スキルシェアサービスの先駆者「ストアカ」が思う、今後のスキルシェアの展望とは。

近年、家・オフィス・車・自転車など、いろいろな空間やモノをシェアする時代になってきました。その時代の流れに合わせるように、個人のスキルをシェアするサービスも増えてきています。中でも、個人のスキルシェアにいち早く着目し、2012年からサービスを展開してきたのがストリートアカデミー株式会社が展開するサービス「ストアカ」です。今回はそのストリートアカデミーの執行役員である窓岡順子さんに、スキルシェアの現状と今後の未来予想図について伺ってきました。最後には7月18日に福岡(アクロス福岡)で開催されるイベントについてもご紹介します。

ーまずは、「ストアカ」を知らない方のために、今一度どのようなサービスなのか教えていただけますでしょうか?

「ストアカ」は教えたい人と学びたい人をつなぐ、学びのマッチングサイトです。インターネットを通して、誰もが講座を開催でき、誰もが気軽に学べるサービスになります。2012年7月に創業、8月にサービスをスタートし、もうすぐ丸6年。現在21万人以上の方にご登録いただいています。

ー2012年創業ということですが、なぜいち早くこのようなサービスを立ち上げたのでしょうか?

創業者で代表の藤本崇は、アメリカで15年ほど生活した経験があり、アメリカでは個人が新しいことを始めるのは普通でした。例えば、弁護士がいきなり料理人になっても、「頑張ってね」という感じで。しかし、彼が日本に戻ってきて、サラリーマンをしながら高いお金を払って料理学校や映画学校に通っていると、「お前、何やってるの!?」という目で見られたことに違和感を持ったと。みんなが「もっと自由にやりたいことをやれる社会を作りたい」と思ったのが創業のきっかけです。機会があれば人はもっと学ぶし、新しいことにチャレンジする、そんな想いのもとサービスを展開しています。

ーでは、「教えたい」ではなく「学びたい」が入口だったのですね。

はい、最初は「学びたい」がきっかけで、どうやったら学びが気軽になるだろうという発想ですね。一般的に学びは、学校で先生から、入学金や月謝を払って学ぶという選択しかない。それを取り払ったのです。

ーストアカさんは個人のスキルシェアサービスの先がけ的な存在ですよね。2012年当時このようなサービスは日本になかったのでしょうか?

そうですね。アメリカには似たようなサービスがあったそうですが、日本にはなく、藤本がゼロから試行錯誤で作り上げていきました。そのとき藤本は養う家族がいたにも関わらず、大手企業を辞めてまで起業。勇気のいるチャレンジだったと思います。
講座の数は最初は一桁。しかもほぼ知り合いでした(笑)。しかし2年目は2,788人、3年目15,308人とだんだんと右肩上がりになり、6年目の今年は21万人を超えました。ストアカの特徴として、学んでいた人が先生になったり、先生が学ぶ側になることもあります。

ー急成長ですね。なぜ今、スキルシェアサービスへの注目が高まっているのでしょうか。

ひとつは、人生100年時代という認識が広まったからだと思います。リンダ・グラットンさんの著書「LIFE SHIFT」が2016年秋に日本で刊行されて、それからスキルシェアへの関心がぐっと高まっているのを感じます。これまでの定年で引退して安泰という時代から、キャリアの時間軸が長くなり、個人が自分のスキルに向かい合う機会が多くなっています。
もうひとつは、ネットで実名制の価値が上がってきたからだと感じます。ネットは匿名で怪しく怖いと思われていたけど、ここ1年で実名制のサービスがたくさん発生している。これまでは企業からサービスを受けるのが経済活動の主流でしたが、個人の信頼や実績や価値がマネタイズできるのようになってきたのは大きいなと思います。

ーストアカさんは初めから実名で?

個人と個人のマッチングは、不安があるとサービスが広がらないので、安心安全を重視して実名制にしています。今でも実名を出したくないという方もいますけど、そこはスタートのときから貫いています。スキルの高い方や有名な方でも匿名はお断りしてきて、もったいないと感じることもありましたが、結果的にはこれでよかったと思っています。

ースキルシェアのメリットはどんなところでしょう?

たくさんありますが、一番は気軽に学べることですね。これまで何か学びたいと思っても、お金も時間もなくて、英語を学ぶために語学スクールに入学金を払ったものの、いけずじまいで無駄にしちゃったという方は多いんじゃないかなと思います。スキルシェアが広まれば、もっと気軽に単発でいろんなことに挑戦できる世の中になって、お金も時間も効率的に学べるのがすごいメリットだと感じています。

ー反対にどのようなところでハードルの高さを感じますか?

しいていうなら、受動的な人にとっては受け入れ難い考え方かもしれません。例えば、会社や学校が用意してくれていた枠組みがなくなり、自分がやりたいことは何かということに向き合わなければならない時代なので、自分で考えず流れに乗っていたい人にとっては生きにくい世の中になるかもしれません。でも、それは本来プラスなことで、個人がやりたいことを自由にできるようになったほうがいいはず。私は、憂鬱な顔をして電車通勤する人たちの風景が苦手で、自分の好きなことをしていれば仕事に行くのは楽しいはず。今は過渡期だと感じています。

ー教える先生はどんな方が多いでしょうか?

