関西電力グループの人材マッチングサービス会社、株式会社ソコナラの創業特集を計4回にわたって連載しています。前回は昨年の実証期間中に開催されたソコナラMEETの様子をレポートしました。特別連載後半は2回にわたり実際に参加した企業の経営層と社員へインタビューします。今回は、福岡で今最も勢いのあるスタートアップのひとつである株式会社クアンドの、佐伯拓磨CFOと広報担当の笹木椿さんに話を聞きました。
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ー本日はありがとうございます。まずは株式会社クアンドの理念や事業内容についておしえてください。
佐伯拓磨氏(以下敬称略):クアンドには「パーパス」と「ビジョン」があります。パーパスは「眠れる力を、進化の力に、変えていく」です。人、組織、地域に眠った本当の力を見つけ出し、磨き、開花させていくこと。それらが共鳴しあうことで素晴らしい未来は作られると考えていて、それを具現化していくことにクアンドの存在意義があると考えています。
ビジョンは「地域産業・レガシー産業のアップデート」です。これは創業初期から抱える当社のDNAともいえます。地域の雇用は製造業や建設業といったレガシー産業によって生み出されています。これらの産業がアップデートされることで次の雇用が生まれ、その地域の文化や人の気質を作っていく。これが世界中の地域で起こり、その地域らしいカラーの街ができていくことを目指しています。
QUANDO(クアンド)の名前の由来は、「物事の始まりや変化を知らせる合図・きっかけ」というラテン語です。我々は人も組織も地域も、その差を作っているのは、能力ではなく自らが気づき、変わるきっかけがあったかどうかだけだと考えていて、人や社会に気づきや変化の機会を提供する存在でありたいと思っています。
ーソコナラMEETに参加したきっかけと理由をおしえてください。
佐伯:(ソコナラ代表三宅さんと)共通の信頼する知人からの紹介がきっかけでした。当社は業界問わず多様な人材と出会うため、日常的に採用広報活動をおこなっているのですが、その頃は採用活動が少しマンネリ化していると感じていて、新しい打ち手を試してみようと思ったのと、これまでに出会ったことのない人材との出会いを期待して参加しました。
我々は、創業時には地元企業へ向けたDXコンサルを小規模でやっていたのですが、その中でどの企業にも共通する課題をみつけ、現在は建設製造業界向けのプロダクト(シンクリモート)のサービス提供へと事業シフトさせています。そんな背景もあり、将来的にまた新規事業が立ち上がることも視野にいれて、常に幅広い人材にアプローチしてつながるように心がけています。そのため採用活動にはかなりの時間と資金を投資しています。これまでの活動の積み上げはここ1年くらいでのハイレイヤー人材の採用という成果にもつながっています。なので、新しい採用活動の機会があれば積極的に動いています。
ー実際にソコナラMEETに参加してみてどんな気づきや成果がありましたか?
佐伯:これまでに参加してきた20~30代向けのイベントの参加者たちは、たいていの方が当社のことをご存じだったのですが、ソコナラMEETの参加者たちはほとんどの方がクアンドのことを知りませんでした。それで、当社が採用活動においてまだリーチできてなかった層があったことに気づかされ、反省もしました。ソコナラMEETに参加したことで新たな領域にリーチすることができましたし、参加者とのグループワークもよかったです。採用目的以外の、事業でのつながりを作ることもできました。
ー笹木さんはこのときのソコナラMEETにも参加されたそうですね。グループワークに参加してみてどうでしたか。
笹木椿さん(広報担当):このときのグループワークでは、経営層の方の話を聞いた後、自分がもしもこの会社の社員だったら何ができるかというテーマで話しました。グループのメンバーからいろいろなフィードバックをもらうことができて、自分に自信が持てました。他者から自分のアイデアについて意見をもらえる機会は日常ではそれほどないですし、人脈も広がったこともよかったですね。
ー佐伯さんはこれまでずっと、地元九州でご自身のキャリアのステップアップをしていらっしゃいます。ソコナラMEETの目的のひとつは、地元の企業と人材とのマッチングです。それは地方が抱える人材流出という課題の解決を目指しているからなのですが、佐伯さんは地方で働くことに対してどのような思いをもっていますか。
佐伯:仕事とは何かと考えた時に、それは誰かや何かに貢献することだと思うんです。私の場合は自分が熊本と福岡で生まれ育ち、九州の人たちに支えられてきたので、これまで自分を支えてくれた人々や、これから支えてくれる世代に対して恩返しなり恩送りをしたいという思いが強くありました。
またそれは日本にとっても良いことだと考えています。当時から東京一極集中の是正みたいな話がありました。優秀な人材が地方からどんどん外にでていってしまう状況の中で、若者が地元に残って地域に貢献するという選択肢もあっていいのではないかという信念もあり、自分は九州で活動しています。
ー大都市や海外に出たいと思ったことはありませんでしたか?
