「F-LIFE SHIFT story」は福岡に移住してきて暮らしや働き方、考え方などをシフトした人たち(先輩移住者)のストーリーを追った特集です。福岡に来て何が変わったのか、これから福岡で暮らしていきたい・変えていきたいという人たちの参考になればと思います。
福岡県の中央部に位置する筑豊・川崎町の野菜や果物が、実は今、都市部(福岡市)のパン屋さんで飛ぶように売れているそうです。ほんの一部のお店限定で週末だけの小さなマーケットではありますが、入荷すれば即日完売。とにかく質がいい、一度買ったらやめられない、新鮮すぎて日持ちがすごい!と熱狂的なファンがついているそう。そんな川崎町の野菜を専用トラックで福岡市内のパン屋さんに届ける、大阪からの移住者である塩見純司さんにお話を伺いました。
川崎町での面白さ
−主にどちらのお店にどのような頻度で野菜を運んでいらっしゃるんですか?
「現在は、毎週金曜日に川崎町の農家さんや直売所をまわって旬の野菜や果物を揃え、北九州市や福岡市を中心に平均して5、6軒。注文に応じてパン屋さんや飲食店さんに届けています。野菜だけでなく川崎町の特産である蜂蜜や味噌なども届けることもあります。今日配達した福岡市東区にある『ルヴァン・パストリー』さんは、ベーグルサンドなどの惣菜パンの具材に野菜を使っていただいているほか、かなりのスペースをとって、パンと一緒にたくさんの川崎野菜を販売していただいています。近くに大型スーパーや野菜専門の販売店もあるのですが、おかげさまで大好評で、あっという間に売り切れるそうです。私もしばらくはお店にいて、お客様とお話したりオーナーから反応を伺ったりと、とても刺激的な時間になっています」
−塩見さんは一昨年、川崎町の地域おこし協力隊として大阪から移住された方と聞いていますが、そもそもなぜ今の仕事に?
「私は、滋賀県で生まれ地元の大学を卒業してからもずっと大阪で働いていました。旅行が好きというだけで最初は旅行会社に就職しました。その後、京都にある農業系ベンチャー企業に転職して体験農園やグリーンツーリズムの企画などを通し、野菜のこと、農業の今を学びました。川崎町はまったく知らない土地ではなく、隣町の田川市で母方の祖父が農地を持っており、管理が大変なのでなんとかできないかと相談を受けていたのでちょうどよい機会かと。正直、最初は川崎町も田川市も一緒というイメージがありました」
「ただ、今はですねえ、毎日関わっている農家さんや直売所の方、現在、所属している観光協会や町役場の皆さんなど、川崎町の魅力をなんとかして伝えたいと頑張っている方と、とにかく共に頑張っていきたいという気持ちでいっぱいです。着任から1年半ですが、まだまだ毎日が新鮮です。先のことはわからへんのですが、大阪の旅行会社ではずっと中学生の修学旅行の担当で、都会の子ども達の行き先は田舎体験と民泊ばかりでした。最初はイヤイヤであっても最後はみんな感動で泣いてはるんですよね。そういうのをずっと見てきましたから、人との関わり次第で何がどうなるかわからへんなあと最近よく思います。川崎町ではそんな面白さを強く感じています」
−川崎町といえば「かわさきパン博」が有名ですが、このイベントの目的は単においしいパン屋さんを一度に集めるということだけではないんですよね?
「おっしゃる通りです!本来の目的は、出店いただくパン屋さんに、町でとれる野菜や果物、はちみつなどの加工品を使ってもらいたい、その美味しさを知ってもらいたいというところにあります。イベント当日は、それぞれのパン屋さんに川崎町の野菜を使ってオリジナルパンを作ってもらったり、その後、川崎町の野菜を気に入ったパン屋さんから注文が入ったりと、よい関係ができていて、私が関わるまでは、なんと『パン博』の仕掛け人である観光協会山本事務局長が自らマイカーに野菜を積んで毎週、こうしてパン屋さんに野菜を届けていたそうです。人手が足りない中でも地道に忍耐強く仕組みづくりを頑張ってこられたことを思うと、なんとか私もこれを引き継ぎ、さらなる広がりを生めるよう後押ししたいという気持ちです」
※賑わう『かわさきパン博』
※協会事務所で塩見さんと談笑する山本事務局長(写真右)
「地域おこし協力隊に着任後、すぐに5回目、今年は6回目の『パン博』に関わらせていただきました。とにかく何万人単位で凄い人が集まるのにまずびっくりしたのと、ただ大きなイベントをやったということに満足するのではなく、それを手段として、こっからどう広げていくかということを重要視してはる。それがもう、めちゃめちゃ共感できるところなんです!」
−根っからの関西弁が、聞いていてなんだか楽しいですね。「ナニワのあきんど」(笑)ではないけれど、塩見流セールストークもなかなか好評だとか。
「私にとってはなんら普通のことなんですが、やはりこっちで聞く関西弁は新鮮みたいで、言葉がきっかけになってさらに話が弾むことも多いですね。この野菜はどうやって食べたら美味しいとか今のおすすめはこれだとか、お客様にはついつい身振り手振りで熱っぽく語ってしまいますが、過剰な言い方はしてないつもりです。嘘偽りなしで、おいしいものはおいしいと伝えたくて」
−真剣に丁寧に向き合っているお気持ち、その指の先まで溢れているのがわかります。旅行会社に7年半務め多くの人と交流してきたコミュニケーション力と、体験農園の会社で培った野菜づくりへの熱い想いが、今、うまく結びついていますね。
「まったくありがたいことです。自分のやってきたことが川崎町の仕事でうまいこと繋がっていったなと。野菜を売る喜びは前職でもずいぶんと体験しましたが、都心のパン屋さんでこのような形で野菜が喜ばれ、飛ぶように売れていくとは、本当に驚きです。また、川崎町という場所が意外にも福岡市などの都心から近いということにも大きな可能性があると私は思っています。わざわざ山奥の不便な場所に行かずとも都心から車で一時間弱で農業体験や田舎暮らしを楽しめる。これは強みだと思いますし、毎週私が行き来することで、もっと町の農業や食の魅力を都心の人々と結びつけられるよう頑張りたいと思います!」
※PRキャラクター小梅ちゃんと、頼れる観光協会オールメンズ