【朝倉・東峰のいま(1/5)】高取焼の歴史は紡がれていく。伝統の守り人として。

2017年7月5日、九州北部豪雨。わずか数時間の間に記録的な豪雨が襲った朝倉市及び東峰村。大切な住民の方々の命が失われ、また、各所に甚大な被害がもたらされました。今回私たちはあれから1年が経過しようするこのタイミングで、朝倉市・東峰村の人々の“いま”をお伝えしようと取材を行ってきました。この地で再び立ち上がり、日々の暮らしや生業を再生しようと前へ進み始めた方々のいまをご覧ください。
(注)この記事は「平成30年7月豪雨」以前に取材したものです。

2017年12月。九州北部豪雨後の東峰村の日々を追ったNHKのドキュメンタリーが流れた。その中で、「東峰村をみて欲しい。復興を見守って欲しい」とメッセージを発していた女性が、ここ、高取焼宗家の高取七絵さんでした。

−昨年の九州北部豪雨では大きな被害があったと伺っております。いまはどのような状況でしょうか?

豪雨被害の影響はいまも残っています。例えば山から採取した陶土や長石を水力で細かく砕き、それを水槽で濾して粘土をつくるための唐臼の1本は、何か大きなものが当たったのでしょう、折れてしまいました。もう1本も軸がずれているのか、いまは動きません。素材である赤松の大きな一本ものの木を探すところからはじめています。ゴトンゴトンという音が復活するまで、まだ数年掛かかります。
作陶のための現場の被害も大きいのですが、その他にも売り場・駐車場も打撃をうけました。そして何より保存していた11代・12代の作品群が流されてしまった事がとてもショックで、この地で作陶を続けていけるのか、本当に何から手をつけていいのかわからない状態でしたね。心が折れそう、いや、折れていました。
穴窯もいくつかの修復を掛け持ちされていた職人の方がご高齢で、体調を崩され、今は療養を余儀なくされています。復調されてから、この穴窯の修理が始まる予定です。

しかし、この1年で大勢のボランティアの方々が駆けつけて下さいました。本当に嬉しかったです。日頃はお客様としてお出でいただいている方々も、スコップを持ってきて下さったりして・・・本当に力をいただきました。そして、茶の修行に出ていた長男も戻ってきてくれました。自分たちだけでは、とにかく呆然としてしまっていたのですが、1つ1つ、出来る事からやっていこうと。前を向けるようになったのは、助けてくださった皆さんのおかげです。

−ボランティアの皆さんのお力添え、跡取りである息子さんの帰郷も、励みになったのですね。

はい、あるボランティアの方が、「まず目の前の事をリスト化して、出来ることから順番にやっていこうとアドバイスして下さって。そうすることで、頭の整理がつきましたね。多くの方に励ましていただいて、私たちは東峰村でしか出来ないし、また改めてここで作品を作って行きたいと思えるようになりました。

−なるほど。そこで新しいチャレンジとしてクラウドファンディングへ挑戦されたということですか?

そうです。唐臼と穴窯の再建を目指すために、ALL―IN方式(*目標達成の有無に関わらず、プロジェクト終了時点での募金額が支払われる方式)のクラウドファンディングにチャレンジしました。今までは何かしら問題があっても自分たちの資金でどうにか目処をつけてやっていたんですね。けれど、今回はあまりにも被害が大きすぎてどうにもならなかったのでこのような形でご支援いただきました。
行政の補助金申請書やクラウドファンディングに挑戦したことで、いまの課題を素直に受け止め、今後の事を見つめ直す事が出来ました。ご支援いただいた皆さんには、400年の伝統を守り、一生懸命作品を作ることでお返ししていこうと思っています。一緒になって応援していただいて、本当にありがたいです。

−あれからもうすぐ1年になります。この間に、東峰村では『民陶むら祭』が2度開催されました。今秋にもまた開催されます。お出でいただく皆さんに、何を感じていただきたいと思いますか?

まずは、ここへ来るまでの光景を見ていただきたいです。のどかできれいだった地域の様子が変わっている・・・そこから何かを感じて欲しいです。それと、お祭りの時だけじゃなく、普段から来てもらったら嬉しいです。それだけでも嬉しい。お祭りの時だと大勢の方にお越しいただくので、一人一人と十分お話する時間が取れないので、なんでもない普段の日常に来ていただきたいですね。

うちも、がれきの中から這い上がって、脱皮して飛び立っていけたらと思っています。東峰村の小石原地区が焼物で外に対して情報を発信して、そして宝珠山地区の方を見れば田舎の原風景を残して・・・この2つの魅力を活かしながら、復興してお出でいただく方々とのつながりを作っていきたいです。

高取焼宗家の後継者であった現・13代高取八山氏と出会い、結婚。今では、この東峰村になくてはならないキーパーソンとなった七絵さん。不安、あきらめ、思うようにならないもどかしさ・・・色々な気持ちをのみ込んだ先の、「必ず再生し、美しい光景を取り戻す」という決意を痛感しました。
400年という長い歴史の中で時にはこのような危機もあったかもしれず、「伝統」という「背骨」が、七絵さんの「乗り越える強さ」を支えているのかもしれません。お話をうかがうこちらも背中が自然にすっとのびるような、そんな思いになりました。次は、「普段の東峰村」へ会いにいきたいと思います。
(取材協力:あさくら観光協会

=参考情報=
今回の九州北部豪雨については、関係機関各所で情報が色々と発信されています。
福岡県の被災者支援ポータルページで、リンク集がUPされています。
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hisaisyasien0.html

【髙取焼宗家】
https://www.takatoriyaki-souke.com/
福岡県朝倉郡東峰村小石原鼓2511
TEL:0946-74-2045
営業時間:9:00〜17:00
定休日:月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は、火曜休業)

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