【ぼくらが連れて行きたい店vol.27】日常にそっと寄り添う和菓子屋さん(駒屋)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

「ここのおはぎ食べるの久しぶりー!」と若い女の子たちが嬉しそうに和菓子を買いに来ます。美容室にセレクトショップ、カフェ。おしゃれの代名詞とも言える町、大名。そんな町の片隅にあるのが昭和6年創業の和菓子屋さん『駒屋』です。和菓子の若者離れが話題になっている中、『駒屋』では若いお客さんが和菓子を買う姿が印象的。若い人を集めるひみつはなんだろう。毎日あんこを食べるというシャイなご主人、小島栄次郎さんとニコニコ笑顔が素敵な奥さんの久美子さんにお話を伺いました。

名物はつきたてのお餅で作る豆大福

−おいしそうなお菓子がたくさん並んでいますね。一番の人気商品は暖簾にもある豆大福でしょうか?

久美子さん:「そうですね。この豆大福です。これを目当てにいらっしゃるお客さんも多いですね。創業当時から変わらない大福です。1回につくる数はだいたい150個。やはり時間がたつとお餅が硬くなってしまうので、1日2〜3回に分けてつくります」

駒屋の豆大福はふわ、モチっと柔らかいお餅の中に優しい甘さのこしあんが包まれています。お餅の中には塩気のきいたほくほくの赤えんどう。甘さと塩気が重なって絶妙なおいしさを生みだします。実は駒屋の商品の中でこしあんを使っているのはこの豆大福のみ。もったりとしたこしあんは5〜6時間かけて丁寧につくられています。

−昭和6年からずっとこの場にある駒屋さんですが、お店のこだわりはどういったところでしょうか?

栄次郎さん:「こだわりは材料ですね。あんこは既製品ではなく豆から炊きます。小豆は北海道産を使っていて、つぶあんは全て大納言小豆。もち米も佐賀県産のヒヨクモチを使っています。添加物は一切使っていません。だから安心して食べていただけますよ」

小さいお子さんからお年寄りまで安心して食べられる、素材そのものの味を楽しめるのは駒屋の魅力の一つかもしれません。駒屋のショーケースには豆大福の他にもみたらし団子やおはぎ、やぶれまんじゅうに季節の和菓子と種類が豊富。どれを買おうか迷ってしまいます。

久美子さん:「和菓子の種類は常時10種類ほど。季節によって種類を変えながら販売しています。秋は栗や芋が旬なので、今の時期は栗を使った“栗ごま大福”、さつまいもをたっぷり使った“いしがきだんご”がオススメですね。12月になるといちご大福、春になると柏餅なんかもつくります。ただ桜餅だけは1年中置いています。理由?“彩り”ですかね。ピンクがあるだけでパッと華やかで可愛らしくなるでしょう?(笑)」

桜餅にそんなひみつがあったとは…!季節外れの和菓子と出会えるのは新鮮で嬉しいですよね。

あんこ嫌いをも虜にする駒屋の和菓子

−お店について教えてください。

栄次郎さん:「このお店は私の父が始めました。ずっとこの場所で営んできて、昭和6年の創業から今年で86年。北九州、神戸の和菓子屋さんで修行をして、28歳の時にここでお店を開いたと聞いています。私が2代目、妻と息子と3人でやっています。もうすぐ息子に代替わりをしようかなと思っていて。朝は6時半から準備を始めて8時半から開店。10時半くらいまでに徐々に商品を揃えていっています。出勤前に若い人たちが朝ごはん変わりといってお菓子を買っていくんですよ」

−なるほど、駒屋の和菓子はこの街をつくっている人々の日常にそっと寄り添っているんですね。今までお店をやってきて、嬉しかったことはなんですか?

久美子さん:「あんこが苦手で食べれなかった方がうちのはおいしいから食べれた、と言ってまた買いに来てくれたことですかね。小豆もいいものを使って、自分たちで炊いているからやっぱり既製品とは風味が違うんですよね。これからもずっと、安心して食べていただきたい。それが今後の目標です。“おいしい”といってもらえたらそれが一番ですね」

取材中も駒屋の和菓子を求めて絶えずお客さんがやって来ます。買いに来られたお客さんにもお話を伺ってみました。

お客さんの声:「近くに来るとここのお菓子を買ってしまうんです。何と言ってもやっぱり豆大福。おいしんですよね〜。今日はお友達の分も一緒に買いに来ました。だんだん寒くなってきて、温かいお茶が飲みたくなるでしょ?そしたらやっぱり思い浮かぶのは和菓子。あんことお茶を食べるとホッとした時間が過ごせますもんね」

お餅をつく音、まんじゅうを蒸す香り。ショーケースに並ぶ色とりどりの可愛らしい和菓子たち。そして小島さんご夫妻の優しい笑顔。駒屋の前を通るとついつい吸い寄せられてしまう理由がわかった気がします。ぜひ皆さんもほっこりとした時間を駒屋のおいしい和菓子と楽しんでみてくださいね。栄次郎さん、久美子さん、どうもありがとうございました!

【駒屋】
福岡県福岡市中央区大名1丁目11-25
TEL:092-741-6488
営業時間:8:30〜18:00(売り切れ次第閉店)
定休日:日・祝日(不定休)

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