福岡発の文具・雑貨メーカー「ハイタイド」がロサンゼルスへ。強みは“繋がり”が生み出すモノづくり

いつもそばにある手帳やペン……デスク周りの文房具や雑貨は、小さいながらも、お気に入りをそろえれば、やる気が出たり癒やされたりする大切なアイテムです。福岡市中央区白金に本社を構える『HIGHTIDE(ハイタイド)』は、女性はもちろん男性からも人気を集める文具メーカー。来年創業25年を迎え、今では国内はもちろん、海外でも評判の文具ブランドを多く扱っています。そんなハイタイドが、この夏、福岡からアメリカ・ロサンゼルスに初の海外直営店を出店。低迷する文具・雑貨業界の明るいニュースに注目が集まっています。そこで代表の竹野潤介さんに、ハイタイドが目指すモノづくりや今後の展望について教えてもらいました。

―初の海外直営店オープン、おめでとうございます。ハイタイドの商品は、全国で人気を集めるブランドを多く展開していますが、実は福岡の企業だということを知らない方も多いようです。そこで改めて、「ハイタイド」とはどういった会社なのかを教えていただけますでしょうか?

創業当初は、手帳を製造・販売する小さな会社でした。そこから今の文具や雑貨といった商品につながっています。ハイタイドでは、“精神的に満たされるモノ”が感じられる商品作りを目指しています。ウキウキ、ワクワクするもの。そこを主軸に、今はいくつかのブランドを展開しています。中でも人気ブランドは「PENCO(ペンコ)」です。1本のペンから始まったブランドですが、来年2月に誕生から20年を迎えます。アメリカのダウンタウンストアで掘り出したようなアナログなテイストを落とし込んだ、懐かしさを感じる文具です。これは、日本はもちろんアジアやヨーロッパなど海外でも人気なんですよ。「PENCO」というブランド名のほうが、社名より売れている地域もあるほどです(笑)。

―これだけ人気とあれば、福岡ではなく東京などの大都市圏に本社を移転することを考えることもあるのではないでしょうか?

もともと創業者である先代は、大分の出身。創業時に九州のデザイナーらを集めて、福岡で立ち上げた会社です。営業拠点は東京にもあるけれど、モノづくりのエンジンである開発部や本社機能を移すという話はありません。みんな誇りを持って、福岡でやっています。

―では、福岡に拠点を構えることで、大都市圏にはないメリットを感じることもあるということでしょうか?

そうですね、生産者や加工業者といったビジネスパートナーの皆さんをはじめ、エンドユーザーの皆さんも、距離が近いというか、濃いというか……渦巻くというか(笑)。いい意味で、福岡はコミュニティが強いと感じます。いろんな業界の人と話したり、仕事したりする機会が多いので、インスピレーションを受けてモノづくりをすることができます。
あとは、東京では断られるようなノベルティなど小ロットの仕事でも、少ない時間で早く仕上げてくれる業者が九州にはあります。そういった柔軟な対応をしてもらえるので、他社ができないような数や価格で対応できるという、ハイタイドならではの強みに繋がっています。

―商品には、福岡ならではの地元色も反映されていますね。

ハードルが高そうにみえる伝統工芸などとの繋がりもスムーズにできるのも福岡ならではじゃないかな。やっぱりコミュニティの強さですね。伝統もありつつ、海外の文化と組み合わせてモノづくりができる風土があるのもハイタイドの良さだと思います。最近では、「ムーミンの博多人形」を販売したのですが、これは弊社デザイナーが人形師さんと協働して原型の制作から彩色までをこだわり、ハイタイドらしい“格好良さ”を落とし込んで作っています。

―2017年には、旗艦店となる「HIGHTIDE STORE(ハイタイドストア)」をオープンされましたが、このきっかけは何だったのでしょう。

今、文具業界は元気があるとはいえません。それはデジタル化の影響のほか、ネットショップが充実していて、実際に手に取って商品を購入する人が少なくなっているため。だから、普通のことをやっても絶対に盛り上がらないんです。そこでエンドユーザーの気持ちに触れて、濃く接点を持ちたいと思ってオープンしたのが『ハイタイドストア』です。

ここは、僕らの商品をダイレクトに評価してもらうだけじゃなく、思いを伝える場所にしたいと思っています。「ハイタイドって、こんなことを考えていて、こんなものを出して、こんなことをしたいんだな」って。だから、やっていることは商品の販売だけじゃない。アパレルや雑貨のポップアップショップを楽しんでもらったり、上映会を開催したり、さらにはご近所のお店にも声を掛けてマーケットをやったりとか……。「あそこに行けば何かある」っていう、ワクワク感を持ってほしい。カルチャーを発信しながら、消費者の皆さんとの接点が生まれて、繋がれる場所にしたいって思っているんです。

―ほかにも、文具の利用減少の対策は行っているのですか?