佐伯:実は東京か大阪で働く選択肢もあったのですが、全然知らない土地で大切な人たちとも離れて、成長意欲だけで仕事をしていても、自分が本当にハードな局面に対峙したときに乗り越えられるのかと思ったりもしました。海外も小さいころからいろいろな国に行かせてもらっているのですが、その土地で仕事をするイメージは湧かなかったですね。
ー自分を支える風土や周囲の人たち、ご自身が大切にしていることの基準が当時からはっきりしていたのですね。
佐伯:そうですね。選択したことを後悔しないためにも、自分がいる場所でステップアップすることにしっかりと注力できたのだと思います。
三宅:まさに佐伯さんがおっしゃったキャリアの描き方のイメージが我々ソコナラとの理念とも重なっていて、今日お話を聞きながら不思議な縁を感じています。実は、我々の会社のビジョンは「人・地域・企業の転機を創造する会社」なんです。住みたい地域で自分らしいキャリアを歩む人が一人でも多く増えていけば、自分たちが働くエネルギーや思いを、自分の思い入れのある地域に注ぎ込むことが出来、地域が発展していく。そんな世界観を目指す会社として、まずは私が住みたい地域である福岡に戻って今体現しようとしているところです。
ー最後に、佐伯さんから、これから福岡へ移住や転職を考えている読者へ向けてひとことお願いします。
佐伯:福岡は日本の中でも数少ない、勢いのある街だといえます。この流れは間違いなく今後も数年続くでしょう。スタートアップの台頭はもちろんですが、40-50代のアトツギ(後継経営者)の方々による地場企業の変革、成長、魅力ある仕事づくり、まちづくりを私自身も肌身に感じていて、彼らは様々なところで活躍してきた人材を、今まさに欲していると思います。
また、行政、大学、民間企業の領域や世代を超えたつながりも近年加速しており、みんなで地域を盛り上げている最中なので、仲間もたくさんできると思います。実際に私の友人知人はコロナ禍以降、20〜30代の移住者が急激に増えました。福岡は今後ますます多様化していくと思います。他県からの移住者にはビジネスの優位性があるとともに、自然が近い都市での生活の豊かさも十分に感じられると思います。きっと人生観が変わりますよ。迷われている方はぜひ、ソコナラに足を運んでみてください。
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株式会社クアンド:福岡・北九州発のスタートアップ。建設業の人手不足等の社会課題をDXで解決するため、現場に特化した遠隔支援ツール「シンクリモート」を開発提供。J-Startup認定、東洋経済の「すごいベンチャー100」にも選ばれて注目を集めています。
株式会社ソコナラ:本社を創業者の地元福岡市に置く関西電力発の社内ベンチャー。転職支援サービス「ソコナラ」を通じて、転職希望者が経営層との対話により新たなキャリアを描く場を提供しています。また、代表の三宅氏は雑誌「Ambitions」で日本のイントラプレナー50人に選出され、その革新性が注目されています
次回は『【特別連載最終回】ソコナラMEETの成果と未来 – 参加企業インタビュー vol.2 』をお届けします。
前回記事
【特別連載1/4】福岡で未来を創る!関西電力グループ・ソコナラが挑む新たな人材マッチング ~ 代表 三宅庸介氏、単独インタビュー
【特別連載 2/4】「ソコナラMEET」未来を創る企業と人が出会う場所 – 関西電力グループ・株式会社ソコナラ 2023年度イベント開催レポート
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撮影:霜田広太郎
撮影協力:個室型シェアオフィス・レンタルオフィスMol.t(モル・ト) / 博多イーストテラス