話題になった北九州のゲストハウス「Tanga Table」がいま見つめているもの。

2015年9月、北九州市にオープンしたゲストハウス『タンガテーブル』。全国で話題の「イノベーションスクール」(リノベーションスクール)から派生して誕生したゲストハウスということで雑誌「ソトコト」の表紙を飾るなど、多くの注目を集めた。誕生から2年が経ったいま、『タンガテーブル』はどうなっているのか、店主の西方さんにお話を伺った。

−お店は「リノベーションスクール」がきっかけだと思いますが、最初からゲストハウスを計画されていたんですか?

いえ、全然でした(笑)。「リノベーションスクール」は、空き店舗を利用してエリアの価値を上げていくことを目的としたプレゼン大会なのですが、なぜゲストハウスになったのかというと、消去法だったんですよ(笑)

広さは180坪。これだけ立地が良くて広いとなると、目的性がなければ難しいだろうと。
オフィス用途はすでに飽和状態、物販は4階なので視認性が悪い。でも宿泊だったら泊まりに行くという目的があるので、4階でも戦っていけるんじゃないか、ということでゲストハウスになりました。
誤解を恐れずに言うと、ゲストハウス(だけ)をしたくて、ここに作ったわけではないんですよね(笑)
僕らの目的は、あくまで小倉北区、北九州全体、九州全体のエリアの価値を上げることなんです。

−そうだったのですね。お店のコンセプトもその価値を上げることにありますか?

そうですね。北九州市の文化ってごちゃ混ぜだと思うんです。たとえば小倉城でも、隣にカラフルな建物(リバーウォーク北九州)があったり、いい意味で統一感がない。そのごちゃ混ぜ感に似せて、タンガテーブルも寄せ集めて作り上げていこうと思ったんです。
わかりやすく言うと、「街の再編集」。元々ある街の魅力や情報を自分たちで集めてきて、切り口を変えて世界に発信していく。今街にある魅力を自分たちで発掘していきたいと思っています。
店内にもそういう部分は表現していて、壁のお皿はテーブルを連想しているんですが、波佐見焼で483(487)枚だったかな?そのくらいあります。床の木は、工事現場の足場板。すべて寄せ集めてできているんです。

−オープン当時は多くのメディアにも取り上げられ注目されていたと思いますが、現在はお客さんの入り状況含め、どう変化してきましたか?

注目されたと言いつつも、オープンしてからしばらくは、お客さんがなかなかつきませんでした。地道にやってきて今ようやくお客さんがついてきたという感じです。
変化としては内部的な部分だとスタッフでしょうか。今現在8人で運営しているのですが、オープン当初からいるのは僕を含めて3人だけ。オープン時のスタッフがいなくなるのは、今までやってきたことがゼロに戻りそうな感覚で辛かったですが、みんなゲストハウスや旅が好きで集まっていたので仕方ないかなと(笑)。その分外に出て行ったメンバーにタンガテーブルや北九州の良さを伝えて欲しいですね。
お客さんの比率でいうと、海外の方が半分、日本人が半分です。でも泊数でみると、6~7割は海外の方ですね。海外の方って2,3泊が当たり前なので。男女比はほとんど半々。年代は20~30代の方が8割くらいです。
オープン当初は海外の方が3割くらいでした。なのでやっとゲストハウスっぽくなってきたかな、という感じです。

−お店をやっていて嬉しかったことやこれからの課題について教えてください。

国内外問わずに、また会いに来てくれる方がとても増えてきたことがうれしいですね。
特にあまり言葉の通じない人たちが「また会いに来たよ」って。そこで「お帰りなさい」って言える瞬間が、すごく気持ちがいい瞬間です。
課題としては、一度お客さんの入りが伸びた時期があったんですが、そこから伸び率がちょっと緩やかになってきているんです。
なので「北九州にタンガテーブルがあるから北九州に行く」と言われるくらいのコンテンツ力を磨かなくてはいけないと思っています。
同時にまだ地元の人たちに認められていない部分が大きいと思うんです。地元の方がタンガテーブルを勧める声が広がれば、その効果って見えてくるはずなんですが、そうなっていない。それはタンガテーブル単体ではなく、地元と連携したコンテンツとしての磨きがかかっていないからだと思っています。
北九州にはこだわりを持って営業している店が多くあります。そういった人たちとつながっていくことで、ここの魅力も上がってくると思っています。

−それらを含め将来やっていきたいこと、いま考えていることを教えてください。

小倉城の魅力も再編集しないと、と思っていて。海外から見るとお城は日本のシンボルなんですよね。でも僕らは「ただの小さなお城」だと思っている。
その辺の街を見る意識や切り口を増やしていかないといけないなと思っています。
結局最初の話に戻るんですけど、常に「街の再編集」なんですよね。で、再編集するエリアがどんどん増えていけばいいなと思っています。
「北九州をあじわう、旅のはじまり。」という、タンガテーブルのキャッチコピーがあるんですが、徐々に北部九州や九州全域と守備範囲を広げることで、お客さんに良いアテンドができると思うんです。

福岡県内で言うと、福岡市の取り組みがすごく、周辺地域はそのスピード感に追いついていない。コンテンツ1つにしても北九州にはないものが福岡市にはたくさんあるんです。
でも北九州が福岡市を真似しても勝ち目はないと思っていて。じゃあどこで魅力を増すのかっていうと、やっぱり「人」だと思うんです。
なので誰かに会いに来るっていうのを、どんどん育てていく必要があると思っています。
北九州に来るときは、誰かに会いに来てください。「何かあるかな?」って来たら何もないんでダメです(笑)。
人を味わう旅、刺激を求めたいという時に、北九州はすごくいい場所だと思います。物ではなく“人”が魅力なんです。

そういう地元の“人”がおすすめする場所と、“僕ら”がおすすめする場所の違いも伝えていければ、より一層旅の深みが出てくるのではないかと思います。
それを街ぐるみでしていく、というのが理想です。

【Tanga Table】
http://www.tangatable.jp
福岡県北九州市小倉北区馬借1-5-25 ホラヤビル4F
TEL:093-967-6284
Check in:16:00~2:00
Check out:11:00

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