【ぼくらの会社見学vol.01】久留米発ムーンスターが誇る独自の製法が作り出す、美しく丈夫な靴づくり。

商品やサービス自体は知っているけれども、どこのどういう会社が手がけているものだろう?
ふと、そう思ったことはないだろうか。このコーナーはそんな会社の中身を見学・取材させていただくことで、福岡県内の素敵な会社の本質を紹介していくものです。

地下足袋からスニーカーへ

月に星のマークでおなじみ、福岡県久留米市に本社工場を構える靴メーカー、株式会社ムーンスター。「子どもの頃にムーンスターの上履きを履いていた」という方も多いのではないでしょうか。それもそのはず。ムーンスターの歴史は古く、創業はなんと明治6年! 143年もの長い歴史を持つ老舗の靴メーカーです。地下足袋の生産をキッカケにゴム産業の町として発展してきた久留米市で、スニーカーや上履き、革靴などさまざまな靴を長きに渡り作り続けています。

その数ある靴の中で、特に若い世代に人気のあるのが『SHOES LIKE POTTERY(シューズライクポタリー)』というスニーカーブランド。シンプルかつ独特のデザインと、軽い履き心地が人気を集めています。

このスニーカーは、国内でもごくわずかな工場でしか生産できない「ヴァルカナイズ製法」で製造されていることが最大の特徴。ヴァルカナイズ(VULCANIZED)とは加硫(かりゅう)という意味。パンフレットによると、「生ゴムと中に練り込まれた硫黄が熱により化学反応を引き起こし、柔軟性と耐久性に優れた靴が生まれる」ということ。
今回はその現場で実際の靴づくりの過程を見学させていただきました。

ほどんどの工程は機械ではなく手作業

増改築を繰り返したという工場は、古いもので築100年超のものも。この歴史が詰まった工場では、現在約200人のスタッフが働いています。布に糊をひく部門、靴底のゴムを作る部門、布を縫製する部門、靴の形を整える加工部門、加硫する部門など、さまざまな工程ごとに工場が分かれています。とても広い敷地は、なんとヤフオクドームの敷地が丸まる入るほどの面積があるのだとか。

工場で作られるスニーカーは、種類によりますが多いもので1日およそ2,000足。それだけ大量の靴を生産するのだから、機械が自動的に作っているのかと思いきや…。靴底の型を抜く作業や布に糊をひく作業、ゴムを塗る作業などほとんどの工程は手作業。熟練の職人たちの手により、一つひとつ大切に作られていることに驚きました。

さらに驚いたのは、「ラスト(木型)」と呼ばれる靴型や工場で使う部品や棚など、細かい部材まで外注に出さずに自社で作っているということ。それは一定の高い品質を守っていくため欠かせないものだということです。

スニーカーは裁断、縫製、加工などの各工程を経て最終の加硫へ。本体とソール(靴底)の間にゴムを挟み、大きな窯の中に入れて120~130度で約1時間ほど熱と圧力をかけて本体とソールを一体化させます。そのことで型くずれしにくく、耐久性のある靴ができあがるそう。これが「ヴァルカナイズ製法」です。



自社が誇る製法を伝えるための新ブランド

“一つひとつの靴を、これほどに手間をかけて作っているということを伝えたい”。社員のそんな思いから誕生したのが『SHOES LIKE POTTERY』。「ヴァルカナイズ製法」を世の中に知ってもらうため、あるデザイン展に『焼き物のような靴展』として出店する際に作ったサンプルが誕生のキッカケだったそう。「SHOES LIKE POTTERY=焼き物のような靴」という意味は、最終工程で加硫窯へ入れて熱と圧力を加えることから、その名前がつけられました。


それからそのスニーカーは反響を呼び、会社としても本格的に『SHOES LIKE POTTERY』を始動させることになりました。現在では新たな部署を立ち上げ、ムーンスターブランドで『MADE IN KURUME』を掲げたラインの展開がはじまり、九州から北海道まで、全国で約300店舗が取り扱っています。

販売方法にもこだわりがります。それはいわゆる「靴専門店」では販売しないこと。靴なのに何で?と思うかもしれませんが、それはムーンスターでつくられた靴の良さを本当に理解して購入して欲しいから。様々なコンセプトの靴を販売する靴専門店で販売すると他の靴に埋れてしまい、自社工場で手づくりしているこの靴の良さが伝わりにくくなる。そう考え、相性の良い商品をセレクトし、一つひとつ説明して販売してくれる雑貨店やセレクトショップなどに限定して取引を行っているそうです。販売するショップの方にも工場見学に来てもらい、どのように作られているかを実際に見てもらうそう。東京など遠方で来られないショップには、社員の方が足を運んで詳しく説明をする努力も惜しみません。

「世界のムーンスター」を目指して

若者を中心に人気を集めているムーンスターの靴は、大人用だけでなく子ども用スニーカーのシリーズもあります。子ども用でもしっかりと靴ひもがついていることが特徴。実は靴ひもがついた子ども靴は珍しいのだとか。マジックテープなどの履きやすいタイプのニーズが高い中あえて靴ひもタイプを作っているのは、お父さんお母さんがきちんと子どもの靴ひもを結んであげて欲しいという思いから。そして履きやすいことはもちろん、自分のサイズに合った靴を選んで欲しいからという思いもあるそうです。

最後に、これからの展望について伺いました。
「ラインナップが増えてきたので、一度に商品を見ることができる直営店を開けたらいいですね。取り扱っていただいているショップには数種類しか置いていないので。照明や靴の置き方など、展示の見本になるようなお店を開けたら。
そしてこれからは海外も視野に入れていきたいと思っています。既に昨年はパリの展示会へ出品しました。日本だけでなく世界中の人にこの靴の素晴らしさを伝えたいですね」

靴底に書かれている“MADE IN KURUME”の文字には、「日本のスニーカー=久留米」と認知されたいという思いが。長い時間を経て久留米の地で作り続けられてきたムーンスターのスニーカー。素晴らしい自社工場と熟練の職人の技術、そしてそれを伝えたいという社員の思いが詰まったこの靴を、世界中の人が履く日はそう遠くないかもしれません!

【ムーンスター】
http://www.moonstar.co.jp
福岡県久留米市白山町60番地

『SHOES LIKE POTTERY』
http://www.shoeslikepottery.com
『MADE IN KURUME』
http://moonstar-manufacturing.jp

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