キャッシュレス化は何を生む? 地銀のFFGがキャッシュレス化に取り組む意義と強みとは。

今、世界的にキャッシュレス化が進み、その波は日本にも来ています。福岡では、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)が銀行口座と連携したスマホ決済サービス「YOKA!Pay(よかペイ)」を開発。2018年3月から福岡銀行、同年7月からは熊本銀行と親和銀行でサービスをスタートしています。そこで今回は、FFGが「YOKA!Pay」を推進する意義から、キャッシュレス化における未来予想図まで、FFGで同サービスを担う20代の若手4人にお話を伺いました。

※左から高崎さん、青栁さん、宇野さん、関戸さん

―今年3月から運用スタートしたばかりということで、まずは簡単に「YOKA!Pay」がどんなサービスか教えてください。

青栁さん:「YOKA!Pay」は、お店(加盟店)と個人のお客さまの銀行口座を、アプリを通じて連動させるスマホ決済サービスです。お会計のとき、お客さまはスマホのアプリを起動し、加盟店が提示したQRコードを読み込んで決済します。他社の「LINE Pay」や「Origami Pay」などのキャッシュレスサービスがある中で、「YOKA!Pay」は福岡銀行に口座をお持ちの個人の方と加盟店を対象とすることで、口座から即時決済をしていただけるというのが特徴です。

―そもそも、なぜFFGでキャッシュレス化に取り組まれたのでしょうか?

関戸さん:中国に代表されるように世界的なキャシュレス化への変化に対応するためです。加盟店側からするとスマホ決済サービスの導入は、費用や手間がかかるため、大企業に偏りがちです。しかし、私たちFFGは「いちばん身近な銀行、いちばん頼れる銀行、いちばん先を行く銀行」として、中小企業や個人事業主の方、例えば身近な八百屋さんなどにも広くご利用いただけるようなサービスを展開したいと思っています。「YOKA!Pay」は費用を抑えてご案内できるため、FFGとして力を入れて取り組む意義があると考えています。構想からサービス開始まで1年ほどかけて実現しました。

青栁さん:では、実際にどうやって利用するのかお見せしますね。

―シンプルで操作が簡単ですね。「YOKA!Pay」ならではの機能はあるのでしょうか?

青栁さん:ならではというところでは、提携先である大賀薬局さんで利用できる「調剤予約」という機能がついています。病院でもらった処方箋をカメラで撮影して、「YOKA!Pay」上で自分が行きたい薬局に希望の時間を予約すると、薬が準備されており、決済も「YOKA!Pay」で実施できます。お客さまには「待ち時間がないので助かる」と好評です。調剤予約のサービス自体は他にもありますが、スマホで決済までできるのは「YOKA!Pay」が日本初で、もしかしたら世界でも初めてかもしれません。
ほかにも、加盟店はYOKA!Payを通じてクーポンを発行できるので、お客さまの来店を促進できるというのも特徴です。サービスの部分はこれからどんどん進化させていく予定なので、ご期待ください。

―関戸さんがおっしゃったように、海外、特にアジアでは中国でキャッシュレス化が進んでいるというニュースをよく目にするようになりました。インバウンド対策として日本の口座を持っていない海外の方でも利用できるのでしょうか?

高崎さん:もちろんできます。「YOKA!Pay」は中国で普及しているスマホ決済「支付宝(アリペイ)」に対応しています。九州には中国の方がたくさん来られていますが、決済手段がなくて困っているという実情を知り、取り入れました。地銀として、九州のインバウンド活性化に貢献したいという思いもあります。実際に中国から旅行に来た方とお話をしたとき、「お店に“アリペイ使えます”というステッカーが貼られていると、歓迎されていると感じてうれしくなるし、安心できる」というお声もいただいています。

宇野さん:中国ではキャッシュレス化が進んでいるので、現金をあまり持たずに来日されて、手元の現金がなくなるとスマホでアリペイが使えるお店を探して、そこに行く傾向もあるようです。

―今年3月にサービスを開始して、今はどのくらいの店舗で導入されているのでしょうか?

