楽しい思い出のつまった「ふるさと」
8月。車窓越しに、雨で濡れた万緑の姿を目で楽しみながら向かった先は久留米市田主丸町地徳。
田主丸町は、大粒の実で人気が高いぶどう・巨峰や、福岡の誇るブランド柿・富有柿といった果樹生産が盛んな地域。なんでも、江戸時代から植木生産が盛んで、田主丸町を含む久留米市は全国の3大産地の1つなのだとか。
果樹生産や植木生産を生業としている家々がゆったりと建ち並ぶ県道151号線、そして「山苞の道」と呼ばれる農道から、山の方へ暫く車を走らせ、目指す『満天の庭』を発見しました。
今回の「しごと」は、ゲストハウスである『満天の庭』の運営スタッフになります。
地方でゲストハウスが増えている最近の流れも踏まえつつ、オーナーである田中さんへお話を伺いました。
-今回はまずマイクロステイ(お試し居住)をしながら、ゲストハウスの運営にチャレンジする方の募集という事ですね。今までの事、これから向かっていきたい事・・・とにかく色々と伺いたいと思います。まず、この家ですが、田中さんのご実家ですか?『満天の庭』をオープンされるに至った経緯を教えて下さい。
「はい、ここは私の実家だったところです。と言っても、私自身は東京生まれ・東京育ち、3姉弟の末っ子です。うちの親は久留米出身で、東京に出て行って、私たち姉弟を育ててくれたんですね。東京に住んでいましたが、田舎が好きだったんでしょうね・・・平成12年にこちらに再び越してきまして、住みながら少しずつ手を入れていきましてね。それこそ色々な方をお招きして、おもてなしをしてね。そういう事が好きだったんでしょう。」
「私は30歳でこちらに拠点を移しました。ですから、うちの子どもは小さい頃はここで育ちました。ここから歩いて30~40分くらいの竹野という地区に保育園・小学校があって、そこに小学校2年まで通わせていました。今は中学2年なのでもう6年前ですか。それこそ自然の中で毎日過ごすから、足腰がたくましく育っているなぁと思いますよ。子どもにとっては、ここに住んでいた頃の思い出と言えば楽しい思い出が多いようで、“田主丸町が自分のふるさとだ”と言っています。そうそう、玄関にある大きな壷に“満天の庭”と書いてあったのはお分かりになりましたか?あれは父に書いてもらったんですよ。「満」はね、父の名前からとってます。満洲男という名前でした。7年前に他界しました。私たち家族は、父が他界した後も暫く・・・2年くらいかな・・・ここに住んでいたのですが、仕事の事務所を福岡市内に構えたいと考えていたこともあって、引っ越しました。今は、西区の今宿に住みながら福岡の事務所に通勤しています。課題はこの家の事でした。私たち家族にとって、愛着がある家で、母も手放したくないと。
そこで、この田主丸という“日本のふるさと”のような原風景が残っている町で素朴なゲストハウスが出来ないか、と考え出したのです。」
「耳納連山という雄大な山々があって、筑後川がそばを流れていて、緑が多くてね。トレッキングとかのアウトドア遊びも出来る。美味しい果物や米や野菜もあって、酒蔵もあってね。地元の人は“何も無い田舎”と思うかもしれないけど、何も無いからこそ楽しめる遊びが沢山あって、何より美しい自然の風景が広がっていてね、実は観光資源が沢山ある町なんですよ。町全体が観光の受入れ場所、町全体が素朴なホテルだとすると、その宿泊部門を担う、そんな場を作れないだろうか・・・と思って、この一棟貸スタイルのゲストハウスをオープンすることにしたんです。」
―なるほど。ご自分も移住者である田中さんが、この地に愛着を持っているからこそスタートした事業なのですね。
「そうですね。子どもたちにとっては“ここが故郷”ですしね。子どもたちの友達もいる、そして可愛がってくださったご近所の方々もいる。何かこの地域に貢献出来たらな、と思っています。」
田舎のコンシェルジュ
―では、ここからはこちらでのマイクロステイ(お試し居住)、そしてお仕事について教えて下さい。
