【インタビュー】福岡のIT・クリエイティブ界隈が熱いのは本当か?

メディアでも福岡のIT・クリエイティブ界隈が熱いと取り上げられることが多くなってきた。ではどういったところが盛り上がっているのか、実際のところどうなのか、福岡のキーマンにお話を伺ってきた。

お話を伺ったのはIT業界や起業家など主に福岡のクリエイティブ界隈の方が集う『awabar fukuoka』の店主、村上純志さん。
周りから“ムラジュン”の愛称で呼ばれる村上さんは、福岡市のスタートアップ・コミュニティを盛り上げてきた中心人物のお一人。福岡市から相談をうけ、スタートアップカフェの企画を協力するなど、幅広く活動しています。さらに『awabar fukuoka』の店主という顔の他には、コミュニティ運営や人材育成などを行うNPO法人AIPの理事を務め、自身でも(株)サイノウも経営しています。

村上純志
NPO法人AIP理事長、株式会社サイノウ代表取締役CEO。デジタルハリウッド福岡校でシステム管理とプログラミングを学び、その後福岡のシステム開発企業に就職。平成20(2008)年に、AIPが運営を行っているフリースペース「AIP Cafe」に通い始め、ITコミュニティと出会う。平成23(2011)年から、テクノロジーとクリエイティブの祭典「明星和楽」に運営メンバーとして参加。平成25(2013)年には福岡市の「Startup Cafe」に立ち上げから参画し、アンバサダーコンシェルジュを担う。平成28(2016)年、株式会社サイノウを設立。平成29(2017)年には福岡市の「Fukuoka Growth Next」にも立ち上げから参画し、コミュニティマネージャーを担う。両プロジェクトに関わっている唯一の存在として活動を行う。

−さっそくですが、福岡のITコミュニティについて少しお話を伺えればと思います。メディアでは「盛り上がっている」という内容を目にすることが増えたように思いますが、注目されている実感はあるでしょうか?

そうですね。『awabar fukuoka』や『FUKUOKA Growth Next』には、福岡のIT業界の盛り上がりの視察も多くいらっしゃいます。人が集まっていてイベントも多いので「なんでこんなに盛り上がっているの?」とよく聞かれますよ。盛り上がりの理由としては、コミュニティのボトムアップと行政トップダウンの両軸がうまく回っていることがその1つとしてまず挙げられるんじゃないかなと思います。

−なるほど。コミュニティの中にはどんなプレーヤーさんがいらっしゃるんでしょうか?

たくさんいますね。抜けると怒られるので挙げるのが難しいですが笑、福岡で何人か挙げるとしたら、ヌーラボの橋本さん、ブランコの山田さん、アンダスの前田さん、ディーゼロの矢野さん、福岡移住計画の須賀さんたちあたりがすごく引っ張っている感じはあると思います。もちろん挙げきれない方々でITコミュニティを盛り上げようと活動しているプレーヤーも多くて、みんながそれぞれ楽しくやっているのが福岡の特徴です。僕はそうしたプレーヤーが増えていくようにずっと活動してきました。

−そうしたスタートアップが福岡に多いのはなぜでしょうか?

たしかに、福岡はスタートアップの数が昔と比較すると増えてきたと感じますね。でも、福岡も元々これだけ盛り上がっていたわけではなくて。おもしろくしたいという人がいたので、徐々にそうなってきたんですよ。昨日始めて今日成功している、というのではないんです。だから福岡のITコミュニティに移住転職される人にも、「福岡はおもしろくなる」んじゃなくて、「福岡をおもしろくしたい。おもしろいことをしたい」という意識を持ってきていただきたいという想いはあります。そうした意識でないと、せっかく福岡に移住してもきっとおもしろくならないんじゃないかな。

−なるほど。ほかにアドバイスされていることはありますか?

移住相談されると、「盛り上がりに惑わされないで!」って僕はだいたい一回止めます。自分が本当にやりたいことが福岡にあるのかを落ち着いて考えてもらいたいからです。「福岡だからゆっくりできる」とか「福岡が盛り上がっているからうまくいくんじゃないか」と環境に依存するのではなくて、ちゃんとやりたいことを覚悟してからいらっしゃると福岡をもっと楽しめると思います。

やりたいことがあると、やりたいことをやっている人たちと一緒に進んでいける空気があります。たとえばスタートアップの経営者たちとも等身大で話せたりして、身近に感じられる。だから「自分たちでもできる」と思える。そうしたポジティブな空気が福岡の盛り上がりの中には流れています。

※awabar fukuokaの壁には熱いコミュニティを象徴するステッカーの山。

−逆に福岡の課題は何でしょうか?

課題という言葉は好きではないですが、もっとスタートアップにも関わらず、エネルギーを高めていくことは福岡にとってのチャレンジだと感じています。というのも、インドなどの海外を視察してみると、学生やスタートアップの「勢い」をとても強く感じたからです。ハングリー精神がすごくてグイグイ伸びているんですね。そして日本には目もくれず、中国や世界を向いている。そういう勢いを見てワクワクもしたし、「まず僕自身大丈夫だろうか?」と危機感も感じました。その延長線上で福岡にも勝手にですが、危機感を感じたりはします。

そうしたエネルギーを持っているスタートアップは福岡にもいます。たとえば『FUKUOKA Growth Next』の入居メンバーで挙げると、ECプラットフォームのPearさんやanectさん、そして物流システムのNewRevoさんあたりは若さもあってすごいです。でももっとムーブメントをつくっていけたらと考えています。

僕自身が福岡をもっと楽しみたい。だからこそ、福岡が今盛り上がっているから満足、というのは感じていません。福岡はこれからもっとアップデートしていくでしょう。福岡へ移住される方も、自身が楽しめる街になることを考えられると良いのではないかと思います。

−ありがとうございます。最後にあらためて、福岡で働く魅力について教えて下さい。

僕は東京でサラリーマン・エンジニアの経験もあって東京も好きですが、福岡はバリバリ働いてもゆったり暮らせる魅力があります。やりたいことがある人には、ライフもワークも境目なく過ごせる街なんです。働いているんだか、遊んでいるんだか、暮らしているんだか、わからなくなってちょうどいい感じで暮らせるのが福岡だと思っています。

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