【F-LIFE SHIFT story vol.12】計画ゼロで福岡移住。数々の“楽しい”を仕掛け続ける原動力とは?

「F-LIFE SHIFT story」は福岡に移住してきて暮らしや働き方、考え方などをシフトした人たち(先輩移住者)のストーリーを追った特集です。福岡に来て何が変わったのか、これから福岡で暮らしていきたい・変えていきたいという人たちの参考になればと思います。

2017年6月、大手門に突如現れた“泊まれる立ち飲み”をキャッチフレーズに掲げるユニークなホステル『STAND BY ME』。オーナーを務めるのは、株式会社ブルースカイ代表の貞末真吾さんです。今回の取材はそのホステルの共用スペースで行われました。取材中も国内外からの宿泊客たちが貞末さんの横を「Good morning!」と通り過ぎて行きます。
その姿はまるで福岡の街の兄貴的な存在。しかしそんな貞末さん、実は関東からの移住者なのです。福岡でさまざまな事業を展開する意味や、今後の展望などをうかがいました。

−福岡に移住されたきかっけを教えてください。

福岡に来る前は実家が営むメーカーズシャツ鎌倉株式会社で人材採用と福岡とニューヨークの店舗出店プロジェクトに携わっていて。そのプロジェクトの一貫で2011年の3月から博多への出店のために、3か月ほど単身赴任生活をしたのね。そしたらその間に福岡の街や人が大好きになって。なんたってごはんはおいしいし、物価が安い、海と山が近い、いいことしかないなって。
その後、単身赴任生活も無事に終わって次はいよいよニューヨーク出店っていう時に、会社を追い出されちゃって…(苦笑)。当時住んでた家もすでに解約しちゃってたから、本当に何もない状態になって。「だったらもう好きなところに住んじゃえ」と思って、2012年3月にノリで福岡に移住した感じかな。

−いまでこそ移住のハードルは薄れてきていますが、2012年にいきなり移住ってすごい決断ですよね。福岡に来てまだ数年ですが、さまざまな事業を展開されていますよね。いつもSNSで情報が回ってきます。

実は、福岡に来て何かやってやろうっていう野心なんてさらさらなくて、移住してから数ヶ月はパチンコ三昧だったの(笑)。でも、いよいよそういう生活に飽きてきて最初に始めたのが、ブランド物のヴィンテージアイテムを扱うお店『Acebuddy』。そこから、急にスイッチが入って、とにかく福岡で知り合いを増やそうと動きまくったね。

−どういうとこで知り合いを増やしていかれたんですか?

お酒の場だね。どこかのお店で開催されるイベントや周年パーティ、情報が入ってきたものは片っ端から行って名刺を配りまくって、地道に営業活動みたいなのをして。その時出会ったのが⿃飼⼋幡宮の神主・山内さん。その出会いを機に神社のことを手伝うになって、「肉フェス」というイベントを開催したり、神社の敷地内で子ども写真館『Acestudio』を始めたり、大きく動き出した感じかな。

−“泊まれる立ち飲み”がコンセプトの『STAND BY ME』をつくったのは、どうしてでしょうか?

関東の友人から、「福岡に行こうとしたらホテルが取れなくて行けなかった」といわれることが3回連続で続いて。せっかく会いに来てくれるっていっているのに、そんな理由で…って思って、仕事用の事務所として4LDKのマンションを借りたんだよね。でも結局誰も来なかった(笑)。借りたからには何とかしないとってことで、民泊を始めてみたら世界中からいろんな人が来て面白かったんだよ。当時(2012年)はまだ民泊のサービス自体の認知度が低かったこともあって、たまに泊まりに来てくれる日本人もすごくエッジの効いた人ばかりで話しているだけで面白くて。それがぼんやりと「福岡にこういう場所をつくりたいな」っていうところにつながる、小さな成功体験っていう感じだったかな。

−それからホステルをつくるための物件探しを始めたんですか?

そうそう。でも、法律の兼ね合いで全然いい物件に巡り会えないまま半年が過ぎてしまって。だったら法律が違う国に行けばいいじゃん!と思い立って、2016年・バンコクに『trica』っていうゲストハウスをオープンしちゃったんだよね。

−とんとん拍子ですね!

端からみるとそうかもしれないけど、実はすんっごい大変で。バンコクではすぐにいい物件と巡り会えて契約できたんだけど、工事を進めているうちにどんどん追加工事が必要になっていって、最終的に当初の見積もりの3倍くらいの費用がかかって。それで冗談抜きで貯金が3万円になっちゃったの(笑)。そんな時に、福岡の不動産屋さんから「大手門にいい物件が見つかったよ」って連絡が来て…。

−契約されたってことですか…!?

