八女で「ちょうどいい」暮らし、見つけよう。〜大好評!令和7年度八女市お試し移住体験の魅力と八女のリアル〜(前編)

近年、地方移住希望者たちに、にわかに注目を集めている取り組みがあります。それは、八女市の「お試し移住体験」です。今年度(令和7年度)の利用はほぼ予約で埋まっているほどの人気ぶりです! そもそもお試し移住とは、移住を検討している地域で短期間暮らし、土地の魅力や生活の様子を体感できる制度のことです。では、なぜ八女市のお試し移住がここまで支持されているのか、その理由を探ります。

八女市ってどんなところ?〜土地勘と暮らしやすさのヒント〜

福岡県南西部に位置する八女市は、清流矢部川が流れ、平野部から山間部まで豊かな自然に恵まれたまちです。旧八女市、上陽町、黒木町、立花町、矢部村、星野村の6つが合併した、多彩な魅力を持つ地域でもあります。

古くから農業が盛んで、特に高級茶「八女茶」の産地として全国的に有名です。茶畑が広がる美しい景色は、八女市ならではの絶景です。歴史と伝統が受け継がれる土地としても知られ、中心市街地の福島地区は仏壇、提灯、手すき和紙、石灯ろうなどの伝統工芸を今に伝えるエリアです。白壁が残る町並みには、若い移住者がカフェを作るなどの新しい動きも見られます。

福岡市から車で約1時間とアクセスもよく、市街地には24時間営業のスーパーやコンビニ、ショッピングモール、医療・教育施設なども揃い、暮らしやすい環境が整っています。

住まいに関しては「八女市空き家バンク事業」があり、空き家の所有者と利用希望者をつなぐ仕組みを整備しています。常時約20件の物件が公開され、これまでに126件の成約がありました。

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八女中央茶園の田園風景(写真提供:八女市)

八女福島の白壁のまちなみ

八女福島の白壁の町並みにはカフェやギャラリーもあります(写真提供:八女市)

八女福島の燈籠人形

八女福島の燈籠人形は放生会の奉納行事として秋分の日頃に公演されます。毎年家族で楽しむことができる行事です(写真提供:八女市)

ここがすごい!八女市お試し移住体験〜概要と人気の秘密〜

八女市では移住希望者に向けて「お試し移住体験」を実施しています。滞在先は移住者向け集合賃貸住宅「里山ながや・星野川」の一室です。市街地から車で20分ほどの自然豊かな集落にあり、周辺にはスーパーなどもない“里山暮らし”を体験できます。

滞在時間は5日〜20日間(7月〜9月は最長14日間)です。体験料は無料ですが、保証金として1万円が必要で、施設の破損などの問題がなければ全額返金されます。

お試し移住事業が始まったのは、令和元年です。当初は夏休みなどの期間限定でしたが、令和6年度からは通年で実施されることになりました。観光とは異なり、生活者の視点で買い物や娯楽などの生活環境、仕事、子育てなどの実態を知ることができます。実際に移住につながったケースも多く、令和7年度分は3月までほぼ予約済みという盛況ぶりです。

詳細(募集要項や予約フォーム)はこちら

人気の理由は、八女市の自然や里山暮らしを肌で感じられることに加え、滞在先の「里山ながや・星野川」の魅力、そして手厚いサポート体制にもあります。

お試し移住の滞在先では「八女里山賃貸株式会社」が管理人となって長屋に住み、移住者と地域住民を結びつける橋渡し役を務めています。生活施設や子育て施設への案内、近隣住民への挨拶、地域行事への同行など、移住者が地域になじめるように細やかなサポートが行われていることも特徴です。

