AIやクラウドといったテクノロジーの進化によって創造される「新しい働き方」をテーマにしたイベントが、日本マイクロソフト主催で『FUKUOKA Growth Next』にて開催されました。
国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」を手がける横石崇さんをモデレーターに、福岡から世界に事業展開する株式会社ヌーラボ代表取締役の橋本正徳さんや内閣官房シェアリングエコノミー伝道師を務める石山アンジュさん、そして日本マイクロソフト株式会社の手島主税さんが登壇された今イベントでは、参加者と一緒に「これからの時代、どんな未来を創造して、一層身近になるテクノロジーとどのように付き合っていくべきか」についてトークセッションが行われました。
今回の記事ではそのトークセッションの様子をお届けいたします。
<登壇者>
◯ 橋本正徳(株式会社ヌーラボ 代表取締役)
◯ 石山アンジュ(内閣官房シェアリングエコノミー伝道師 / シェアリングエコノミー協会事務局長)
◯ 手島主税(日本マイクロソフト株式会社 執行役員常務)
<モデレーター>
◯ 横石崇(Tokyo Work Design Week代表)
横石さん:皆さん、こんばんは。本日はお越しいただいた皆さんとで「AI時代に活躍する人材」をテーマに、和気あいあいとディスカッションを進めていきたいと思います。まず手島さんにお伺します。マイクロソフトが福岡でこのようなイベントを開催するのは、どんな意図があったのでしょうか?
手島さん:今日は多くの皆さんにお越しいただき、ありがとうございます。マイクロソフトとしてこのようなイベントを開催するのは今回が初めてです。会社としてクラウドやAIなどを展開していますが、ビジネスとしてだけでなく、我々はテクノロジーを活用して将来どういうことを目指していったら社会をより良いものにできるのか考えています。しかし本質は人にあると考えています。今日はスタートアップを推進されている福岡の地を皮切りに、福岡で活躍する皆さんと一緒に考える時間を設けたいと思い、このイベントを開催させていただきました。
横石さん:より濃密な議論ができれば嬉しいですね。では簡単に皆さんの自己紹介をお願いします。橋本さんは福岡を拠点にされているので参加者の皆さんもご存知だと思いますが、実際に福岡で働かれている立場として意気込みを踏まえ自己紹介お願いします。
橋本さん:はい。福岡で働く人の代表としてお話させていただく橋本正徳と申します(笑)。ヌーラボという会社でプロジェクトマネジメントツール「Backlog」などを開発していて、世界的にユーザーがいたので、今はニューヨークやシンガポール、アムステルダムに拠点を出させていただいて。日本から世界に出ていく企業としてリーダーシップを取っていきたいなという気分でいます(笑)。
石山さん:私はシェアリングエコノミーという新しい経済概念の専門家として、シェアする社会を広めていくための活動をしています。ほかにも肩書はいろいろとありますが、ただ肩書では仕事はしていません。職種や肩書がどうなるというのは目的になっていなくて、ただただ次の時代の新しい豊かさというものを自分で描いて、それをみんなで共有して、新しいものをつくっていきたいという想いで働いています。
手島さん:改めてにはなりますが、私は日本マイクロソフトでクラウド事業を担当しています。皆さんに製品やサービスを使い倒していただいて、そのフィードバックをもとにビジネスや生活に貢献できるような新たなサービスをつくっています。あとは「働き方改革」プロジェクトに取り組んでいます。今年8月から全正社員を「就勤4日」にすると発表したら、マスコミでは意に反して「週休3日」の方を大きく取り上げられてしまいました(苦笑)。
橋本さん:それがうちの社員にも届いて「マイクロソフトは週休3日のようです。うちも!」と…。本当に迷惑な、もう(笑)。
手島さん:ははは、ありがとうございます。改革はインパクトが大事なんで(笑)。そしてもう一つ、異業種13社が連携した、ミレニアル世代の働き方改革推進コミュニティも発足して活動しています。
横石さん:私は「Tokyo Work Design Week」という働き方の祭典を7年ほどやっています。今までのキャリアの積み方ははしご型で一本の長いはしごを上がるというものでしたが、それだけでなくジャングルジム型のキャリア、上にも横にも斜めにもスイングして飛び降りるような。そこに問われているのは主体性で、自分がどこに行きたいのかをみんなで考えようというようなことをやらせてもらっています。新しい働き方や生き方は、みんなでボトムアップして動かすことができるはずです。
人間とAIの共存共生
横石さん:さて、今日は参加者の皆さんとも一緒にお話することで、何かを変えるきっかけになればと思っています。まず、働き方とAIに関してですが、少し前にオックスフォード大学の研究で「今の子どもたちが大人になると約47%の仕事がAIによって自動化されているリスクが高い」というニュースが世界を駆けめぐりましたね。
手島さん:私はAIでも何でも、変化するテクノロジーをどう使うかというのが大切だと思っています。例えば、これまで金属だった車が3Dプリンターを活用して再生した木材でできるとか。夏場の建設現場で一人ひとりが健康に働いているか、まわりに公害なく工事ができているかといったことをAIやテクノロジーで見える化する動きとか。
横石さん:人間とAIの共存共生が求められているというところでしょうか。橋本さんはIT企業の経営者として、人とAIはどう共存していくと考えられますか?
橋本さん:そうですねー。AIは人の能力を高めるもので、職人にしかできなかったことを一般の人にもできるようにするツールかなと思っています。例えば、料理をしたことのない人が料理をうまくつくれるとか、人間の能力を補完してくれる使われ方をするのかなと。うちはプロジェクトマネジメントツールを開発していて、いいマネージャが成功させるのは当たり前ですが、冴えないマネージャでもAIの力でうまく回せるみたいな可能性はすごくある気がします。だから、AIが人の仕事を奪うという観点はなくて、人の仕事を奪うのは人であって、AIは僕らを高めてくれるツールと捉えています。
手島さん:マイクロソフトは、幅広い人が使えるAIを実現しようという考えがありまして、先ほどおっしゃったように、今まで人ができなかったことを手助けするAIも出てくる。そうなったとき仕事はどうなるかというフューチャービジョンを描いて、それをもとにいろいろ考えています。代表的な例は、デジタルをより活用できるようになると、どう影響を受けるか。放射線の画像診断士とか、コールセンターとか。海外ではファーストフードも行く前にオーダーできる店も多いので、日本のように並んで待つことが少ないとかですね。翻訳もその一つで、社内では、AIを活用した翻訳機能を使うことも多くなりました。時間とスピードが異常に早くなり、AIにより人はもっと多くのことができるように働けるというのが正しいんじゃないでしょうか。
石山さん:自動化・効率化が進んで速く便利になって、店舗も機械化されていく。それは利用しやすい側面もあるけど、一方で置いていくものもあると思います。コンビニの店員さんと何気なく話したことで勇気をもらったり、コールセンターに怒って電話したけど、その担当者がめちゃめちゃいい人だったとか、そういった人と人との温かみや手触り感のある市場が、AIが進んでいくことでどこまで無くなるんだろうというのは、考えないといけないなと。
手島さん:おっしゃるように本来、人のおもてなしやホスピタリティは重要です。その一方で、日本では少子高齢化による人手不足という企業側の課題がある。そうした課題に対応するために、いまは第一ステップとして、AIなどのテクノロジの活用が始まってる感じがしますね。