【ぼくらが連れて行きたい店vol.43】グルテンフリーなのにふわふわ!シフォンケーキで笑顔のあるおやつ時間を。(082KITCHEN)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

おいしいおやつがあるだけで、待ち遠しくてそわそわしてしまう。そんなあなたにぜひ知ってもらいたいのが、福岡市東区香住ケ丘にこの春オープンした『082KITCHEN(おやつキッチン)』。福岡県民にも親しまれている遊園地『かしいかえん シルバニアガーデン』のある西鉄香椎花園前駅からほど近い場所にあります。

「みんなが笑顔になれる街のおやつ屋さん」をコンセプトに、こぢんまりした店内には、一つひとつ手作りしたシフォンケーキがズラリと並びます。おやつを前に心ときめくのは大人も子どもも同じ。「今日はどれにしよう」と目を輝かせながら真剣に選ぶ姿は、ほほえましくもあります。そんなお客さまを優しい笑顔で見守るオーナーの副島涼子さんに、ふわふわのシフォンケーキに隠された物語を教えてもらいました。

―このお店をはじめたきっかけは何だったのでしょう。

実は私、以前は会社員をしていたんです。15年務めたのち、子育てのために退職したんですけれど、子育てが落ち着いた今、第二の人生として、人のためにできることってなんだろうって考えたんです。そのときに思い浮かんだのが、小さいころから夢だった「おやつ屋さん」です。私が子どものころ住んでいた福岡県上毛町は、大分との県境にある町です。昔は、おしゃれなカフェもすてきなケーキ屋さんもなくて(笑)。今みたいにお取り寄せができるわけでもないので、テレビなんかで見るお菓子を食べるには、自分で作るしかなかったから、いろんなお菓子を作りました。その時に思い描いていた夢が、今のお店に繋がっていますね。

―以前から、いろんなお菓子を作られていたんですね。その中でも、シフォンケーキに商品を絞った理由はあるのですか。

まず、「これならほかの人に負けない」ってなったのがシフォンケーキだったんです。あとは、「みんなが笑顔になれるおやつやさん」というコンセプトを考えた時に、家族みんなで食べられるものは何だろうって思って……。シフォンケーキなら、小さな子どもも大好きだし、甘過ぎないから男の人も食べられそう。それに、おじいちゃんやおばあちゃんも軟らかいから一緒に楽しめるなって。あとは、きれいなケーキではなくて、お母さんが愛情をこめて作ったような、着飾らない、毎日食べられる体に優しい“おやつ”のお店を、と考えたからですね。

―「みんなで食べられるおやつ」というのは、副島さんがとても大切にされているこだわりになるのですね。グルテンフリーにこだわったのも、そういった理由からですか。

そうですね。以前、栄養士として保育園の給食づくりにかかわったことがあるのですが、アレルギーがある子どもって、とても多いんです。アレルギーがある子どもたちは、当然、給食のメニューがアレルギー対応食になります。でも、なかにはみんなと同じものが食べたいっていう子もいる。おやつも一緒で、家族みんなが同じ箱から、同じものを食べたいだろうなって。もちろん今はアレルギー対応の市販品が多くありますが、その中で手作り感があるものは少ないんです。お母さんが自分で手作りできればいいのだろうけれど、毎日のこととなると難しいし、日々の家事や育児、仕事に追われていると、なかなかできないものです。だったら、アレルギーのある子でも食べられる手作りのお菓子がおいてあるおやつ屋さんがあればいいのになって。それで、シフォンケーキに米粉を使うことに決めたんです。米粉以外にベースの食材にもこだわっていて、砂糖は種子島産のミネラル豊富な洗双糖、卵は味宝卵を鞍手郡から直送してもらっています。

―米粉を使ったシフォンケーキは、私も以前別の商品を食べたことがあるのですが、ちょっと弾力があるというか、もっちりした感じが強いイメージがありました。でも、副島さんのシフォンケーキはそのイメージを覆すふわふわ加減で驚きました。

