魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。
ずっと好きなことを続けてきた
今年で43年目となるバー『ROCK SPOT LENNON』。照らされた煉瓦造りの壁にレコードジャケットが並んでいる外観は、品がよく落ち着いた印象です。店内に足を踏み入れると、アナログレコードから流れてくる音楽に惹きつけられます。ジャンルはロックを中心としてブルース、レゲエ、ワールドミュージックなど。笑顔で気さくに迎えてくれるのはマスターの高山さん。長年カウンターに立ち、レコードをかけ続けている高山さんに音楽への想いを聞いてみました。
—老舗のロックバーとのことですが、お店を始められた経緯について教えてください。
「24歳までバンドを一生懸命やってたんですが、見切りをつけまして。それまでロックを中心にレコードを集めていたので、ロックを聞かせるお店を出したいなっていうのが発端でした」
—場所として箱崎を選ばれたのはなぜですか?
「兄貴の友達が九州大学に通ってまして、箱崎に下宿してたんです。僕は彼と仲がよかったので、そこに転がり込んでいて。暮らしていてよく知っている、馴染みのある箱崎の街にお店を出しました」
—箱崎には九州大学があり、学生街として栄えていましたね。やはりお客さんは学生さんが多かったのでしょうか?
「はい。以前はお客さんの6割近くが学生で、近くの九州大学に限らずいろんな大学の音楽サークルの学生が集まってたんですよ。レコードが高くて、学生たちがレコード聴くのに飢えてた時代ですからね。みんな貧乏学生で、バイトに明け暮れながらも店で異常な程音楽聴いてたり、ドリンク1杯で7時間も店にいたりもしてました。そういう時代もありましたよ」
—九州大学が10年前に移転してしまいましたが、やはり影響はありましたか?
「20年ぐらい前からですかね、九州大学が移転する前から徐々に学生さんが減っていきました。洋楽に興味を持つ人が少なくなったからでしょうか。まあそれも仕方ない、というより特に何とも思っていませんが。本屋さんが『本を読む人が減った』とか、映画館が『みんな映画を見に行かなくなった』と言っているように、時代の流れなのかもしれません。
学生時代には一生懸命レコードを集めていても、家庭を持ったら子どもにレコードの針が危ないとレコードを家で聞けなくなった人もいますもんね。そう言ってうちに音楽聴きに来たりもして。ここ数年のお客さんは学生から70歳近い方まで、地元だけでなく県外から来られる方もいらっしゃいます。ボチボチいろんな方に来ていただいていて、毎日楽しくやっていますよ」
—お客さんの層が広いんですね。流れている音楽や内観も素敵ですが、外観も渋くて非常に魅力的ですね。
「レコードジャケットを並べてるだけなんですけどね。音楽好きな人であれば一目見て、『ここの店はロックやソウルミュージックを流してるんだな』ってわかるようにしています。もちろん音楽に詳しくなくても、うちの店の雰囲気が好きで来られる方も大歓迎です。
ただ、たまに高級店のようで入りづらいと言われることもあるんですよ。お客さんの中には、毎日店の前を通っていて気になっていたけど、実際に思い切って店に入るのに1年かかったという方もいて。でも全くそんなことはなく、1杯からでもいいですし、チャージで何千円も取るようなことはしていません。お気軽にどうぞ」
—お話を聞かせてくださってありがとうございました。では最後に、今後の目標について教えていただけませんか?
「レコードの収集は20代の頃からずっと続けていて、気になったレコードを見つけてきてはお店でかけてきました。今でも新しいレコードをどんどん買って聴いていて、これからも好きなレコードを集めながらお店でかけられれば満足です。いいレコードを探し求めてる時間が僕にとっては最高の遊びなんです。67歳でも毎日こんなふうに過ごせて幸せです」
【ROCK SPOT LENNON】
福岡県福岡市東区箱崎1-9-6
TEL:092-641-2145
営業時間:[月-金・土・祝前] 19:00〜26:00
[日・祝] 19:00〜24:00
定休日:水曜日