フリーランスでビジネスしている方が得意なことを教えているケースもありますし、会社員で副業としてやっている方もいます。先生のメインは30~40代のビジネスパーソンです。教えてもらう側は30代の女性が増えています。登録者全体としては、私たちは「大人の学び」をテーマにしているので、下が20歳から80歳くらいまで、おじいちゃんやおばあちゃんもいらっしゃいます。

ーさまざまな年代の方が個人間のスキルシェアをする時代になってきているということですね。このスキルシェアの流れは、今後どのようになっていくと思われますか?

こうなってほしいというビジョンがあって、個人が生き生きと生きる社会を作りたいと思っています。やりたくないことで我慢するのではなくて、やりたいことがあれば簡単に始められる世の中にしていきたい。しかも何歳になっても「自分は歳だから」なんて言わずにチャレンジできる社会になってほしい。一人ひとりがやりたいことをやれる社会にするために、スキルシェアをもっと広めていきたいと思います。

ーそうなってきているという手応えはありますか?

とてもあります。ユーザーさんとお話する機会があるのですが、例えば、30代の会社員の男性で、ストアカのカメラ講座をいろいろ受けた結果カメラに対するスキルが上がり、今ではカメラのお仕事をもらえるようになった。将来はそっちで生きていきたいという方がいます。ほかにも、ストアカでマーケティングやプログラミングやエクセルなどを学んで起業した方がいたり、そういう方々にたくさんお会いするので、こういうケースが広がっていけば、みんな生き生きとした社会になるなと思います。私の息子が大きくなったら、それが普通という社会になってほしい、仕事は楽しいんだよというのを広めていきたいという気持ちがすごく強いですね。

ー働き方の多様化もあってスキルシェアが広がり、こういった流れは働く場所にも変化をもたらすと思っています。ちなみにストアカさんは東京でスタートして、最初に出した地方拠点が福岡でした。それはどういった理由だったのでしょう?

福岡に進出したのは2015年。福岡は新しいことに寛容で、市をあげてベンチャー支援をしていて、やりやすいかなと思い選びました。今は福岡にコミュニティマネージャーが1人いて、新しい先生を見つけたり、先生向けのイベントをしたりしています。

※福岡のコミュニティマネージャー

ー実際に福岡で展開してみてどうですか?

新しいものをどんどん吸収される方が多く、受け入れてもらっている実感があって、すごくよかったと思っています。福岡にはフリーランス、学びたい人や教えたい人もたくさんいて、コミュニティも盛り上がっています。昨年の4月から関西でも活動を始めていますが、福岡のほうが広まるのが早い感覚があります。
福岡は特に、ユーザーさんは女性が圧倒的に多いですが、先生は男性もいらっしゃいます。福岡は新しいことや楽しいことをやって、福岡を盛り上げたい、人の役に立ちたいという人が多くて、すごいなと思います。
今、福岡はいいサイクルが回り始めてきているなと思います。福岡だからこそ、とんこつラーメンの作り方とか、おばあちゃんの漬け物講座とか、そういうことができると楽しいなと思っています。普通の人でも何かしら得意なことってあるんですよね。

ー自分のスキルって、なかなか気づかないですよね。

そこが課題で、自分のスキルが誰かに必要とされているって気づきにくい。でも、人にすすめられて包丁とぎの講座を始めた70代の男性がいて、とても人気になっているんです。定年後にストアカの講座に参加して、自分は包丁とぎが得意だと気づき、試しに講座を開催したら大人気講座に。ご自宅でされているのですが、奥さまもお客さまが来るから部屋を掃除したり、お化粧してお出迎えしたり、夫婦そろって若返ったとおっしゃっていました。シニアでそば打ちの先生もいて、教えることで活気が出て、肌もつやつやして…そういうシニアが増えたら日本の未来は明るいなと思います。そのためにはもっとストアカを知ってもらわなければと頑張っています。

ー今後はどんなことを目指しているのでしょう?

今は東京のシェアが70%以上を占めていますが、これからは地方展開に力を入れたいと考えています。地方には学べる場が少なくて、お金をかけて東京まで学びに来る人もいる。地方創生の時代、地方こそスキルが必要とされているので、スキルシェアを広めていきたいです。

ー今月、福岡でイベントをされるそうですね。

「人生100年時代、おしえるからはじめる私らしい仕事の作り方」と題して、7月18日(水)18:00~アクロス福岡でイベントを開催します。福岡を拠点に九州でコミュニティを作り始めて丸3年、先生は1,000人を超え、たくさんの出会いが生まれています。先生として活躍されている方々のトークや、創業者の藤本がスキルシェアの未来について語るセッションには、皆さんが人生100年をイキイキ過ごし、先生にもなれるヒントがたくさんあると思います。誰でも無料で参加いただけますので、ぜひ気軽にお越しください。お待ちしています。

▽イベント申し込みはこちら。
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