【ぼくらが連れて行きたい店vol.23】福岡の人に支えられて出来たいまのカタチ(FIGARO)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

◎移住後のいまのカタチ

今福岡のトレンド発信地として注目されている、大名。その大名にある、本格的なイタリアン食堂『FIGARO』は、美男美女の若い夫婦が切り盛りされています。美味しい料理を提供して下さる油谷将太さんと、元気にホールを駆け回る奥様の知亜希さんに魅了され、お話を伺うことにしました。

−お二人はもともと福岡のご出身ですか?

将太さん:「いえ。僕は山口、妻は新潟出身で、3年ほど前福岡に移住してきました。それまでは10年ほど東京にいたのですが、結婚やお店をオープンしたらなかなか拠点変えるのが難しくなるよねって話になって、全国いろいろ回って移住先を探していたのですが、海も山もある場所が良かったし、住む環境としては一番良さそうだということで福岡を選びました。人も多すぎず満員電車もないのに、そこそこ都会で自然もあるのが、とても住みやすいですね」

−お二人とも移住者だったのですね。この場所にお店を出したきっかけは何だったのでしょうか?

将太さん:「当時は土地勘がほぼなかったので本当にたまたまです。僕は山口に住んでいた頃はよく福岡には来ていたのですが、久しぶりに大名に来たら人がすごく少なくなっていて。10年前はもっと人が多くてアパレルのお店もたくさんあり、活気に満ちていたんですよ。だから、物件の関係でなんとなくここに決まったものの、『FIGARO』からここ周辺を盛り上げていきたいなと思って決めました」


−福岡に移住後、お店を出されたということで、とても勇気がいることだと思うのですが、お知り合いの方が結構いらっしゃったのですか?

将太さん:「僕は古い友人が一人いただけで、妻の方は全く知り合いがいない状態でした。実際福岡に移住してから1年ぐらいはなかなか店を出す勇気が出ず、ずっと物件探しになっていましたね。妻が“迷っていてもキリがない。実力があれば人気が出るから”と言ってお尻を叩いてくれたので、なんとかこの店をオープンすることができました。それでもはじめの3.4か月は本当にお客さんがいなくて地獄のようでした(笑)」

知亜希さん:「だけど福岡の出身のお客さんが“似顔絵描いたり自己紹介した方が良いよ”とアドバイスを下さったりして。実際に表に出している看板に似顔絵を描いたりしたら、お客さんがいらっしゃるようになりましたね」

将太さん:「福岡ならではのお店づくりだよね。僕はずっと東京にいたので、東京のイメージでお店の構想を考えていたのですが、福岡では全くマッチングしなかったので、完全にその構想は捨てました。そしてたまたまお店に入ってくれた福岡の人たちに“どうしたら安心感ありますか”などと、色々聞き出したんです。福岡の人たちにアドバイスをいただいて、実行して改善してっていうのをずっと繰り返していました」

−確かに、東京と福岡だと文化の違いがありますよね。東京時に考えていた構想とは違うと思いますが、福岡に来て大事にしていることやコンセプトはありますか?

将太さん:「基本的には福岡の人たちに合わせるようにしています。ただ、自分がやりたいこともあったりするのでそこはバランスを取るようにしています。福岡の人が好きそうで、だけど今まで食べたことがないだろうなという料理を提供することを1番に考えています。それで喜んでもらえると嬉しいし、僕のやりがいですね。イタリアの郷土料理をそのまま福岡で提供しても口に合わないんですよね。東京だとある程度、外の文化を受け入れることができるんですけど。だけど僕はイタリアに行っていたこともあるので、イタリアの郷土料理の良さを伝えたりもしたいんです。

特に料理人は毎日色々な料理を食べているので、料理の幅が広いのですが、料理人じゃない方はどうしても料理の幅が狭くなってしまうじゃないですか。そうなると新しい料理を食べた時に受け付けなかったりするんですよね。

カルボナーラって本来卵だけで作るものだけど、日本のカルボナーラは生クリームを入れたりしますよね。そうすると卵だけで作るカルボナーラを食べても美味しいと思えないんですよ。料理人だったら両方食べたことがあるから、どっちが美味しいのか判断がつくんですけど。
だから、僕の役目は普通の人たちが卵だけのカルボナーラを食べても美味しいと思ってくれる味にすることで。そこに気を遣うようにしています」

−福岡でお店を開いて辛かったことや楽しかったことはありますか?

将太さん:「辛かったことはとにかく集客ですね。だけど、近くの焼き鳥屋さんがお客さんを連れてきて下さったり、アドバイスを下さったりしましたね。同業種なのになんでそこまでしてくれるのだろうと本当驚きましたね。

東京で働いていた時はお客さんと話す機会なんてなかったんです。東京の人は空間が好きなので。でも福岡の人は誰が作っているかとか、どんなおしゃべりをしたかってことを重要視していて。だから向こうからアドバイスをしてくれたし、受け入れてもらえるのも早かったです。今まではお客さんと話すってことがなかったので、このお店を開いてからのお客さんとの距離間は新鮮で、お客さんと話すことが楽しかったです」

−東京だと同業種はライバルになりますよね。今、新しい取り組みなどはしていますか?

将太さん:「福岡はコンパクトなので常連さんが多いんですよね。だから、常連さんが来た時に新しいメニューがないと面白くないだろうなと思って、常に新しいメニューがあるようにしています。もちろん定番メニューもありますけど、季節限定の料理を出したりしています」

−今まで食べたチーズケーキの中で、ここのチーズケーキが一番美味しかったです。卵の味が濃くて、驚きました。チーズケーキは定番商品ですか?

知亜希さん:「本当ですか。チーズケーキはいつでも置いてありますよ。あれは卵が凄く美味しいんですよ。糸島の卵なんですけど。その卵も福岡の人が教えてくれたんです。自分のことエッグマンって呼んでいる人なんですけど、毎日10個ぐらい卵食べているらしいです。業者さんまで教えてくれてました(笑)」

−本当に親切ですね。今後やっていきたいことや、挑戦したいことはありますか?

将太さん:「最近、若い人が飲食店で働かないんです。他の業界とかに行ってしまって。 だけど料理って昔から、人が人に教えることによって伝えられてきたじゃないですか。そうしないと料理は上手く伝わらないし。だから、料理が後世に伝わっていかないんじゃないかと危惧しているし、料理を伝えていかないとな、と使命感を感じています。なので、今後は人の採用に力を入れたいですね。未経験や県外の方も大歓迎です」

移住して福岡が大好きになったお二人は、福岡の人のお話をする時が1番楽しそうでした。福岡の人に愛される理由は、お二人が福岡の人のことを愛しているからかもしれません。
美味しい料理を提供し、お客様をとても大事にしているイタリアン食堂『FIGARO』。皆さんも是非行ってみてください。

【イタリアン食堂 FIGARO】
福岡県福岡市中央区大名1-4-22 1F
TEL:092-715-1281
営業時間:18:00〜25:00(L.O 24:00)
定休日:火曜日

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