魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。
多様なニーズに応えるように
西鉄平尾駅から薬院大通方面に向かって進むと、角にお洒落なコーヒー屋さんが見えてくる。コーヒー好きが昂じてお店をはじめた創業者の平山悟さんと2代目で息子さんの謙吉さんで経営している『ROASTER’S COFFEE焙煎屋』さんにお伺いしてきました。
−なぜこのお店(ロースターズコーヒー焙煎屋)を始めようと思ったのですか?
悟さん:「学生時代からコーヒーが好きで、自分で点てて飲んでいました。一般家庭の人が、ましてや主婦がコーヒーを飲むとは当時の日本では考えられなかったので、コーヒーを仕事にできるとは思ってもいませんでしたよ。ですが次第に世間でも身近になってきたので好きなコーヒーを仕事にしたいと思い、今から29年前(1988年)、一号店である警固店を開きました。それまでコーヒーは喫茶店で飲むのが普通で、豆売りを主体で行なっている店がなかったんです。インスタントコーヒーが主流だった家庭でも美味しいコーヒーを楽しんでほしいと思い、豆売りを専門にしたお店をスタートしました」
謙吉さん:「僕は元々店の後を継ぐなんてことは一切考えていなかったのですが、うちが豆を卸していた喫茶店でアルバイトをしていて、そのうちコーヒーにのめり込んでいきました。子どもの頃からたまに手伝っていた焙煎屋の仕事をもっと極めていきたいと決心し、平尾店をオープンしました」
−どのようなお客さんが来られるのでしょうか?
悟さん:「年齢や性別に関係なく、若い人からおじいちゃん・おばあちゃんまでまんべんなく来てくれます。ターゲットを絞っているわけでもないんです。ただ“美味しい”と思ってもらえるコーヒーを飲んでもらいたい、そういうお店にしたいと思っています。オープンのときから来てくださっているお客さんもいるのでありがたいですね」
謙吉さん:「コーヒーに詳しい人もいれば詳しくない人もいます。難しく考えず、ただ何気なく飲んで頂いて“美味しい”と思ってもらえれば嬉しいです。情報やうんちくで「頭で飲む」というのもコーヒーを楽しむひとつの文化ですが、それよりももっと暮らしに根差したものとしてコーヒーを販売してきました。コーヒーを毎日飲んでくれる様々な人のエネルギーになってほしいと思っているので多種多様なコーヒーを提供できるように商品を揃えています」
−『ロースターズコーヒー焙煎屋』で大切にしていることは何でしょうか?
悟さん:「どのお客さんにも自分に合ったコーヒーを飲んでもらいたいということですね。接客の際には、できるだけその人の嗜好に合うコーヒーを選んで差し上げたいと思っています。またトレンドを追いすぎないようにしているし、かといって古いものばかりにこだわることもしていません。
開業以来から変わらず、いつの時代も美味しいと思ってもらえるブレンドを作っていきたいし、逆に新しく発見した美味しさも提案します。だから30年同じ豆を買って下さる方もいるし、毎回違う豆をお求めになる方もいて、本当に人それぞれなんですよね」
謙吉さん:「繰り返しになりますが、「頭で飲む」ことより、まず気軽に試してもらえるよう気をつけています。その先で自発的にコーヒーに興味を持ってもらえれば、自然で最高じゃないかと。コーヒーを知ろうとすれば、また世界は広がります。一生懸命伝えるよりも、伝わるコーヒーを作ることを大切にしています」
悟さん:「それと警固、平尾のどちらのお店でも同じ日の焙煎の同じ豆を買えるようにしています」
謙吉さん:「そのために警固、平尾それぞれで分担して焙煎した豆を私が毎日行き来してやりとりをしています」
悟さん:「お店をこれからどうしていくか、話し合いをよくしていますが仲良くやっています。私はもうすぐ引退になりますので、お店のことに関しては基本的に息子に考えてもらえればと思っています。これからの『焙煎屋』は息子が作っていきますからね」
謙吉さん:「完全に引退をするとボケそうなのでお店にいてほしいと思っていますけどね(笑)」
−みなさんどのような豆を購入されるのでしょうか?
謙吉さん:「素材の風味を楽しみたい人も、苦味が好きな人もいます。お話をしていく中でそのお客さんにあったものをオススメしています。
例えば、あまり酸味が得意じゃないけど、苦くないものがいい方などには、まずは当店の看板商品『けやき通りブレンド』をオススメします。父がお店を始めたころから販売しているブレンドです。これは酸味が苦手な方でも飲めると人気なんです」
「でも実はこの『けやき通りブレンド』はコーヒー豆の自然な酸味を程よく感じられるんです。酸味のあるコーヒーに苦手意識を持った方の多くは、鮮度の古いコーヒーの酸化した嫌な味や、焙煎でしっかり火の入っていない生っぽさでイメージを悪くされています。このブレンドはそのイメージを少し解すきっかけにもなっています」
悟さん:「これをずっとリピートする人もいますね。長く飲まれている方も多いんです。パッケージやロゴも私が描いたんですよ」
−すごい!ご自身で描かれたんですね。
悟さん:「ええ、そのコーヒーのコンセプトを考えながらイラストを描いています。息子がデザインを考えて、私がそれらしく描いています。手間をかけないと気が済まない親子なのでね(笑)」
謙吉さん:「イラストレーターさんにお願いしたものもありますが、自分たちのイメージをそのまま表現できるので父に描いてもらっています」
−素敵ですね。今後お店としてどういったことをしていきたいですか?
悟さん:「今は注文が多くなると対応しきれない恐れもあるので、ひとつひとつの仕事をちゃんとやっていきたいなと思っていますね。いっぱいやりたいことはあるんですけどなかなか実現していくのに時間がとれていなくて」
謙吉さん:「のちのちは作業する場所を一箇所にまとめて集約した店づくりを目指しています。今は喫茶をしていないけどできるようにもなるかもしれないし。焦ってはいませんが、いろんなことをしたいなという思いはあります」
悟さん:「どうしようかと考えている時間も楽しいですね」
地域の人に愛された『ロースターズコーヒー焙煎屋』はコーヒーに対する情熱を持った親子が経営されていました。熱い想いをもった創業者がいる警固店、笑顔が素敵な2代目がいる平尾店のそれぞれ足を運んでみたくなりました。自分の好きなコーヒーが見つかっていない人や新しいコーヒーに出会いたい人には、是非『焙煎屋』のお二人に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
【ロースターズコーヒー焙煎屋】
http://member.fukunet.or.jp/baisenya/
〈警固店〉
福岡県福岡市中央区警固2-10-11
TEL:092-751-0066
営業時間:10:00〜20:00
定休日:日曜日〈平尾店〉
福岡県福岡市中央区平尾3-1-6
TEL:092-534-1061
営業時間:10:00〜19:00
定休日:月曜日