魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。
北九州市八幡西区、的場球場近くの住宅地。ぽつんとたたずむ小さなパン屋さんがあります。昭和39年から続く『二宮製パン』です。
元気のない時、疲れた時、優しい味のパンに何度助けられたかわかりません。そして、このお店を営むとっても仲良しなお二人に会いたくて、ついつい通ってしまう素敵なお店です。
二宮製パン店主の二宮章夫(にのみや・ふみお)さんと、奥さんの瞳(ひとみ)さんにお話を伺いました。
一番人気のこだわりのあんぱん
−お店にはふわっとパンのいい香りが漂いますね。私、二宮製パンのパンが大好きです!1番人気はどのパンですか?
瞳さん:あんぱんはよく売れるねぇ。ここのあんぱんじゃないとダメって言って売り切れの時は残念そうに帰って行くお客さんもいるくらい。コンビニやスーパでたまに買って食べてもやっぱりここのがおいしいって。おたくのパンが1番いいって言ってくれるだけでそれが一番嬉しいねぇ。
章夫さん:昔はつぶあんも白あんもあったんだけど、今は一番人気があったこしあん一種類だけ。あんぱんのあんこは自分で炊くんよ。パンを焼き終わって豆を買いに行ってそれから炊いて。だから、あんこはおいしいよ…!
もちもちの生地にまったりしたこしあんが入ったあんぱん。朝ごはんにいただくと1日元気に過ごせます。会社の行きがけにふらっと立ち寄るお客さんもいらっしゃるそう。
−お店は何時から開いているんですか?
章夫さん:シャッターを開けるのが6時くらい、全部のパンが焼き上がるのが7時くらい。注文のパン、店出しのパン。店出しのパンは1段目は5~6個、下の段は10個ずつくらいかな。夜中の23時に起きて、24時ごろからつくり始めるんよ。
−え!24時ですか…!!
章夫さん:ずっとその生活だからもう慣れたねぇ。パンが焼きあがって並べたら、午前中は配達や仕入れ、14時くらいに布団に入る生活。
瞳さん:夜ご飯の用意だけして夜主人を起こして、それから私は寝るの。だから生活は真逆。2人とも70すぎて、もう歳だから、疲れてきつそうな時は早く寝なさいっていうんだけど、昼間はなかなか寝られないみたいね(笑)。
パン誕生の裏にはそんな生活があったとは驚きました…。お店にあるパンは約20種類。銀のトレーに並べられ、レトロな雰囲気がたまりません。
章夫さんは15才から22才まで大阪のパン屋さんで修行、それからお父さんと一緒に二宮製パンを始めました。大阪にいた時に瞳さんと知り合い結婚、2017年には結婚50周年を迎えたそうです。
章夫さん:親父は大阪で働いててその時ちょうど戦争で出兵して。帰って来てからは八幡製鐵所のパン工場で働いてたんよ。堅パンをつくり始めたのはうちの親父。
−北九州名物の堅パンをですか!!
章夫さん:そう、だからうちでも最初つくってたんよ。今はもうやめちゃったけどねぇ。今はいろんな種類も出て、お店に並んでたらやっぱり気になって見てしまうね。まだやりよるなーって。
昔ながらの優しいパン
瞳さん:うちにあるパンは主人が大阪の修行時代に習ったことが基本になっていて、ずっと同じつくり方。あんぱんにジャムパン、昔ながらのパンって感じでしょ?
章夫さん:釜も餡練り機も創業当時のまま使いよるよ。昔はパンの値段も15円やった。当時はパン組合っていうのもあって、パン屋さんもたくさんあって、注文もたくさん来てて、あの頃は楽しかったなぁ。
瞳さん:お客さんも長年通ってくださってる方が多い。でもね、子連れのお客さんが、うちのじゃない食パンを食べさせると“うちの子「お母さん今日のパン違うね!」っていうんですよ〜。”って。小さい子でもわかるっていうのは嬉しいですね。
他のパン屋さんではなかなか見られない三色パン。ジャム、クリーム、あんこが入っていて、何が出てくるかは食べるまでのお楽しみ。今でも何が出るかな?とワクワクしながら食べてしまいます。
創業から50年以上大切に使われている窯も見せていただきました。年季が入っていますね…!最後にお2人にこれからの目標を伺いました。
章夫さん:目標は…ないね!(笑)死ぬまで元気に続けられたら。
瞳さん:オリンピックまで続けられたらいいなと思ってます。この釜とお父さん、どっちが先に倒れるか…ね(笑)。オリンピックまで続けられたらそれからはもう1年、もう1年って更新していけたらいいなと思っています。
とっても仲良しなお二人。取材中も笑いが絶えず楽しくお話を聞かせていただきました。柔らかくもっちりと、優しい味わいのパンの理由はお2人の人柄そのもの。
オリンピックまでとは言わず、元気で頑張っていただきたいです。また買いに行きますね。章夫さん、瞳さん、どうもありがとうございました。
【二宮製パン】
福岡県北九州市八幡西区若葉2丁目11−8
TEL:093-631-3503
営業時間:6:00〜18:00(売り切れ次第閉店)
定休日:日・祝日(不定休)