田舎暮らしをしたくて、東京から香春町へ
3組限定で募集した『香春町ぐらしトライアルウィーク』。1組目の参加者は東京出身・東京育ち・東京在住の女性(更井さん)でした。彼女から見る香春町はどんな町だったのでしょうか?そして田舎暮らしは実際どうだったのでしょう?10日間滞在の最終日前日に、お話を聞きました。
−『香春町ぐらしトライアルウィーク』に参加したきっかけを教えてください。
「ここ数年、田舎暮らしへの関心強くなってきたんです。私が得意なのは手芸のお直しとかリメイクなので、それと農業を仕事にする半農半Xのような田舎暮らしをしたいなと思って。それで田舎で長期間の農作業バイトやペンションバイトをしたり、普段も家から電車で通える自然栽培の農業スクールで農業を勉強したりして。自分一人で何か仕事を立ち上げて始めるというのは難しいので、そういうバイトやスクールに参加していました。
それでネットで半農半X的な働き方を検索していたら、たまたま香春町のトライアルウィークを見つけたんです。今回は農業バイトの時とは参加の意識が違って、実際に田舎で暮らすことを体験したいと思って応募しました。
滞在していろんな人と会ってみると、田舎のいろんな仕事があるということが分かりました。今は何となく田舎で暮らせる可能性を感じています」
−香春町の人たちからはどんな印象を受けましたか?
「香春町に来る前にトライアルウィークの募集ページを見た時には、明るくていいイメージでした。ウェルカムしてくれているなというのが伝わってきて。実際に来てみると、お会いした方はやっぱり明るくて気さくな方が多かったと思います。おばちゃんからも話しかけてもらってうれしかったです。“入ってこないで”と町の人が閉じている感じは全然なかったですね」
「自然を大事にしている方がたくさんいるのもすごくいいなと思いました。それから“自分のことだけを考えていない感じ”が好きです。地域や次世代のことを考えていて、温かいんですね。商売としての大型農業ではなく、家庭菜園レベルの畑を見れたことも良かったです。農業体験で見せていただいた家庭菜園がとても立派で本当にびっくりしました。次世代のために山を守ろうという人も多かったです。そして暮らしがDIYというか何でも自分でできる人もいて、そんな包容力のある人たちが、とても暖かく何でも教えてくれるんです」
※ステイ先にもある菜園の様子
「町で子供を守ろうという雰囲気も良かったです。たとえば町内放送がすごくいいなと思いました。夕方になると“子供の下校時刻です、子供の見守りをお願いします”みたいな感じで流すんですね。町として団結しているというか、大きく世代交代していく中で、子供を健やかに育てましょうという感じが温かいなと思います。蕎麦の脱穀体験に行った時に小学生もいっぱい来ていたんですけど、子供同士でも教えあったりとか、子供がすごくちゃんとしているなというのも感じました」
−暮らしてみて香春町はどんな町でしたか?
「元気がある町だなと思いました。滞在中に町の秋祭りに参加してみた時にもすごく人が集まっていたんです。香春町はオープンで明るくて、ワイワイ楽しい印象です。“やるぞー!”みたいな雰囲気があって。
暮らしはというと、私は車の免許を持っていないので、移動はちょっと大変でした。でも、スーパーは遠いのに食べ物には困らなかったですね。町の人から頂くことが多くて。たとえば、おばちゃんがキノコをたくさん見つけているから“すごーい!”と騒いでいたら“持って帰り!若い人の特権!(笑)”とくれたりして」
「田舎ならではの小さなコミュニティのしがらみとかは、今回は感じられなかったですね。でも地域の人間関係が濃くて人から見られているというのは、私はあった方がいいなと思います。関わりが切れてポツーンと独りで好きなことしていいというよりは、その方が自分もちゃんとできるし(笑)」
※登山山頂より
「香春町は登りやすい山が身近にあるのはいいですね。ちょこちょこっとすぐ登れるような。登山の山もあるし、舗装も名前もないような“ただの山”もあって。そこで木の実を拾ってリースを作るとか、楽しすぎましたね!暮らしと山が近いというか、山が暮らしの中にあるんですよね。これが里山かと実感できました」
−半農半Xな働き方で暮らせそうですか?
「来る前には、田舎だとどんな仕事があるかなということを調べたりはしていました。どこに住むかということまでは、深く考えてはいなかったんですね。でも来てみて思ったのは、住んじゃえばいいなと。住んじゃえば“仕事しなきゃ”って探すんだろうなと思いました」
「香春町では仕事というかナリワイは、人がつないでくれるからできそうだなと感じます。人がつないでくれなかったら、田舎の小さなアパートに住んでどこかに勤めて雇われるという働き方しか想像ができなかったです。でも畑を教えてくれる人もいるし、住んでしまえば何とかなるのかな。半農半Xな働き方ができそうだな、という雰囲気は感じました」
「私は手芸をやっていますけど、モノを売ってお金をとる商売的なことにちょっと抵抗感があるんですよ。だから東京にも手作り品を売れる場所はあるんですけど、なかなかエントリーできなくて。でも田舎でたくましく生きている人たちを見て、すごく勉強になりました。道の駅でモノを売ったり、山を管理してお金をもらったりしていて、“生きていかなきゃバイタリティ”が全然違うんですよね。私にも“後押しするからやってみなさいよ!”という感じが伝わって、元気も刺激ももらえました」
「10日間は本当にあっという間でした。あと1週間は欲しいな。もうちょっと居て、もっといろんな人とあって話をしたい。今回はいろいろ楽しいことが毎日あって出かけていて、手芸で何か作って町とつながる前に滞在が終わっちゃいました。最初のスケジュールではフリータイムが多くて、こんなにやることは詰まっていなかったんですけど、人と会うたびにどんどん“明日あれやるから来るか!”って言ってもらえて、すごく濃い日程になりました。また遊びに来たいですね!」
※コースターと靴下
手芸で町とつながる時間がなかった、と惜しむ更井さん。実は滞在中に夜なべをして協力隊の3人に手袋を編んでいました。そして山で採ったツタなどでリースを作っていたのです。最終日にそれらをプレゼントして、更井さんは東京へと帰って行きました。