【ぼくらが連れて行きたい店vol.37】きっとまた帰りたくなる久留米の母の店。(かわむら食堂)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

19時〜午前3時まで営業している食堂が久留米にはあります。3時まで営業している居酒屋はあれど、3時まで営業している食堂はあまり聞いたことがありません。そこは西鉄久留米駅から歩いて約10分、久留米市小頭町にありいつもお客さんでいっぱいの『かわむら食堂』。提供されている料理は野菜炒めやサバの煮つけ、オムライスにかつ丼など、いわゆる定食メニューです。『かわむら食堂』は料理の味もさることながら、店主・川村則子さんの強烈なキャラクターがお客さんを惹きつけ、時には真剣に人生相談に、時には笑わせてくれる。お店繁盛の指南書には書かれていない、人が集まる理由がここにはあります。
早速、かわいらしい笑顔で出迎えてくれた店主の川村則子さんにお話を伺いました。

−すでに満席に近いお客さんが入っていますが、お客さんはどのような年代の方が多いですか?

客層はもうバラバラよ。若い人からお年寄りまで来るし男女みんな来るよ。だいたい19時〜24時までは家族連れやサラリーマン、そして学生さんが多いけど、24時を超えるとスナックの姉ちゃんが良く来るね。お店終ってここでご飯食べて帰るんだろうね。

−なぜこのお店を始めたのでしょうか。

それはもう子どもを食わせるためよ。4人の子どもを食わせていかないといけなかったけど、パートじゃ到底稼ぎが足りないから、お店はじめたんよ。でも飲食店の経験があったわけじゃなかったからさ、何しよーか悩んだんよね。当時の自治会長さんに話を聞いたら、「久留米やったら焼鳥屋が儲かる」って言われたけど、串の刺し方もようわからんもん。でもその当時、子どもたちが「お母さんのご飯は世界一」って言ってくれてたから、特別なことはせず、普段作ってたご飯を出すようにしたんよ。それがはじまりやね。


−お子さんのため、そしてお子さんの言葉がきっかけだったんですね。でも飲食店経験がゼロだったら、開店準備が大変ではなかったですか?

そうそう、だから子どもたちには「もしお店がうまくいかんかったら、みんなで筑後川に入ろうねーって言ってたんよ(笑)。」子どもたちはなんも分っとらんから、「やったー!筑後川!」って言っとったけど(笑)。それぐらいの覚を悟決めてお店はじめたんよね。
ここはもともと本家の土地で本家に土地を分けてもらえたから、場所はすぐ確保できたんやけど、大変だったのは料理やね。飲食店で働いたことないから、どんな料理を出せばいいか分からんし、値段をいくら付ければいいのか分からんかった。だから、お客さんが見えるところに普段作ってる料理を並べて、お客さんが「これ食べたい!」って言ったらその料理を出すみたいな。お客さんの反応を見ながら料理を決めてった感じ。あと、スナックのお姉ちゃんが良く来てくれてたから、値段は姉ちゃんたちに聞いてたね。あの子らの方が良く知っとったから。姉ちゃんたちが「この料理は400円やね!」って言ったらその通り400円で出しとったよ(笑)。

−料理も料理の値段もお客さんと一緒になって決めてこられたんですね。お客さんと一緒に作ってきたお店だからなんかアットホームな感じがするんですかね。

そうと思う。昔からいいお客さんが多いんよ。忙しい時はお客さんが厨房に入って自分が食べる料理を運んでいってくれたり、自分で飲むお酒を持って行ってくれたりするので助かってる。お客さんが空気を察して、自分のことは自分でしてくれるんよ(笑)。

−お店をやっていてうれしかったことや思い出に残っていることはなんでしょうか。

やっぱり、昔来ていたお客さんが何十年たっても来てくれることかな。特に悪さをしていた子たちが大きくなって手紙を送ってくれたり、立派な社長になっていたりするとまぁうれしいよね。
お店やっててよかったと思うもん。久留米は福岡の中でも走り屋でやんちゃな子が多くて、オープンしたての頃はその子らがよくお店に来てくれていたんよ。でも若いし、お金も持ってないから、山盛りの定食を300円くらいで特別に出しててね、お腹いっぱいになると彼らは笑顔で帰っていくんよ。お腹いっぱいになると悪さをしないから、とにかくこの子らがお腹いっぱいになるようにたらふく食べさせてたよ。ほんと親のような感覚。その子らが大人になって戻ってきて元気な顔を見せてくれると特別うれしいよね。立派な大人になったなーって。

−本当に親身になってお客さんと接していたんですね。だからこそ、実家に帰るように、『かわむら食堂』に帰ってくるんでしょうね。
あと最初からすごく気になっていたことですが、お店の営業時間は19時〜3時までですが、そんなに遅くまで営業していて疲れないですか?

全然疲れないよ。昔はもっと朝方まで営業してたけど、全然疲れてなかったね。そのまま寝ずに山登りに行ってたくらい。今は山登りはあまりしないけど、営業後はフラダンスをしに行ってるよ。寝ずに遊びに行くのは当たり前やね。毎日が楽しいから辛いこともなんもないです!

−おータフですね(笑)。僕よりも全然タフな気がします。将来的にはお店はどうされるのでしょうか。

お店は私の代でつぶすよ。後をとってもらうつもりもないしね。第一、お店のカラーが強すぎるから、誰かが継いでくれてもお店の雰囲気は180度変わっちゃうよ。そうすると後継ぐ方もやりづらいだろうから私たちだけで終わり。チャンチャンです!だからいまのうちにたくさん来てね(笑)。

賑やかでまるで実家に帰ってきたような居心地の良さを感じる『かわむら食堂』さん。則子さんがお客さんに親身だからこそ、その親切心がお客さんに伝播し、お客さんも他のお客さんに親切になるのでしょう。そしてその循環が最終的には居心地の良い場所を生み出しています。実家から離れて暮らす学生やサラリーマンにはぜひ行ってほしいお店です。
温かな空気に触れたくなったら、誰かに話を聞いてほしくなったら、お腹いっぱい食べたくなったら、『かわむら食堂』を覗いてみてください。

【かわむら食堂】
福岡県久留米市小頭町14-24
TEL:0942-38-9417
営業時間:19:00〜3:00
定休日:不定休

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