胸をはって焼き立ての豆を売るために
—『森とコーヒー。』でも、豆の廃棄について課題を抱えていたとのこと。その背景を、もう少し詳しく伺えますか?
沙織さん:私たちは「焙煎したての豆を売る」ことを大切に考えています。そのぶん、「売れ残ってしまった豆をどうするか」という課題はずっとありました。
これまでも、予約してくださった方のために適切な量を焙煎する「予約販売」を取り入れるなど、ロスを減らす取り組みは行ってきたんです。また店には11種類の生豆がありますが、週のメニューは4種類に絞っています。これも、廃棄豆を減らしたいという思いからです。
さらに焙煎機もサイズを使い分け、豆を焼く量は毎週、精密に調整をしています。だから極端に余りすぎて豆を捨てたことは、まだ1度もありません。それでも、余ってしまうことはあるんですね。
※写真:白石悠
—そんな背景の中で、今回のコラボ企画が始まったんですね。
沙織さん:余った豆の引き取り先があると、こちらも誠実に毎週「焼き立てです」と新しいものを販売することができます。それに買う側も、「この店、いつも焼き立ての豆を出しているけれど、残ったものはどんどん捨てているの……?」と不安があったら、気持ちよく買いものができないかなと思うので。余った豆の行き先は、消費者の方にもきちんと明らかにしたいです。
皆が「おいしく」飲めるしくみづくりを
―すでにSALT会員さんへのコーヒー提供ははじまっていると思いますが、会員さんからの反応はいかがですか?
野上:すごく反応がいいですよ!みなさんとっても喜んでいます。本当に、違いがわかるんです。コーヒー豆を挽いて、お湯を注ぐじゃないですか。そのとき、ふわふわふわっ!て膨らんで。その感じが全然違う。それから香りがオフィス中に広がって、それだけでみなさんが反応しますね。
※写真:白石悠
圭太さん:誤解のないようにお話しますと、売れ残りといっても、焙煎日から1週間も経っていない、飲みごろの豆なんです。あくまで私たちの考える「美味しく飲める期間内」に飲み切ってもらえることを見越して豆をお渡ししています。
沙織さん:店頭は個人のお客さまが多いので、焼き立てでお渡ししないと、おいしい期間内に飲めないと思うんですね。でもSALTさんのように大勢で飲まれる事業者さんにお渡しすれば、消費スピードもぐっとあがり、理想の期間内に飲みきっていただける。そこは「皆がおいしく飲めるように」と考えています。
野上:そのおいしいコーヒーを飲みながら、廃棄豆を減らすという今回のコラボの背景を話すと、「いいねえ!」とみなさんすごく共感してくださいます。そこから山田さんご夫婦の話になったり、働き方と暮らしの話になったりもして、楽しい時間が生まれています。ストーリーを持つ商品を置くことは、場の発信力が全然違うと実感していますね。