「今回募集するのはゲストハウスの運営ですが、マイクロステイ(お試し居住)という仕組みを使います。内容としては13泊14日の居住スペースが付いてきます。この間1組(2名)で3万円で泊まっていただきます。マイクロステイ期間後はそのまま住み込みをしていただくか、別途住まいを見つけていただくかは相談の上決めていきたいと思います。現在、ゲストハウスの仕事は、予約は妻が電話かメール、ネットで受けています。料理などはお客様が自分で作るか、近くの飲食店に食べに行っていただいています。そうそう、お風呂も各宿泊棟にあるにはありますが、近くに温泉もいくつかあるので紹介したりしていますよ。現地であるこちらでお客様を迎えるのは地元のお母さんたちです。お母さんたちにアルバイトに入っていただいています。今日は○○さん、次はいついつでその時は□□さん、という感じで。皆さん地元の方で・・・何と言えばいいのかな・・・本当に田主丸のことを良く知っているから、お客様にも色々な地元ならではの遊びの提案が出来るんですよ。普段家事をされているから、部屋の掃除や洗濯もお手のものですしね。部屋の数が多いので大変かもしれませんが。
でも、そこはやっぱり皆さん本業がありますからね。もうすぐ秋の観光シーズンになるけど、その時期は米の収穫もあるし果物だと柿の収穫も始まるしね。アルバイトのお母さんたちが調整できない時は、休まなくてはいけない時もあるんですよ。本当はもっと稼動率をあげたいとは思うけれど、なかなか難しい。
そこで、久留米やその近郊への移住を考えている人、ここの運営スタッフとして関わってくれるような、そんな好奇心の強い人と出会いたいと思って、今回、ご相談させてもらったわけです。」
―なるほど。では、今アルバイトに入っているお母さんたちがされてるような仕事がメインという事になりますか?
「チェックイン・チェックアウト、掃除、洗濯、近隣のお店のご紹介・・・まずはそこからスタートですね。アルバイトでも接客経験のある方や気がきく明るい方だったら、すぐにだいたい出来るようになると思いますよ。それで慣れていったら、お客様と、もっとコミュニケーションを取れるようになると良いと思います。あとは・・・サプライズな企画とかでもやってみたりね。旅行は全て遊びととらえる事ができますよね。だから、お客様が体感する喜びとか楽しさを一緒に共感できる人がいいですね。ここにゆっくりとした時間を過ごしにお出でになった方、あるいはアクティブな大人の外遊びを楽しみにいらした方、色々なお客様にとっての田舎のコンシェルジュになってほしいと思います。
それと、今回のマイクロステイ(お試し居住)で地域の方たちとほど良いバランスで“ほどほどのつきあい”が出来るような人とのご縁がつながったらいいなあと思っています。やっぱりまるっきり地元の感覚ではないと思うし、むしろそれを期待しているわけではないんですよ。地元の方と、利用するお客様の間を楽しく丁寧につなげてくれるような、そういうセンスを持った方がいいなと。あとは・・・やっぱり地域に貢献したい想いは強いので、小さなお子さんがいらっしゃるご家族、これからお子さんを考えていて、ご夫婦で移住先を前向きに、そして真剣に探しているような方は、積極的に検討したいと思っています。」
マイクロステイ(お試し居住)の方に提供するお部屋は、母屋奥のスペースの予定。(一部下写真)
―こうしてマイクロステイ(お試し居住)で仕事をしながら地域の空気に馴染んでいく、地域の人との付き合い方を身につけていくというのは確かに移住希望者の方にとっては嬉しいことかもしれませんね。先ほど、「ご家族の方を・・・」というお話がありました。従来は地元のお母さんたちがアルバイトとして切り回せていた業務ボリュームという事だと、マイクロステイ(お試し居住)でご縁があり、実際に働き始めるとして、収入面はどのようになりますか?
「どの程度の時間をこの業務に割くのかというのもありますが、うちの報酬を考えると、ご夫婦だったらダブルインカムの方が良いでしょうね。マイクロステイ(お試し居住)の面接、そして契約を結ぶ時に、お互いに話し合って条件を詰めていけたらなぁと思っています。旦那さんが運営スタッフとして仕事をするのであれば、奥さんは他の仕事をする。あるいは自宅でできる仕事をする。その逆もまた然りです。運営スタッフとしての仕事もありますが、やはり地域に根差しながら家族で暮らしていける方が良いなと思っています。」
宿泊施設が無い=魅力の発見はこれから
―ところで、田主丸から浮羽に続く山苞の道周辺は最近ずいぶんと新しいお店が増えましたが、宿泊施設が無いですね。どちらの方面へ向かうにしろ、車で20~30分かかるような気がします。その点についてはどう思われますか?