関戸さん:3月に福岡銀行の128店舗からスタートして、今はFFG全体で約1000店舗から申込をいただいています。導入店は福岡市を中心に九州全域に広がっていますが、将来はYOKA!Payを導入していないお店を探すほうが大変というようにしたいと思っています。

高崎さん:「YOKA!Pay」は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社さんの「銀行Pay」システムを採用していて、もともと横浜銀行さんが導入されていました。導入銀行間の相互連携にも対応しているので、個人のお客さまは、「銀行Pay」の利用契約をされている加盟店であれば「YOKA!Pay」をご利用いただけます。ですから、関東などにも利用できるお店があります。今年の秋ごろにりそなグループの3行(りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行)、2019年2月にはゆうちょ銀行にも導入される予定で、「YOKA!Pay」を利用できる店舗は飛躍的に増えていくと思います。

宇野さん:私は長崎県を拠点とする親和銀行からの出向で、今はFFGのデジタル戦略部に所属しています。その立場から言うと、福岡はすごく都会で、キャッシュレスサービスの普及は、福岡と比較すると、長崎はまだまだの状況です。そのような状況において、FFGが「YOKA!Pay」を推進する意義は大きいと思っています。なかなか波に乗れない地方の人たちにも、手軽なキャッシュレスサービスを提供していきたいです。

―なるほど、どんどん便利になって、九州でもさらに広がりそうですね。これだけ広がっていくと社会にも変化が生まれそうですね。このキャッシュレス化は社会にどんな影響をもたらすと思われますか?

青栁さん:キャッシュレス化が進むと、例えば銀行ではお金を扱う機会が減るかもしれませんね。FFGは熊本ですでに無人の店舗を展開しており、テレビ電話でお手続きやご相談を承っています。働き手が不足する時代の中で、キャッシュレス化は人件費の削減や業務の効率化につながると思います。個人としては財布を持たなくなりますね。スマホ1台あればすべて完結してしまうという社会がくるという感じでしょうか。

高崎さん:ちなみに東京の愛宕神社では、電子マネーでお賽銭を払うことができますが、「YOKA!Pay」の加盟店には、お寺さんがいらっしゃいます。お寺が電子マネーというとちょっとかけ離れている感じもしますが、そういう時代に入ってきているのだと思います。

関戸さん:もっと踏み込んで考えると、今は円という経済軸において1万円札や100円玉があって価値を感じているけれど、全く違う評価軸が出てくるかもしれませんね。妄想レベルですが、モノやサービスの価値に応じてお金ではなく物々交換のようなことが行われたり、ありがとうという気持ちが評価軸になったり…。

―今、私たちは銀行口座に給料が振り込まれたら、口座からお金を引き出して使うことで、お金の重みやありがたみを実感できている気がします。それが画面上の数字だけになると、お金を軽く感じてしまうこともあるのでしょうか?

宇野さん:私たち世代はもともと紙幣と硬貨を有形物として知っていて、それがなくなるから、数字だけではお金のありがたみがピンとこないと思うのかもしれません。しかし紙幣や硬貨がない時代に生まれる子どもたちは、最初からお金=数字なので、数字にありがたみや価値を感じるようになるのかもしれません。数字が0だと何も買えないわけだからそこは一緒ですね。今はちょうど価値が変わる過渡期かもしれませんね。

高崎さん:スウェーデンでは、人の手に埋め込まれた認証チップをスキャンすることで、鉄道の乗車料金を払えるようになりました。そういったものさえ飛び越えて、ゆくゆくはモノを介在せず、顔などの生体情報で何でも支払えるようになるかもしれませんね。お金がないと乗れないという事実は変わらないけど、形態が変わる。財布に頼っていたのが、スマホに移行して、ついにはスマホもない、モノ自体を持たなくてもいい時代がおとずれるのではないでしょうか。

―「昔は財布っていうものにお金を入れていたらしいよ」「何それ?」と言われる時代が来るかもですね…。では、人口減少や高齢化が進む“地方”においてはどのような影響があると思われますか?

