【ぼくらが連れて行きたい店vol.06】地元で40年以上親しまれている定食屋 (ふなこし)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

変わらない味と思い出

時代の移り変わりとともに街の景色も変わっていくものですが、変わらず迎えてくれるお店には愛着が湧きます。古い街並みの残る箱崎には長年親しまれている定食屋『ふなこし』があります。箱崎は福岡市天神から地下鉄で15分ほどの距離にあり、10年前まで九州大学があり学生街として栄えていました。
お店を立ち上げ、地元の方々を温かく迎えてきた船越寿子さん。昨年息子さんご夫婦にお店を譲り現在は引退していますが、『ふなこし』での思い出を語っていただきました。

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—寿子さんの代で定食屋を始められたとのことですが、それは何年前でしょうか?

寿子さん:「今から43年ぐらい前になるっちゃない。主人と小さな駄菓子屋をしよったけど、やりくりがうまくいかなくて私が33歳のときに定食屋に変えたんよ。昔はうちと同じような定食屋が箱崎に7軒ぐらいあったけど、みんな閉めてしまってね。今では残ったのはうちだけ」

—以前は九州大学が近くにあり、箱崎は学生街でしたね。お店に来られる学生さんとの交流はありましたか?

寿子さん:「学生さんの方から喋ってきてくれてね。“おばちゃん見て”って何もつけてない腕を指差して、“腕時計を質屋に出したからあと10日は食べられる”って。そんな姿を見て、食べさせてあげたい、応援したいと思うような苦学生の子がたくさんおった。かわいらしくてね、あの頃はよかったよ。
そんな子らが大学卒業して隣駅の方にある県庁に勤めるようになっても、“職場の周辺で食べるより、『ふなこし』で食べたい”ってわざわざ来てくれたり。
卒業して県外に出ても、出張なんかで戻って来たときに寄ってくれて、“まだあってよかった。味の変わっとらん、前のままや”って言ってくれる子もいたり」

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※一番人気のホルモン定食

—いい話ですね。では大変だったことは何かありましたか?

寿子さん:「何を出したら喜んでもらえるかなっていつも考えてて。1週間に1日休みが取れるようになっても、他の飲食店に出向いて勉強してた。でもそんなことも今振り返ってみたら楽しかったね。メニューも研究して増やしていって、今では数え切れんほどになったよ」

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九州大学が移転し、学生の姿をほとんど見かけなくなった箱崎の街は少し寂しくも感じられます。一方で、取材中の平日午後2時を過ぎてもお客さんが絶え間なくお店に入ってきます。お客さんの流れが落ち着いてから、今度は寿子さんからお店を引き継いだ息子の誠三さん・晴美さん夫婦に最近の様子について聞いてみました。

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—お客さんがひっきりなしに来られますが、九州大学移転の影響は少ないですか?

晴美さん:「いえいえ、影響は大きいですよ。以前は学生さんばかりでしたが、今は近くのサラリーマンさんや家族連れの方が多いです。箱崎には最近新しいお店もできてきよりますけど、昔のお店はほとんどなくなっちゃって。それだけお客さんのニーズも変わってきてるってことですね」

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—お店を営む上でこだわっていることはありますか?

晴美さん:「主人のこだわりで、安心で安全なものを出すようしています。使用している素材は国産のものです。原価が高くて仕方ないのですが、おばあちゃん(※義母である寿子さんの呼び名)の代からずっと国産のものを使用していたので、途中で変えてしまうと味も変わってしまうんです」

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—今後、どのようなお店を目指されていますか?

誠三さん:「儲ける店よりも、お客さんに喜んでもらえる店が1番いいですよ。うちは特に宣伝もしていませんが、ありがたいことに口コミで知っていただいてます。お客さんが友達連れてきてくれたときは嬉しかったですね。わかりづらい場所にありますが、最近は皆さんスマートフォンで調べながら来てくれてるみたいです」

時代の変化とともに土地用途も変わり住宅街に隠れるようにある『ふなこし』。そこには変わらぬ味と思い出、そしてお客さんを想うもてなしの心がありました。

【ふなこし】
福岡県福岡市東区箱崎2-35-15
TEL:092-651-7974
営業時間:平日 11:30〜14:00、17:00〜21:30
定休日:月曜日

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