それが、今回のロサンゼルスの出店です。もともと、ロサンゼルスの出店は人づてに声を掛けてもらったんです。確かに海外への出店は考えていたけれど、アメリカで、とは漠然とも思っていなかったんです。これまでニューヨークにも販売代理店はあったのですが、さまざまな理由で今一つ伸びが悪かった。でも「PENCO」をはじめハイタイドのモノづくりやカルチャーのソースにはアメリカのポップカルチャーが存在していて。それに、現地のバイヤーはハイタイドの品質と価格のバランスを評価してくれているという背景がありました。それで、ロサンゼルス出店の話も「おもしろいな」って。アメリカは日本と違って、人口も増えているので、店舗オープンを切り口に新たな販路拡大に繋げたいと考えています。

―ロサンゼルスのお店「HIGHTIDE STORE DTLA」は7月5日にオープンされましたが、現地の皆さんの反応はいかがでしたか?

とても喜んでいました。日本の文房具が好きな人は多いんです。それに、これだけの文房具が並ぶお店ってアメリカにはあまりないから、おもしろがってくれます。さらに、内装デザインも評判でした。棚やショーケースといった什器は日本で作ったものを持っていってレイアウトしています。日本の繊細で作り込んだ商品の見せ方を取り入れているんです。ここまでこだわっているのも現地アメリカでは少ない。だから、店の造り自体も喜んでくれていると感じました。

―「HIGHTIDE STORE DTLA」の特徴はどういったところでしょうか?

文房具を中心に、いろんな人が集まって、楽しんで買い物をして、「ちょっと寄ってみようか」って感じてもらえるものをアメリカでも作っていきたいと思っています。それに加えて、九州を含めた日本のいいものを紹介できるような店になりたいんです。だから、ハイタイドだけじゃなく、PILOTやLIFEのノートとか、日本でよく見るなっていう商品を仕入れて並べています。ほかにもギャラリースペースで、日本でおもしろいことをやっている人や世界にまだ出ていないモノをしっかり紹介していきたいですね。やっぱり、「日本」っていうのを意識しながらやりたいです。


―今回のロサンゼルス出店は、ハイタイドにとっても大きな転機となったと思いますが、会社として今後の展望や目標を教えてください。

「ハイタイド」のブランド価値を上げていきたい。どんなモノをどんな価値をつけて作っているのか、それをしっかり伝えていきたいです。そのためにも、アメリカでその価値観に共感してくれる人や卸業者を開拓したいです。それで、アメリカにもブームというか……新しい価値を作っていく。そうすれば、アジアやヨーロッパでのさらなる人気はもちろん、日本に逆輸入できる商品やブランドが生まれる可能性はあります。コストのことを考えると、アメリカでのモノづくりは難しいかもしれないけれど、そこで繋がる人たちと一緒にできることには可能性を感じているんです。だから、裏方になることもありながらも、僕らでしっかりしたモノを生み出すっていう2つの軸でできることはたくさんあります。

「ハイタイド、なんかおもしろいことやっているな」っていう海外からのざわつきを、日本にも持って帰りたい。そうして「九州にあるあの会社、むちゃくちゃおもしろいらしいよ」って、周りが声をあげだせば、低迷している小売業界をしっかり盛り上げていけるような存在に僕らがなれると思うんです。世界を知って、感度が高いことをもっと知れば、もっと業界を良くできるんじゃないかなって。そんな期待と不安と希望が入り混じっています。

福岡から世界へ、新たな挑戦への一歩を踏み出したハイタイド。世界を舞台にしながらも、日本らしい繊細さやしなやかさ、さらに福岡ならではのフットワークの軽さを大切にしたモノづくりで、さらなるカルチャーシーンを生み出そうとしています。もちろん、地元福岡でも「ハイタイドストア」を中心に、文具と人、人と人を繋ぐ仕掛けは続きます。出合い、繋がれば、心にときめきやワクワクが生まれる福岡の文具。「最近、勉強や仕事に集中できない」「毎日に、ちょっとした刺激があれば……」そんなあなたは、ぜひ手に取ってみませんか。

【HIGHTIDE STORE】
http://hightide.co.jp/shop/
福岡県福岡市中央区白金1-8-28
TEL:092-533-0338
営業時間:10:00〜20:00
定休日:水曜日

【HIGHTIDE STORE DTLA】
http://www.hightidestoredtla.com/
787 S.Alameda Street,Suite140,Los Angeles CA 90021
TEL:213.935.8135
Open:11:00〜19:00
Close:MONDAY

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