地域のエコシステムの、小さなロールモデルを目指して
—今回のコラボ企画は、双方の課題を解決する一歩になるものだと思いますが、ちょっと話を大きくすると、恵方巻きの際にも話題になった食品廃棄問題や、コーヒー豆栽培の低賃金労働問題などにも関連がありそうです。今回の企画はそういった社会課題にも目を向けているのでしょうか?
野上:わたしは自分の着るものや食べるものまで、そういった視点を意識している方です。SALTに置く雑貨や飲食物も、その視点で選びたいというのは最初からメンバーに言っていました。とくにコーヒーは、環境問題、労働問題などの社会問題が凝縮された農産物なので、大切に選びたいと思っていて。
とはいえこだわりが強すぎると、どうしても価格が高くなってしまう。私たちもそれほど経費を潤沢に持っているわけではないと。そんなときに山田さんご夫婦とお会いして、正直にお話をしたんです。お金が潤沢にあるわけではないけれど、生産者さんにしわ寄せがいくような値引きもしたくないんです、と。その中で山田さんからも「うちも廃棄豆をなくしたいと前から思っていた」と伺って。
それを聞いた瞬間、ああいいな!と思いました。一緒に取り組めば、お互いが課題解決できて、しかも食品廃棄を減らす、地域のエコシステムの小さなモデルも作れるなと、ピンときたんです。
—社会課題について、山田さんご夫婦はいかがですか?
沙織さん: コーヒー豆を捨てないという意味では、ゆくゆくは完全受注生産になれたらいいなと考えているんです。でも、それはとても先の話。そこを待たずして、コーヒー豆の販売を続けながらも、食品廃棄という社会課題には取り組みたい。
そこで予約販売や、メニュー数を絞るなどの取り組みに加え、今回、SALTさんのような事業者の方に特別価格で買っていただくというしくみができたので、これが他の事業者さんにも広がればいいな、という思いがあります。
暮らしや仕事を大切に見つめられる社会へ
—今回のコラボは小さいものかもしれませんが、この企画からどのような社会を生み出していきたいですか?
沙織さん:もちろん食品廃棄など「もったいない」がない社会がいいと思います。でもそれだけではなく、私たちみたいな小さな店でも、事業が持続可能なしくみをつくることで、自分たちがやりたい内容でお店を続けられるんだと表現していけたら嬉しいです。
仕事が豊かだと、暮らしも豊かになる。暮らしも仕事も、自分たちの心の向きにあわせて選びやすい社会になればいいですよね。そのために私たちもがんばらなければいけないし、どうがんばったか発信するのは大事だと思っています。
野上:私も沙織さんのお話に共感しています。SALTも小さなコワーキングスペースですし、『森とコーヒー。』さんははじまったばかりのお店です。でも一緒に取り組めば、双方ともにいい形で続けていける。そういう事例を見せることで、「好きなことを仕事にしてもいいんだ」と思う方が少しでも増えればいいなと思います。
それはつまり、仕事や暮らしを大切に見つめること――目の前のひとを大切にすることや、自然環境を大切にすることにもつながっていると思うので。この小さな取り組みから、そういう思いが広がっていけばいいなと思います。
【森とコーヒー。】
http://moritocoffe.thebase.in
住所:福岡県糸島市本1357-9
Mail:mori.to.coffee1@gmail.com
【SALT】
https://salt.today/
住所:福岡市西区今宿駅前1-15-18-2F
Mail:info@salt.today