奥八女の暮らしを垣間見る〜「里山ながや・星野川」の魅力〜

福岡県八女市里山ながや星野川

里山ながや・星野川の外観

「里山ながや・星野川」は、2LDKのメゾネットタイプが8軒連なる長屋形式のデザイナーズ集合賃貸住宅です。1階には土間とキッチン、リビング、水回りがまとめられ、2階にはフローリングの2部屋を用意しています。柱や天井、家具に八女杉をふんだんに使った木造住宅で、室内は爽やかな木の香りに包まれています。
設計はアトリエ・ワンの塚本由晴氏(東京工業大学大学院教授)です。柱に溝を彫って板を落とし込む「板倉工法」という伝統的な工法を取り入れた、モダンでありながら地域らしさを感じさせるデザインです。廃校となった小学校跡地を再活用した土地に建てられ、自然に囲まれた敷地内ではバーベキューや家庭菜園も楽しめます。

里山ながや星野川

里山ながや・星野川の1階

里山ながや星野川

里山ながや・星野川の2階

長屋の運営と管理にあたるのは、「八女里山賃貸株式会社」の沖(おき)雅之さん・可奈さん夫婦です。2人とも関東からの移住者で、循環型林業モデルを構築する地域商社「トビムシ」への転職をきっかけにここ八女市へとやって来ました。現在は八女杉を使って山とまち、作り手、消費者をつなぐ循環型林業モデルを担う「株式会社八女流」の代表と、「八女里山賃貸株式会社」を兼任されています。

雅之さんは、「トビムシが地域で活動する中で、里山で活動する移住者の住居が少ないという問題を数多く目の当たりにしました。空き家はあっても知らない人には住んでほしくないというオーナーが多く、市営住宅も低所得者向けで移住者が試しに住むことは難しい。そこで、里山に移住者が暮らせる賃貸住宅を作ろうと、平成30年に建てたのが<里山ながや・星野川>です」と話しています。

どんなことができる?「里山ながや・星野川」でのお試し移住

お試し移住体験が人気を集めている理由について、可奈さんは「無料で長期滞在できること、建物として魅力があることに加えて、長屋ならではの仕組みにあるのでは」と話します。

可奈さんは、「長屋というグループとして受け入れられているので、地元の方も新しく来られた方に対して、“あそこの長屋の人ね”と安心感を抱いてくれるんです」と説明します。

可奈さんは、お試し移住者がより“リアルな暮らし”を体験できるように、通り一辺倒ではなく、その人に合わせた情報提供をすることも心がけているそうです。お試し移住を始める前に、参加者にどんなことを体験したいかをヒアリングし、その意向に合わせた情報提供を実施します。日常生活のことだけでなく、仕事や住まい、子育てに関することなど、その人が必要とする情報をカスタマイズして提供していると言います。

「毎日のように『今日はどちらにいかれましたか』、『こんな情報、ご興味ありませんか』とお声がけすることもあれば、見守る程度でサポートすることも。その人にとってベストなサポートができるように気をつけています」とのことです。

さらに、地元ならではの交流や風習に馴染めるように、可奈さんはきめ細やかなフォローをしています。近隣の方から野菜のお裾分けをいただくことが多いので、お試し移住のオリエンテーション時には「嫌いな野菜の有無」を確認するというのもユニークです。

また、長屋の入居者には「今回のお試し移住者さんはXXさんと趣味が一緒でした」「小学校情報を知りたいそうなので、会うことがあれば立ち話をしてあげてください」など、お試し移住者と入居者が交流するきっかけ作りもしていると言います。

また、沖さん夫妻は「里山ながや・星野川」を建設するにあたり、地域住民や八女市と協議会を結成し、事前に説明会を開き何度も協議を重ねてきたそうです。そうして地域住民と移住者がお互いに理解し合える環境づくりに励んできたことも、今の環境につながっているのかもしれません。

最後に、沖さん夫妻からお試し移住を検討されている方へメッセージをいただきました。
「お試し移住=すぐに移住、ではありません。この体験を通じて、移住に関する考え方を整理するきっかけにしてほしいですね。そこで “今はまだその時期ではない”と気づいたり、逆にもっと前向きに検討したりすることもあると思うんです。まずはここに来て、八女市のリアルな暮らしを体験してみてください」。

里山ながや・星野川の管理人、沖雅之さん(中央)と沖可奈さん(右)

後編へつづく

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