このふんわり感を出すのには本当に苦労したんです。2年間、配合を変えながらシフォンケーキを焼き続けて、やっとこのふわふわなしっとり感にたどり着きました。ベーキングパウダーなどは使わずに、メレンゲだけで膨らましているのですが、このメレンゲも混ぜた時につぶれてしまわないようにするにはどうすればいいのか、試行錯誤でしたね。アレルギーがあるお子さんのいるお母さんが、子どものためにおいしいお菓子を作りたいといって、研究のために買っていくこともあるくらい(笑)。米粉でここまでのふわふわ感が出ているシフォンケーキは、珍しいと思います。

―アレルギーがあるお子さんがいるママにとっては、本当にありがたいお店ですね。

シフォンケーキ以外にも、アレルギーがある子でも食べられる焼き菓子やアイスも用意しているんです。インスタグラムなどで情報発信をしていますが、それを見て、わざわざ遠方から訪れてくれる人もいます。最近は、大人になってから、グルテンを摂取することで体の不調を引き起こすグルテン不耐性を発症した方もいらっしゃいました。「こんなケーキはもう食べられないと思っていた」とおっしゃってくださったのが印象に残っています。また以前お店に来てくれたお子さんはアレルギーのために、お店でお菓子を選ぶという経験をしたことがなかったそうです。でも、その子がうちにきて、初めてお菓子を選べることができるといって、とても喜んでくれて。お母さんもとてもうれしそうでした。

―たくさん種類があるから選びがいがありそう! にんじんレーズンアーモンドなんて、あまり見ない組み合わせですが、全て副島さんのアイデアですか。

私が「おいしそう!」って思う組み合わせをいろいろと作っているんです(笑)。店頭には毎日10種類のシフォンケーキが並ぶのですが、プレーン以外は毎日、何が出るかお楽しみ。でも、家族そろって食べられるように、子どもが好きそうなものから、男性が好みそうなあっさりした味わいのものまで、いろんな種類を並べるようにしています。叔母が栽培した無農薬のブルーベリーや母が摘んだヨモギを使うこともあるんですよ。これだけ種類があると、お客さまそれぞれにハマりどころが違うみたいで、「これがおいしかった」「あれは苦手だった」って、そういう話を聞くのもおもしろいんです。家でこれだけの種類を作るのは大変だからこそ、店ならではの楽しみにつながっているといいなと思います。

―オープンしてまだ半年ですが、今後の展望を教えてください。

地域のマルシェに出たり、子どもと一緒に楽しめるおやつ作り教室をしたりと、地域の方たちとのつながりを大切にしながら、いろんなコラボをしていきたいなって思っています。また今は、福岡市立子ども病院で治療するお子さんとその家族が利用する「ドナルド・マクドナルドハウスふくおか」に、月2回、シフォンケーキで作ったラスクなどを無償提供していますが、こちらのボランティアも続けていきたいですね。療養中のお子さんや家族が一緒におやつを食べられる時間で、笑顔になってもらえるのがうれしいんです。そして将来的には、子どもたちが「放課後は、082(おやつ)に行こ~」って、愛言葉みたいに言ってもらえるようなお店になりたいですね。

大人も子どもも、大好きなおやつの時間。『082KITCHEN』で迎えてくれる副島さんの笑顔と、その愛情がたっぷり詰まったふわふわのシフォンケーキは、そんなおやつの時間をさらに幸せなひとときへと導いてくれます。毎日食べても、食べ飽きない。そんな素朴で、優しいおやつで、大切な人とおもわず笑顔になれるおやつの時間を過ごしてみてはいかがでしょう。

【082KITCHEN】
https://082kitchen.jimdo.com/
福岡県福岡市東区香住ヶ丘6-5-11
TEL:070-7615-1541
営業時間:10:00~19:00(売り切れ次第終了)
定休日:日曜日・月曜日

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