働くだけのシェアオフィスでなく、学びというコンテンツで天神からつくりたい未来。

新元号が発表された4月1日の午後。『HOOD天神』のカウンターにはさっそく「令和」の文字。そして、利用者やスタッフが出入りするときは、「行ってきます」「行ってらっしゃい」、「ただいま」「お帰りなさい」と自然に声をかけ合う―そんなあたたかい雰囲気に包まれたシェアオフィス『HOOD天神』は、単に働くためだけの場所ではなくなっています。オープンから3年が経ったいま、コミュニティマネージャーの脇山さんに話を聞きます。

―『HOOD天神』がオープンして3年ではありますが、改めて、ここはどんな場所なのか教えてください。

2016年4月に誕生した『HOOD天神』は天神のど真ん中、明治通り沿いにある小さなシェアオフィスです。平日の夜や休日にはイベントを開催していて、コミュニティスペースにもなっています。西鉄さんと私たち福岡移住計画の共同事業で、西鉄さんが持つ地場の視点とネットワーク、福岡移住計画が持つ外の視点とネットワークを組み合わせることで、天神から福岡に新しい風を吹かせようとオープンしました。

―脇山さんはどんな役割を担っているのですか?

私は立ち上げ当初からコミュニティマネージャーとして関わっています。シェアオフィスを利用してくださる入居者のコミュニティを活性化したくて、2017年9月には入居者ランチ会「HOOD ランチ」を始めました。皆さんは普段あいさつを交わされるけど、お互いのことを深く話す機会はなかなかないので、間をつなぐことができればと思ったんです。そして2018年2月からは新たに「HOOD SCHOOL」という学びのプログラムをスタートしました。

▲ランチ会の様子

―なぜ学びのプログラム「HOOD SCHOOL」を始めたのでしょう?

約2年前くらいに福岡女子大学の社会人学び直しプログラムのコーディネーターをされている岸智子さんが運営に参画してくれるようになりました。コミュニケーションを重ねていくうちに、智子さんの発信する学びのコンテンツはこれからのHOODに必要かもしれないと思ったんです。
それで智子さんにランチ会でお互いを知るワークショップをしてもらったところ、とても良くて、オフィスの外にも提案していこうと決めました。

▲コミュニティマネージャー岸智子さん

―「HOOD SCHOOL」ではどんな講座をされているのか教えてください。

最初にやったのは智子さんによる「イノベーションが生まれる対話の場づくり」講座。営業でいきづまりを感じている方や、会議の新しい方法を学びたい方など、主に企業で働いている30代の参加者が多かったですね。次に福岡移住計画パートナーの万野さんによるウェブサイトづくり講座を始めて、まずはHOODを運営するスタッフができることという視点で講座の内容を決めました。
その後入居者さんにも先生になってもらうようになり、マナーやタイムマネジメント、プレゼンテーション、貯金といった講座を増やしていきました。

▲万野氏によるウェブサイトづくり講座

―受講者は順調に集まりましたか?

それが…なかなか予約が入らないときもありました。それまで「つながる」というキーワードを入れていたコンセプトを見直し、「チャレンジする人のための小さな学び場 はじめる人を応援するコミュニティへ」と掲げたら、この場になじむようになりました。
時には私自身が講座を受講して、「HOOD SCHOOL」らしさを追求しながら発信するようにしています。おかげさまで少しずつですが軌道に乗ってきました。

―その「HOOD SCHOOL」ではどんなことを大切にされていますか?

コンセプトの「小さな学び場」が示す通り、最大定員を8名にしています。コンテンツ的には大人数でも成り立つけれど、ここだからできることを考えたとき、あたたかさとか、参加者にちゃんと何かを持ち帰ってもらうことにこだわりたかったんです。
あと、参加費は2,500~3,000円が目安。1回受講で完結する講座で、なるべく明日から使える生きた学びを持って帰ってもらおうと思った時に、2,500~3,000円が妥当と判断し、今はこの金額を目安に内容も設定しています。

―これまで開催してきて受講者はどんな方が多いですか?

講座によってまちまちですが、全体的に女性が多いですね。プレゼン講座は転職や独立前の人に人気で、ウェブサイト講座は男女半々。最近はグラフィックレコーディング講座やデザイン思考ワークショップを学校の先生がよく受講されています。どんどん広がりが出てきて、とても面白いです。
「HOOD SCHOOLのコンテンツが面白い」と横断して受けてくれる女性がいます。20代後半くらいかな。受講中はあまり表情を変えられないのですが、終わったら「すごいためになりました。ありがとうございます」と言ってくださって。とてもうれしく、SCHOOLを通して前向きになれる、そんな方をもっと増やしていけるといいなと思っています。

―脇山さんはスキルシェアサービス「ストアカ」も兼務されているとか。「HOOD SCHOOL」はそことも関わりがあるのでしょうか?

私はストアカのコーディネーターとして、ストアカの先生向けにワークショップやイベントなども企画運営していますが、それとは別に、『HOOD天神』から発信する学び場として「HOOD SCHOOL」を始めました。ストアカは教える人(主催)や学びたい人をつなぐプラットフォームで、「HOOD SCHOOL」はそこに主催団体として参加しているという関係性です。

―まさに2社を兼務することでの相乗効果ですね。「HOOD SCHOOL」 の手応えも感じていますか?

はい。ストアカには、先生や主催団体の実績に応じてバッジを獲得できるシステムがあります。バッジ、シルバー、ゴールド、プラチナとランクが上がっていくのですが、「HOOD SCHOOL」は今ゴールドバッジです。ゴールドは「100人以上教えたand 20回以上開催」「満足度レーティングの累積平均が3.5」などの条件をクリアした証で、それだけの実績を作れたということなので、素直に嬉しいです。

―今後「HOOD SCHOOL」はどのように展開していくのでしょうか?

最近、入居者のバンドマンによるボイストレーニング講座を始めて、これから福岡移住計画の窪田さんによる編集講座、先生は誰でもウェルカムではなく、まずはつながりのある人にやってもらっています。今はHOOD SCHOOLの色や文化を作っているときなので、講座も講師もなるべく丁寧に作りたいという思いが強いんです。
受講者さんと先生、スタッフが一緒に学び場を作っている感覚があるので、これから「HOOD SCHOOL」の関係人口を増やしていきたい。着実に輪を広げていくイメージですね。

―その先にはどんな未来を描いていきたいですか?

私たちが立ち上げ当初からずっと言っていることの一つは、「HOOD天神に行くと面白い学びがあるね」という状態にして、街の中に浸透させていきたいということ。福岡で大人たちが「何か学ぶならHOODに行ってみよう」という感じになったらうれしいです。HOODきっかけの学びで働き方にも暮らし方にも何かプラスに動いてくれる人が増えれば、この天神や福岡がもっとイキイキした街になると思うんです。いままで受講してくれた方々がそうなので、きっとそうなると確信しています。

『HOOD天神』がオープンして3年、そこは仕事をするだけの場所ではなく、SCHOOLという学びのコンテンツやイベントもあり、人の生き方全体に関わっている場所に進化しています。
そんな『HOOD天神』は、これまで会員さんが満席状態でしたが、事業拡大で自社オフィスを構える企業さんが卒業するため、通常会員の募集を再開しています。気になる方はSCHOOLやイベントだけでなく、ワーク利用の拠点としても検討いかがでしょうか。

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