一度は廃業した小さな老舗醤油屋が、データベースマーケティングで万能調味料を世界へ!

分析で出た明確なターゲット

ーー昨年発売されたレシピ本「『ニワカそうす』の愛情ごはん」では、家庭で簡単に作れる時短料理が多く紹介されていますね。レシピ本を作るきっかけになったのは、九州TSUTAYA、CCCマーケティングを兼務する戸田貴之さんと伺いましたが、戸田さんは普段どんな仕事をされているのでしょうか。

戸田さん:九州TSUTAYA、CCCマーケティングは、いずれも同じカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)のグループの会社です。CCCでは、TSUTAYAや蔦屋書店といったプラットフォームの展開、Tカードで蓄積したビッグデータを用いたデータベースマーケティング、データを活用してライフスタイルを豊かにするコンテンツ制作という3つの領域で事業を行っています。その中で、「データベースマーケティング」を中心に、九州エリアのさまざまな企業のマーケティングや広告、販売促進などのお手伝いをするのが私の仕事です。

ーー本やレンタルショップの販売店に、データマーケティング……地方の小さなお醤油屋さんとはなかなか結び付かない組み合わせですが、ニワカそうすに着目した理由は何だったのですか。

戸田さん:福岡では「六本松 蔦屋書店」が2017年9月にオープンしたのですが、開業当初からニワカそうすを取り扱っていました。ただ驚いたのはその販売数で、なんとオープンして1年で3500本も売れていたのです。僕は、2018年の春に福岡に引っ越してきて、それまでニワカそうすの存在は知らなかったのですが、「本屋で何故そんなに調味料が売れるのだろう?」というのが最初の疑問で、その理由を知りたかったんです。それが今回の企画の入り口です。

ーー今回はレシピ本を作るにあたって、データベースマーケティングからアプローチされたそうですが、具体的に、「ニワカそうす」に対してどのような分析結果がでたのでしょうか。

戸田さん:まず、ニワカそうすを買っている人の特徴を分析しました。例えば、ニワカそうすを購入するのは、40代半ばの女性が多いのですが、さらにその人たちのその他の購入商品を分析すると、教育や食関連の書籍を多く購入されていることが分かりました。そして教育関連本では、小学生向けの学習参考書が多く、さらにお子さんが使うものだけではなく、保護者が子どもの教育について考える指南書も含まれていました。次に食関連の書籍の中身を見ると、食関連書籍の分析で目立ったキーワードは「カンタン」「時短」。さらにそのほかの分析結果も踏まえた結果、「共働き家庭で、小学生の子どもがいる40代半ばのお母さん。教育への関心が高く、子育てに手間暇かけたいと感じていて、また料理は外食よりも内食派。仕事から帰ったあと、少ない時間の中でもできるだけ手作りの食事を食卓に並べたいと思っている人」、これがニワカそうすを購入する人の特徴であることが分かりました。

ーー購入している書籍から、ライフスタイルを分析していったのですね。ビッグデータを扱うCCCマーケティングだからこそできる分析ともいえますが、タケシゲ醤油の皆さんはこの結果をみてどのような印象を受けましたか。

良幸さん:ニワカそうすは、特に子育て世代の親御さんの役に立ちたいと思って販売を始めたので、きちんと届いていると確信しました。「売りたい」「知ってもらいたい」という思いが、「買いたい」「知りたい」という人と一致していることが分かり、自信を持って全国に広げていけると思いました。

ーーではそれらのデータ分析から、なぜレシピ本を作ろうと考えたのでしょうか。またタケシゲ醤油ではすでに1冊レシピを紹介する書籍を発行していますが、今回のレシピ本との違いは何だったのですか。