「なんで今なんだよ!」って思って、さすがの俺でもどうしようかなって自問自答したんだけど、契約金さえ払えれば取り敢えずは借りられるっていわれて。それが300万だったから友達に「今なら10万円で、1年間飲み放題券がついてくるよ〜!」って連絡しまくったら、1日で300万集まったんだよね(笑)。

−1人クラウドファンディングですね!

まさにそれ!またそこからが地獄の始まりだったんだけど…(苦笑)。でもどんなに大変でも、毎日パチンコやっていた日々よりはマシかなって思って。大変なことしかなかったけど、2017年6月15日に何とか『STAND BY ME』のオープンにこぎつけた感じだね。

−『STAND BY ME』はお金の代わりに木札でやりとり、2018年に福岡PARCOに新しくオープンしたお店『タイムカード』は時間制と、勘定の仕方がユニークですよね。

そうそう。俺が師匠と仰いでいる『面白法人カヤック』の柳澤さんっていう人がいるんだけど、ビジネスを立ち上げることで1番大切なのは「キャッチコピー」と「デザイン」だって教えてもらって。それまではキャッチコピーなんて考えたことなかったし、デザインは何となくおしゃれだったらいいと思ってたし。何なら知り合いに頼んでタダ同然でやってもらったり。でもその話を聞いてからは、とにかくその2つに必要以上にお金をかけるってことをやっているんです。そうするとその分相手も一生懸命仕事をしてくれるから、その先の発想が生まれてくるんだよね。

−短期間でさまざまな事業を展開していますが、何が原動力になってるんですか?

なんだろうね〜多分目立ちたいんだろうね(笑)=いっぱいありがとうっていわれたいっていう翻訳かな。お客さんに「ありがとう」っていわれると、ちびりそうにうれしいわけ。『STAND BY ME』に至っては、ビールが1杯250円。それってもう人件費とか含めると、ほとんど赤字なのよ。でもだから「わ〜」って驚いてもらえるし、応援してもらえるし、「また来るね!」っていってもらえるし。

−株式会社ブルースカイのHPを拝見すると「ノリとご縁で様々な楽しい事業ばかりしております!」という記載がありますが、普段から楽しむことは心がけているんですか?

漫画の『宇宙兄弟』の中に出てくる金子シャロンっていう登場人物のことばに「迷った時はね、どっちが正しいかなんて考えちゃダメよ。どっちが楽しいかで決めなさい」っていうのがあって、本当にそうだなって感銘を受けて。確かに、ひとつのことを始めようとするとさまざまな問題がついてくるんだけど、楽しい方選ぶと、まわりの人も自然と楽しくなっていくなって。何でも簡単に諦めてしまう人は楽しくなりづらいんじゃないかなって思ってるんだよね。

−福岡に拠点を構えているのはどうしてですか?

正直どこでもできるって思ってる。ただ、うちの社訓が「大好きな人と、大好きな場所で、大好きなことをするために」だから、そういう意味では福岡は大好きな場所なので、ここでやる意味は十分あるのかなって。どんなにいいビジネスでも、やる場所はとても大事!

−これから福岡で起業したい方へのメッセージを。

この前飲んでいた時にとある若者に話しかけられたんだけど「青年会議所から予算をもらって、スタートアップを支援するようなことをやりなさいっていわれてるけど、何をしたらいいかわからない」って。それを聞いて考えたのが、『いきなりスタートアップ100』っていうイベント。今、アプリとかで一瞬で会社つくれるじゃない。だから若者100人集めて、一斉に会社を100個つくっちゃおうよっていうイベント。会社をつくりたい気持ちがあってもつくるまでに躊躇しちゃってなかなか踏み切れないとこがあるけど、会社っていう箱ができれば、どうにかしなきゃって知恵を絞って考えると思うんだよね。だからとにかく、起業したかったらとりあえず箱をつくれ!それから考えようってこと。

−最後に、今後の目標を教えてください。

とにかくやりたいことがもうたくさんあるので、ゼロイチの事業をつくりまくりたいと思っています。それを続けてもいいし、やりたい人がいたら譲ってもいいし。とにかくこれからもノリでいろんなことを仕掛けていこうと思ってるよ(笑)。

【株式会社ブルースカイ】
http://bluesky2012.com/
福岡県福岡市中央区今泉2-5-24 権藤ビル303

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