「確かに宿泊できる場所は無いですね。食事できるお店が増えてきて、温泉もありますが、“宿泊先”が無い。そうすると、日帰り旅行か、久留米や筑後川沿いの温泉街まで泊りに行ってしまい、2日目はこの辺りにお出でにならなくなりますよね。今がそうでしょうね。でも、うちのような形で宿泊できる場所さえあれば、気忙しくなく過ごして頂く事が出来るし、このあたりの耳納連山の自然な美しさにもゆっくりと触れて頂くことが出来るんですよね。逆に、競争相手となるようなところがないというのは、メリットにもなると思うんですね。うちがお客様の満足度を如何にあげる事が出来るか、に尽きるので。“時間をいっぱい使って何かをする”、ではなく、“何もしない贅沢を楽しむ”というお客様を増やすことが出来れば、ゲストハウスはやっていけると思っています。」
―と、ここでご近所の造園業・楢崎さんがご登場。台風一過の『満天の庭』の植物たちを心配し、片付けに来たのだそう。この楢崎さん、この田主丸町を愛する思いがひしひしと伝わってきて、田中さんとのやりとりもまたとっても味がありました。楢橋さんのお話もここでご紹介。
「福岡移住計画の人ですか!ここで知り合ったのも何かのご縁ですよ。田中くんに聞いとったもの。あなた達にはね、期待をしてるよ!このあたりも子どもが減ってきて、夕方に道を歩いてるのは年寄りばかりになりよる。やっぱりね、集落に子どもが少なくなっていくっちゅうのは寂しいもんよ。田中くんとかあなたたちみたいな人がさ、内部の人と外部の人をつなげてもらわんといかんね!もちろん内部の人間が頑張らにゃあいかんけどね、外から見ていいところがあったら、それをちゃーんと内部の人間が学んで、自分で動かないかん。私はそう思うですよ。
ここはいいところでしょう!もうそりゃ緑も多いしの、食べ物も美味いしの!こうやって若いもんも頑張りよる!やっぱ自分たちで動くのが大事と思ってやりよらなーいかんもん。とにかく、宜しくお願いしときますよ!」
―楢崎さんの熱弁中にオーナー・田中さんの様子をうかがうと、うんうんと頷いたり口元をほころばせたり。そんなお2人の関係、心地良さそうな気配です。少しずつ時間をかけて、地元の方と“ほど良い関係”を結んで来られたのだろうなぁ~と思いつつ、記念写真を。
「やっぱりね、何か動いているのが1番楽しいですよ。この『満天の庭』も、もっと育てていける場所だから、体を動かしてあぁでもないこうでもないってやっている時がすごく楽しい。ここでチャレンジする方には、そういう事も楽しんで欲しいですね。」とのオーナー・田中さんの一言です。
移住者の先輩であるオーナーだからこそ、きっとわかる移住者のあんな気持ち、あんな疑問があるはず。少しずつ吸収しながら、地域に馴染んでいける、コミュニティの核となる場所を育てていける、そんな方との素敵な出会いがありますように!
一棟貸別邸 満天の庭 | |
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募集期間 | 決まり次第終了※仕事始めは10月12日(月)~ |
採用人数 | 1組(2名)※ご夫婦でもご友人でも |
募集職種 | ゲストハウス運営 |
雇用形態 | 契約 |
勤務地 | 福岡県久留米市田主丸町地徳2213-1 |
勤務時間 | 応相談※マイクロステイも兼ねるため無し |
給与 | 応相談 |
福利厚生 | 応相談 |
休日休暇 | シフト制(週休二日程度) |
仕事内容 | ゲストハウス運営に携わる業務全般。宿泊者対応や掃除・管理等。 |
応募資格 | 年齢・性別・経験不問 |
選考プロセス | STEP-1.本サイトへお申込みSTEP-2.面接 |
備考 | 居住スペース費用として3万円必要です。(13泊14日)※期間後は応相談。 |
一棟貸別邸 満天の庭へのご応募
ご応募は下記の「この記事に関するお問い合せはこちら」から、
メッセージ本文中に
・電話番号
・住所
・性別
・年齢
をご記入の上、福岡移住計画までご応募お願い致します。
選考の上、一棟貸別邸 満天の庭よりご連絡します。
尚、送付頂いた個人情報などは採用選考にのみ使用します。
〈注意事項〉
・ご応募いただいたメールアドレス宛に確認メールを返信します。
・返信がなければ再度メールアドレスをご確認の上ご応募ください。