「F-LIFE SHIFT story」は福岡に移住してきて暮らしや働き方、考え方などをシフトした人たち(先輩移住者)のストーリーを追った特集です。福岡に来て何が変わったのか、これから福岡で暮らしていきたい・変えていきたいという人たちの参考になればと思います。
花とお手紙?
「東京から宗像に移住してきた夫婦がいるらしい」
「花とお手紙って言うんだって」
「カレーをつくるという噂も」
「農家だって聞いたんだけど」
これからインタビューだというのに、会う前から情報が錯綜している…その真偽はきっと会えば分かると、まずは宗像市へ。ご自宅に迎え入れてくださったのが、今回お話を伺った長谷川嶺(はせがわりょう)さん・文香(あやか)さん夫妻でした。
差し出された名刺には〝花とお手紙/カレー/スープ〟その下に〝えいしんファーム〟という文字が。やっぱり全然わからない…まずはおふたりのお話を伺ってみることにしました。
文香さん:「私たちは、2016年の11月に東京から福岡へ移住してきました。この春から〝花とお手紙〟という結婚式の招待状のセミオリジナルサービスをスタートしています」
文香さん:「花とお手紙には〝結婚式の招待状も『お手紙』だと思ってる〟というメッセージを込めています。一般的な招待状はどうしても形式的で、悪く言うと書類のような内容になっているのが残念だなあと思うようになって…本当はとても気持ちを込めて届けているはずなのに。なので、私たちは改めて招待状を〝お手紙〟だととらえなおして、温度を感じられるものを提案することにしたんです」
「これ、私に向けたお手紙だ」と、ひと目でわかる招待状。ひとりひとりゲストの名前が個別に入るらしい(本文にも相手の名前が入るとのこと)こんな招待状が届いたら、気持ちがあふれてきて、当日がもっともっと楽しみになりそう
思いっきり泣いたり、笑ったり、しようぜ
−おふたりは、なぜ東京から宗像に移住されたのでしょうか?
嶺さん:「その話の前提になるんですけど、実は僕たち、3人のチームなんです」
−もうひとり別の方がいらっしゃるということですか?
嶺さん:「はい、僕たちは3人で〝JINSEI inc.(じんせいいんく)〟という株式会社を経営しています。その事業のうちのひとつが、花とお手紙だと思っていただけれればよいかなと」
−なるほど、だから名刺には花とお手紙だけでなく〝カレー〟〝スープ〟そして〝えいしんファーム〟と書かれていたのですね。
嶺さん:「そうですそうです。そのうち〝えいしんファーム〟の代表を務めている竹下英臣(たけしたえいしん)が、2年前から宗像で農業研修をはじめたのが縁で、僕たちもこっちに引っ越してきました。彼の近くで生活することが一番の目的だと考えて、決断から移住まではすぐでしたね」
文香さん:「JINSEI inc.のメンバーは、もともと嶺さんの大学の頃の悪友4人とそのパートナーなんです。人生と言うと重たいのですが、自分たちのすべてを屋号つまり看板に掲げて〝思いっきり泣いたり、笑ったり、しようぜ〟と言い合えるメンバーです」
嶺さん:「大学の仲間には、人生で大切なことをたくさん教わりました。相手の嬉しいことや辛いことを自分のことのように感じ合えるメンバーで、時には怒鳴り合いのけんかをしたり、そうかと思えば肩を抱いて泣きあったりして…」
文香さん:「卒業を機にいったんそれぞれの道に進んだのですが、嶺さんはみんなと一緒に生きていくことってできないかなって、早い段階から話をしてましたね。『俺らの人生どうするー?』みたいに。それで自然に〝JINSEI〟なんてチーム名になって」
嶺さん:「実は、チームを立ち上げたのはもう4年前です。そこから、自分が自分の足で立てる力をつけたメンバーから集まることを決めて、いよいよ今、僕と文香そして英臣からスタートしています。残りのメンバーは、京都と岐阜でそれぞれ頑張って力を蓄えてくれているはずです」
リレーションクリエイティブチーム?
−名刺に書かれている事業、それぞれバラバラのように見えるのですが?