高崎さん:地方では特に人口減少や高齢化が加速して、働き手が減っています。人がやらなくてもいいことを機械に任せられるようになるのは、とてもいいことだと思います。例えば、小さなラーメン屋さんがお客さんに「お会計をお願いします」と言われたとき、ラーメンを作っていた人がその手でお金を扱ったりしているけれど、キャッシュレス化すればボタンを押すだけでいい。スマホで簡単に決済できれば、外国人観光客に対しても同じことができてスムーズになると思うんです。キャッシュレス化でどこでも同じシステムでお金が払えるようになれば、大都市だけではない地方にも足が向き観光客が増え、インバウンド対策にもなると考えています。

―確かにそうですね。さらに言えばキャッシュレスにすることで、属人化から解放されお金を数える手間もミスもなくなり、データ上で簡単に管理できるようになりますね。では、スマホを持っていない高齢者やキャッシュレスに抵抗がある人に対して、FFGさんはどう対応していくのでしょうか?

高崎さん:金融機関としては普及させたいけれど、日本人はまだキャッシュレスになじめない人が多いようです。ですから私たちは、「YOKA!Pay」以外にも現金やクレジットカード、デビットカードなど、さまざまなサービスを展開しお客さまの多様なニーズに応えていきたいと思っています。ただ、時代の大きな流れはキャッシュレス化の方向に進んでいるので、地方の銀行として、お客さんと顔を合わせながら、キャッシュレスは実際はこんなサービスで便利ですよと丁寧にお伝えしていきたいと考えています。

青栁さん:地銀として重要な姿勢のひとつは、どんな人も置いていくことなく、まんべんなくサービスを提供することだと思っています。ちょっとやってみたいなという人に対しても、ちゃんとサポートしたいですね。最近ではアプリなどは問合せ先がメールしかなく、電話で問い合わせができない物もありますが、「YOKA!Pay」は違います。私たちは入行したらまず営業店を経験して、若い人からご高齢の方まで、いろいろなお客さまと直接顔を合わせてお話します。だから、その後にどんな部署に行っても、いつもお客さまの顔や背景が浮かぶんです。どこに住んでいるどんな相手であっても、きちんと対応したいと思っています。そういう姿勢は一度は営業店を経験しているFFGならではだと思います。

関戸さん:そうそう。この前もご年配の方から「サービスの使い方を教えてほしい」という電話がかかってきて、あれこれとサポートして、4回目の電話でようやく成功したということがありました。それがとてもうれしくて、みんなで思わず拍手しちゃいましたね(笑)。

宇野さん:「YOKA!Pay」のキャッチフレーズは『暮らす人と街のお店を結ぶYOKA!Pay』。私はこの言葉がとても好きなんです。ネットショッピングは便利で、私も利用していますが、実際にお店に行ってみたいと思うこともある。そんなとき、「YOKA!Pay」があると、使えるお店に行ってみようとか、行動するきっかけになる。「YOKA!Pay」があることで、新しいつながりができたり、今あるつながりが強くなったりするのは、すごく素敵なことだなと感じています。

高崎さん:FFGは人と企業と地域を結ぶ存在でありたいと言っています。もちろんビジネスなので経済的な価値を追うことも大切ですが、「YOKA!Pay」は地域の人に楽しさや結びつきをもたらし、一つひとつの街から社会全体に笑顔を広げていけたらいいなと思っています。

急速に進むキャッシュレス化の波、それはきっとお金を持たなくてよくなるということだけではなく、話に出てきたように価値観や評価基準にも大きな変化をもたらすものになると思います。
そんな中、FFGには「YOKA!Pay」だけを推し進めるのではなく、万人に平等なサービスを展開し、色々な方に合ったサービスを提案するという姿勢がありました。

これからどんどん多様な考え方・価値観が生まれてくる中で、“どれか一つが正しい”ではなく、どれを選択しても認め合える、そんな世の中になっていけばいいなと思います。

【YOKA!Pay】
▽個人向けサービスページ
https://www.fukuokabank.co.jp/personal/service/yokapay/
▽加盟店向けサービスページ
https://www.fukuokabank.co.jp/corporate/ebservice/yokapay/

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