言えることなのかなと感じたのですが、いかがですか?

それはあるかもしれませんね。よそ者目線というか。でも、この景色や豊かな農産物や・・・本当にぜいたくなものが沢山あるのだから、住んでいる方にこそ、これに気づいてほしい。朝倉・杷木は、情報発信があまり上手じゃないと思います。だから、まずは私自身が民間の立場で出来る情報発信からと思っています。今年、市長さんが変わられたので、これからまた少しずつ変わってくるかなと期待しています。

―今回スタートされた民泊もある意味では情報発信の1つの方法でしょうか?

そうですね。今度の民泊新法スタートで、九州は低調スタートのようですね。だからこそチャンスがあると思っています。年明けから土木事務所・保健所・消防署・・・色々な方面への手続きにあっちへ行ってこっちへ行って大変でしたけど。うちは無事にこの部屋で旅館業許可証を取得することができました。とにかく、民泊スタートで外の方々に来ていただいて、「朝倉・杷木、いいところだよ」っていう情報がどんどん外へ出ていったら、本当に地域の方々が立ち上がるための意欲につながると思います。杷木で暮らす方たちが、この先どのように豊かに暮らしていけるのか。私のような外の目線をもった者が関わることで、こうして変化も生まれるし、その先に杷木で暮らす方たち自身が、ここを見直すような気持ちも生まれると思います。

―そこまで思いを込められるというのが本当にすごいと思います。そういう意味では、山口さんは根っからのつなぎ役でいらっしゃるのかなと。

そうですね。朝倉の住民であるなし関係無く、必要な部分でつなげていけたらなぁって思いますね。何も杷木だけじゃなくても良くて、この地域全体で1日かけて食べて遊んで温泉に入って、ゆっくりたっぷり楽しんでもらえれば、自然とファンも増えてくると思うんです。

朝倉市、東峰村。筑後川や筑後平野の恵みを活かした「食」や高取焼・小石原焼伝統などの伝統産品、温泉など、本当に素敵な素材が沢山あります。シャイだけれど、馴染んでみると人懐こい方々も大勢います。都市部(あるいは海外も!)と田舎をつなげる、人と人をつなげる・・・つながりを持とうという時、人に出会うこと、地域の根っこを感じることに、「民泊」はとても大きな要素だと思います。「この812号が軌道にのったら、もっとチャレンジしたい」と言う山口さん。「とにかく朝倉・杷木が好き!」というその情熱に、きっとファンを増やしていかれるだろうなぁと感じたひとときでした。

山口さんの語っておられたことの中には、災害の有無に関わらずこれからのローカルが抱えていく課題が散見していました。高齢化・情報発信・スピード・優先順位・・・都市部と田舎、人と人が「つながる」ことで可視化・抽出出来れば、その先に私たちが出来る事があるかもしれません。まずは、「つながること」から。
(取材協力:あさくら観光協会

=参考情報=
今回の九州北部豪雨については、関係機関各所で情報が色々と発信されています。
福岡県の被災者支援ポータルページで、リンク集がUPされています。
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hisaisyasien0.html

→連載コンテンツ「朝倉・東峰のいま」1本目記事はこちら
→連載コンテンツ「朝倉・東峰のいま」2本目記事はこちら

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