嶺さん:「実はぜんぶつながってるんです」
文香さん:
「私たちは自分たちのことを〝リレーションクリエイティブチーム〟と呼んでいます。私たちとの出会いをきっかけに、新しい仲間を見つけられたり、創造的なプロジェクトがいろいろと生まれていく場としての役割を担えるといいなあと思っていて」
嶺さん:「そういった、縁がつながったり集まったりする〝仕組み〟が僕はビジネスで作れるんじゃないかと思っています」
※いただいた名刺:たしかに「リレーションクリエイティブチーム」と書いてある!
−それは例えばどういうことなのでしょうか?
嶺さん:「まず花とお手紙ですが、これは〝入り口〟なんです。ホームページ(https://www.hanatoletter.com)を見ていただけると感じてもらえるように、僕と文香の雰囲気をサービスという形にして、世の中に提案しています。きっと花とお手紙に興味を持ってくださる方は、僕たちの雰囲気や世界観に共感してくださる方だと思うんですけど、その方々と出会えるきっかけになると考えているんです」
文香さん:「花とお手紙で出会えた人たちを、次は〝花とカレー〟にお呼びするんです」
−カレー!
嶺さん:「カレーって凄いんですよ。たぶんほとんどの人が好きで『カレー食べにきなよ』って誘ったらみんなきてくれるんです。そういう参加するハードルが低い場に、僕たちがつながって欲しい人たちが集まったら、何か面白いことが起こると思いませんか?」
文香さん:「私たちは結婚式が1泊2日のオールナイトキャンプウェディングだったんですけど、そこでチームごとにカレーを作ってもらったり、東京では自分たちの自宅を〝かれーのいえ〟として開放したりして、カレーをつかった場づくりの実験をしてきたんです。みんなちゃんと仲良くなって『次いつ会う?』と約束して帰ってくれる、そんな場所が作れるのがカレーなんですよね」
結婚式では150人が15チームに分かれて、カレーの食材争奪戦からスタートしたんだそう!
嶺さん:「〝花とカレー〟ではつながりを、〝花とスープ〟ではあたたかさを届ける仕組みをつくるつもりです。スープに関してはまだ秘密ですが、とても意味のある事業になると思っています」
文香さん:「花とお手紙、花とカレーを通じてつながりができたら、次はえいしんファームに遊びにきてくれたり、つながった人たち同士と新しいコラボレーションが生まれたり。そんなワクワクする未来を実現しようと、いま頑張っています」
福岡に移住、そしてこれから
−最後に、改めて福岡へ移住、起業という大きなライフイベントを迎えてどうですか?
嶺さん:「すごく暮らしやすいです!海も山も街も近くて驚きました。僕の地元は兵庫県で、文香は青森。社会人からはずっと東京だったので、福岡はひとりも友達がいなかったんですけど、出会う人みんな素敵な方ばかりで」
文香さん:「あと、福岡は〝遊びに来て〟って誘いやすいです!空港も近いし、東京からもすぐだし。みんなが旅行感覚で遊びに来てくれるので、不思議と東京にいた頃よりも、会いたかった人に会えているんですよね」
−不安なことはないですか?
嶺さん:「もちろん不安はあります。お金大丈夫かなあとか(笑)でも、不安を感じるのは現実を見ている証拠で健全なことだし、それを乗り超えるために〝勇気〟で奮える毎日は、とても幸せだなあと思います」
文香さん:「ひとりじゃ、きっと大変だったね。チームでいれてよかったね」
嶺さん:「花とお手紙の事業は、2年でピークを迎える予定です。夫婦というところに意味があり、その僕たちが気持ちを込められるだけの人数には上限があります。だから〝招待状もお手紙だ〟っていう文化が根付いたら、そこで一区切りかなと思っています。3年後には、花とカレーのつながりから、えいしんファームがもっと盛り上がってくると思うので事業のバランスも変わっていくはずです」
文香さん:「きっと私たちが考えもしないような未来になるよね。そんな未知な部分も含めて、変化を楽しんでいけたらなって思っています」
嶺さん:「暮らしの部分と、ビジネスの部分をどちらも大切にしながら、気持ちよく価値を交換していけるような、そんな〝生活〟を実験していきたいね」