2015年4月、福岡市西区今宿に誕生した海辺のシェアオフィス『SALT』。このシェアオフィスは、私たち「福岡移住計画」が運営しています。オープンしてから4年が経過し、『SALT』にはどのような方々が入居し、日々空間を共有しているのか。シリーズ「SALTな人」では、利用者の視点から『SALT』という場のリアルについてお話を伺います。
今回インタビューに登場してくださったのは、株式会社グレイトクラフト代表の石綿淳さんです。広告プロモーションを含めたWeb制作・デザインに加え、起業向けのIT業務効率化のコンサルティング業にも力を入れるなど、ご自身のスキルや経験を活かして幅広い仕事に取り組まれています。家庭と仕事のバランスを考えSALTに入居された石綿さんに、福岡移住のきっかけから現在の仕事スタイルになるまでの経緯や今度の展望をお聞きしました。
ご縁に恵まれてここまできた
ーー前回の調さんに引き続き、フリーアドレス会員の石綿さんにお話を伺います。まずはご出身地と現在のお仕事内容についてお聞かせいただけますか?
岐阜県の出身です。高校卒業後に福島県の大学に進学し情報工学を学びました。新卒でシステム開発の会社に就職して、その後はサイバーエージェントなど、Web系の会社を中心に数社経験した後、現在は独立して株式会社グレイトクラフトいう会社を運営しています。Web制作・デザイン周りのことに加え、企業向けのIT業務効率化のコンサルタントなどにも取り組んでいます。
ーーSALTではWebデザイナーの石綿さんというイメージがありましたが、かなり幅広いお仕事をされているんですね。これまで会社員時代はどんなお仕事をされてきたんですか?
新卒で入った東京の会社ではプログラマとしてシステム開発に携わっていました。2社目でプログラマから初めてWebデザインを担当するようになって独学で知識をつけてサイトの立ち上げなどを担当しました。その後、Web業界以外の企業のシステム管理の仕事なども経験しましたが、クライアントワークをしたいという思いが芽生え、2004年にサイバーエージェントに入社しました。クリエイティブ局に配属になり、終電頃まで仕事をする生活でしたが、誰もが名前を知るような企業のサイト制作や広告周りの大きな仕事に携わることができました。サイバーエージェントに丸4年間勤めた後、学生時代の友人が立ち上げた会社に参画して、動画配信サイトの開発を担当。そこまでが福岡に移住するまで東京で過ごした期間ですね。
ーーすごい数の仕事の経験ですね。仕事を変えながら独学でスキルを身につけるなど常に行動しながらステップアップされてきたんですね。
いやいや基本的には受け身体質ですよ(笑)。自分から能動的にこれをやろうと行動してきたわけではないです。たまたまご縁やきっかけがあり、やってみようかなという気持ちで挑戦して失敗も経験しながらここまできました。
3.11東日本大震災をきっかけに福岡へ移住
ーーお話を伺っていると当時は東京でのお仕事が充実されていた印象ですが、福岡へ移住されるきっかけは何だったのでしょうか?
3.11東日本大震災が発生した際に、妻のお腹の中に二人目の子どもがいて、放射能のリスクを考えたところ一旦東京を離れた方がいいと判断し、妻と長男が妻の実家のある福岡県に一時的に引っ越しをしました。いずれ東京に戻ってくることを想定して僕は東京で暮らしていたのですが、半年頃過ぎた秋頃、出産を終えた妻から「東京には戻らないから。なんとかして」と言われまして。なんとかしてと言われてもなあ…と思いつつも、当時勤めていた会社の社長に相談したところ、それならリモートワークなど遠隔での勤務でもいいんじゃないか、と言葉をいただいて、会社に席を残したまま2012年の1月に家族と合流する形で福岡に移住しました。
ーーお子様の出産がきっかけで奥様のご実家のある福岡に来られたんですね。その後なぜシェアオフィスでお仕事をしようと思ったのでしょうか? SALTに入居される前もシェアオフィス を利用されたことはありましたか?