戸田さん:実は企画を考える際に、最初からレシピ本を作ろうとは思っていませんでした。あくまでもニワカそうすの魅力を必要とされる方に知っていただくには、どうすれば良いか?ただそのことを純粋に考え続けた結果、ニワカそうすの【使い方】を紹介するのが一番と考えたのです。たどり着いたのが、結局はレシピ本だったんですけど(笑)。分析で導き出した購入者層の求める価値であり、ニワカそうすの特徴でもある「時短で、簡単に、いろんな料理が作れる」ことをレシピ本で伝えようと思いました。そのため、今回のレシピ本では、5分、10分、15分など作れる時間ごとに章立てし、和洋中にスイーツまで、多彩なレシピを紹介しています。

友香子さん:1冊目の時は、料理を普段作らない人に向けて、とにかく簡単に、たくさん料理ができることを伝えたいと考えました。そのため掲載レシピ数は100以上あったんです。今回のレシピ本は、ニワカそうすが「暮らしを豊かにする調味料」であることを伝えたいと思いました。本をご覧になられた方が楽しい気持ちになってもらえる様盛り付けやコーディネートにもこだわり、実際の撮影中も笑い声が絶えませんでした。ニワカそうすを使うことで生まれた時間の貯金を、テーブルコーデに凝ってもらったり、家族とおしゃべりしたりする時間に充ててもらうことで、皆さんの暮らしが今より豊かになってもらえたらと考えています。

ーー確かに……。お気に入りの器を使うだけでも、ぐっと気持ちが上がって、食事の時間が楽しくなります。蔦屋書店では、ニワカそうすとレシピ本が隣り合わせで販売されていますが、実際のところ売れ行きはどうでしょうか。

良幸さん:おかげさまで、レシピ本を発売してからニワカそうす200㎜ボトルは前年月に比べて3倍の売り上げアップに繋がっています。週末を中心に九州や山口、広島でもデモンストレーションを行い、消費者の方の声を伺う機会も増えました。

戸田さん:これまでニワカそうすの販売エリアは九州がほとんどでしたが、今は北海道から宮崎まである、蔦屋書店でも展開しています。特に大阪や京都、函館などでも売れ行きは好評です。

ーーありがとうございます。では、最後にそれぞれの今後の展望を教えてください。

良幸さん:最近は、コンビニ弁当で食事を済ませるなど、料理をしない人も増えていると聞きますが、料理はコミュニケーションです。ふとしたときに思い出す「おふくろの味」があるように、簡単な調理であっても誰かが手をかけて作ってくれた料理の愛情はずっと感じることができますから、ニワカそうすで料理を楽しんでもらえる人が増えればうれしいです。

戸田さん:隠れたいいものを広く多くの人に伝えていきたいと考えています。ビッグデータと聞くと、ネガティブな印象を持たれることもあります。でも適正に管理し、本来の使い方をすれば、悪いものではありません。「これが好きなら、こっちも好きなんじゃない?」って、その人がまだ知らないけど、知れば好きになりそうなものをデータから予測してお知らせすることで、みなさんの“好き”を広げるお手伝いができればと思っています。

福岡の小さな老舗醤油屋と日本人の二人に一人は利用しているといわれるTカードを使ったデータベースマーケティング会社による、コラボで展開した今回の取り組み。知名度は低くとも、自信を持って良いといえる商品を扱う企業の皆さんにとって、非常に関心が高いものではないでしょうか。「今後も『いい』と思ったものは、広く伝えていきたいですね。何かあればぜひご相談ください」と戸田さん。とはいえ費用面などの不安もあり、尻込みする人もいるかもしれませんが、タケシゲ醤油では今回の取り組みの一部費用をクラウドファンディングでまかなうなどの工夫も。「不安な方はこっそりうちに来てもらえれば。ご質問などお応えします!」と住田さんご夫妻はにっこり。データを活用することで、私たちの“好き”がどれだけ広がるのか、今後の展開にも期待大です。

【タケシゲ醤油】
http://takeshige-shoyu.com/
福岡県福岡市南区平和1-23-6
TEL:092-526-9682
営業時間:10時〜18時
定休日:日・祝日、お盆、年末年始等

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