バス文化が根付く福岡。バスマニアに聞くバスのある暮らしと魅力とは。

福岡にゆかりのない移住者にとって、福岡市内のバスの数には驚かされます。他都市に比べて断トツのバス文化を誇る福岡市。バス利用に慣れていない方や、バス利用が通勤通学のみで定常化されている方も“バスを利用すればもっと福岡の暮らしは楽しくなる”をテーマとして、今回は西日本鉄道さんにもご協力いただき、バスマニアの沖浜さんと水谷さんにお話を伺いました。

−今回はよろしくお願いします。福岡のバス事情については、本当のバス好きに聞いた方が良いだろうということでお越しいただきました。まずはお二人ご自身のことと、バス好きになったきっかけをお聞かせください。

水谷さん:山口県出身の24歳です。大学進学を機に18歳で来福しました。大学時代は地下鉄をよく使っていて、バスにはほとんど関心がありませんでした。
バスが好きになったのは、就職を機に引越をして、バスが多く通る交通の要衝(博多区の蔵本バス停近く)に住み始めたことがきっかけです。バスの行先がたくさんあって面白いなと。気づいたら西鉄バスの路線について調べるようになっていました。それまでは鉄道が通っている場所しか知らなかったのですが、バスに乗るようになって“私の知らない福岡市がたくさんある、街もバスも、もっと知りたい”と思うようになりました。

沖浜さん:私は京都生まれの45歳です。幼稚園のとき親の転勤で福岡に引っ越してきて、それから大学卒業まではずっと福岡市内に住んでいました。大学卒業後に中国上海に留学、その後広島県の会社に就職しました。結婚を機に福岡へ戻り、いまは糸島市の食品工場で働いています。
バス関係の活動は、本業の仕事とは関係のない完全な趣味です。バス趣味の原点は、40年くらい前の、私がまだ幼稚園に通っていた頃、実家に貼ってあった西鉄バスの路線図だと思います。両親とも京都出身で、引越直後は福岡の地理についてまったく知らなかったので、バス路線を覚えようと考えて貼っていたのでしょう。私は“この路線図に載っている各終点バス停の場所は、どんな風景なんだろう?”とロマンを感じ、路線図を宝の地図のように見ていました。

−バス好きが高じて、さまざまな活動をされているようですね。

水谷さん:はい。私は『博多っ子になりたい。』というブログを運営しています。西鉄バスの内容を中心に、福岡市のお役立ち情報を発信しています。バスに関連する記事の割合は、ブログ全体の3分の2くらいかな。沖浜さんからの紹介で、資料用バス写真の提供もしています。

沖浜さん:消えて行くバス路線や、各地のバス路線風景を記録に残そうと『ほぼ西鉄バスの旅』というブログを2008年から書いています。そのご縁で『秘境路線バスをゆく』というバス雑誌の九州地区担当として、雑誌に寄稿させていただきました。そこから派生してさまざまな雑誌へのバス写真提供・路線解説・旅企画などにも携わっています。あとはTwitterとFacebookで参加者を募って、「福博バスあるき」というバスを使った散策企画や、「バス路線探検家の会」というバスを多面的に研究するサロンの主催もしています。

※提供写真:バス路線探検家の会での歓談風景(2018.5.11)

−福岡は他都市に比べてもバス文化が根付いている街だと思いますが、ここまで根付いたのはなぜだと思われますか?

水谷さん:他の都市に比べると、福岡は人口規模のわりにコンパクトなので、鉄道路線が少ないと思うんです。駅が近くにあっても鉄道を使った方が不便になるケースも多くて、通勤や通学をするのにバスのほうがずっと便利に行けるということでバスを選択する人が多く、それが路線の充実につながるんだと思います。私の場合、今の職場に鉄道で通勤するにはJR→JR→地下鉄と乗り換える必要がありますが、バスなら最寄りから1本で直通です。他の地域でも、住んでいる場所にもよると思いますが、意外に鉄道だけだと不便なことも多いんじゃないでしょうか。地下鉄は地下に下りる手間もありますし。

沖浜さん:これだけの都市規模であるにも関わらず、バスはほぼ西鉄一社独占状態になったことが、利用者の空気感に影響していると考えます。一社になった経緯は郷土史研究などに譲りますが、「地下鉄やJRに乗り換えず都心部まで直通で行けて当たり前」という認識を福岡市内どこの地域の人も持っていると感じます。他都市に比べてバスへの期待値が高いのではないかと。
一方で「天神や博多に行く以外にもバスをもっと活用したいけど、あまりに路線が多すぎて複雑でわかりづらいから使えない」というモヤモヤを感じている人もたくさんいると思います。こちらはバスファンになるかもしれない潜在層ですね。

−福岡に限らず、バスの利用はなかなかわかりにくいものがあると思います。バスを上手く使いこなすコツなんかあるのでしょうか?

水谷さん:福岡だとやはり(株)からくりものさんが開発された『にしてつバスナビ』のスマホアプリを使うと便利です。バスに乗る上で不安なのは、「どこに行くのかわからない」「どれに乗ったらよいのかわからない」ということだと思いますが、からくりものさんも同じ想いを持って開発されたようです。このアプリだと現在地から目的地まで、さらには経由地もルートとして調べられます。遅延情報もわかるので、雨や一般車の影響を受けやすいバスが「今どこにいるか」リアルタイムで把握できて便利です。

沖浜さん: アプリが使えないという方であれば「西鉄お客様センター」はすごく優しいです。「いま○○というバス停にいて、天神に行きたいのですが…」と電話すればオペレーターさんが丁寧に答えてくれますし、ほとんどのことはこちらで解決できます。バス停にもセンターの電話番号が書いてありますし、困ったときはまず誰かに頼るのは大事です。立派な路線図も西鉄さんのウェブページに掲載されていますし、各地の営業所でもらえますし。

そして、便利な乗車券や定期券がたくさんあることもお伝えしたいですね。福岡市内が乗り放題の「福岡市内1日フリー乗車券(900円)」、バス以外に西鉄電車の柳川までの区間も乗れる「FUKUOKA 1DAY PASS(2,500円)」、土日祝日が半年乗り放題の「ホリデーアクトパス(12,000円)」は私も愛用しています。学生さん向けには「エコルカード」、年配の方には「グランドパス65」などもあって、どれもお得で便利なんです。乗り放題だと万が一乗り間違えても、金銭面で負担が生じないのは大きいですし、ちょっと思いついた時に冒険ができますよね。

水谷さん:たしかに1日乗車券はもっと知ってほしいですね。900円で福岡市内をどこでも廻れるのはお得です。天神や博多からマリンワールドや志賀島に行くだけでも、普通に払うより安くなりますから。

沖浜さん:こういった乗車券がどこで買えて、どこまで使えるかもお客様センターでは丁寧に教えてくれます。「市内1日乗車券」はバス車内でも売っているので、バスに乗ったら停車中に「1日乗車券ください」と運転士さんに伝えるだけで買えます。他の乗車券は、博多バスターミナルや天神バスターミナル、定期券売り場、観光案内所などでも買えるので、西鉄さんのサイトで調べてみるのもよいと思います。質問があれば私のブログ「ほぼ西鉄バスの旅」のコメントでも受け付けますよ(笑)。

−バスを使った暮らしとその魅力とは?

水谷さん:時間帯にもよりますが、西鉄電車や地下鉄は混雑します。バスも通勤時間帯は混雑するのですが、本数が多いので私の場合バス通勤は意外と楽です。外の景色が見えるのもいいですね。
あと遠出する際にも、是非バスに乗ってみてほしいです。大学時代は地下鉄の沿線が全てだと思っていました。しかし地下鉄が通っていないところにも魅力的なスポットが多数あるものです。

沖浜さん:「一般の乗合バスが都市高速を経由する」というのは、利便性だけでなく手軽なレジャーにもなると思っています。都市高速からの景色は福岡市を凝縮したようなところがあるので、付近の観光スポットを眺めたり、現在位置関係を確認したり、バスで走るだけで福岡を楽しめますよ。

水谷さん:人との関わりができるのもいいですね。運転手さんに「いってらっしゃい」と挨拶してもらえるだけでも嬉しいですし、人の温かさを感じます。乗り合わせた地元の人と仲良くなったりすることもあります。

沖浜さん:そうそう。運転手さんの人柄が垣間見えると嬉しいですね。終点まで行った時の待機時間に、休憩中の運転手さんが近くの観光スポットを案内してくれたこともありました。
つい最近、新規開設されたバス路線に乗車したら、地元の方々が嬉しそうに「近くにバス停ができたから」と用もないのにバスに乗ることを目的として、10人以上連れ立ってこられたのに遭遇しました。やっぱりバスが身近にある暮らしは便利ですし、幸せなものなんですよ。

私たちマニアに対しては「すぐにバスを上手に利用できるようになる裏技」みたいなものを期待されるかもしれませんが、正直バス利用の最終的なコツは慣れです。身も蓋もなくてすみません。まずは何か乗車券を一度買ってみてもいいですし、とりあえずバスに乗ってください。ほとんどの場合、思ったほど怖くないと感じられるでしょうし、一歩踏み出すと新しい発見があります。バスの魅力がきっと感じられるはずです。私でできることがあれば、いくらでもお手伝いしたいです。
(撮影協力:西日本鉄道

"暮らしのこと"の関連記事

keyboard_arrow_up