移住後数年間はリモート社員として自宅で仕事をしていましたが、知り合いが勤務している投資会社から資金援助を受ける機会に恵まれ、2015年の7月に現在の会社を立ち上げる運びとなりました。
起業初期に敷金・礼金などの固定費をあまりかけたくなかったのと、福岡での人脈もなくずっと家にこもって仕事をしていたので、何かしらのコミュニティに属した方がいいだろうと思い、最初に天神にあるシェアオフィス「ヨカラボ天神」への入居を決意。3年弱くらい入居していて、固定席のメンバーとは仲良くなり一緒に仕事をしたりコミュニティ感もあって好きでしたね。ただ、家族の予定などで生活リズムが変わったのでそれなら働く環境も変えようと思ってオフィスを異動することにしました。
ーーSALTに入居されたのは生活リズムを変えようと思ったことがきっかけだったのですか?
はい。妻が職場の異動で毎朝6時頃に家をでなければならなくなり、朝の子ども
たちのお世話や帰宅後の面倒を一手に引き受けることになりまして。子どもたちを起こして朝食を食べさせて送り出して…。その後、早良区の自宅から天神に通う生活でした。でも午後4過ぎに子どもたちが帰宅するので、シェアオフィス で作業できる時間が本当に限られてしまって。たまに夜中まで作業して帰宅することもありましたが、妻の家事負担が増えてしまうので、仕事をする場所を見直さないとうまく生活が回らないなと感じるようになりました。考えた結果、メインの作業場を自宅にして、今度は固定席ではなくフリーアドレスで利用できるシェアオフィスを探し始めました。
当時「ヨカラボ天神」の店長をしていた山下陽子さん(元SALTコミュニティマネージャーで現DAIAGONALRUNFUKUOKAコミュニティマネージャー)に相談したら、山下さんがSALTを案内してくださることになりまして。せっかくなら 「SALT給食」がある日がいいからとお誘いいただいて、手作りのワンコインランチが楽しめる水曜日にSALTに見学に行きました。海を食べながらおいしい給食をいただいて、「ここにします」とその場で入居申請をし、2018年の10月からSALT会員になりました。
※現在給食の販売は休止中
天神方面のシェアオフィスも検討しましたが、博多・天神方面にあえて行かない生活もいいかなと思いまして。今では博多に出向くのは週に1回の定期ミーティング程度になりましたね。
▲SALT給食
ーー仕事場も生活圏に近い場所にされたんですね。実際に入居されてみてSALTや周辺の街の印象はいかがですか?
SALTを初めて訪れた際に一発で環境の良さに感動してこんなところ他にないと思いましたね。
クライアントさんなどを今宿に招いてSALTの会議室でミーティングしたりもしますが、みんな「いいところですね」と言っていただけるのが嬉しいですね。
ーー石綿さんを通して今宿やSALTを知ってくださる方がいて嬉しいです。これまでSALTでの仕事をしていてよかったエピソードがあれば教えていただけますか?
SALTに入居した際にFacebookのメンバーページに自己紹介を投稿したところ、すぐに反応してくださった入居者さんがいました。ホームページ作成や動画制作の依頼をいただいたり、意気投合して一緒に仕事に取り組める方と出会えたのは嬉しかったですね。
ーー入居同士で仕事に繋がるご縁が生まれて嬉しいです!一緒に仕事をすることでさらに良い循環がSALTで生まれそうですね。仕事以外で楽しかったエピソードはありますか?
最初に見学にきたときに、SALTの女性スタッフの方から「Rくんのお父さんですよね」と声をかけられて。話してみると子どもたちが同じ小学校で週末は一緒の草野球チームで練習していることが判明しまして。まさかSALTで息子の同級生の親御さんと会うなんて思ってもみなかったので驚きました。顔見知りになってからは学校行事などで顔を合わせたときに話をしたりと良いご縁になっています。
自分がこの場所に還元できることをやっていく
ーーすごい偶然ですね!SALTには子育て世代も多く入居されていますし、子どもたちも参加できるイベントなども企画していきたいですね。SALTに入居していただいてから1年ちょっとですが今後SALTをどのように利用していきたいですか?
僕の知識や経験をコミュニティに還元していくような活動をこの西区でやっていければと思っています。今は個人でも色々な知識を使って仕事ができる時代なので、それだったら僕が持っている知識をレクチャーしたりすることで貢献できることもあるんじゃないかなって。その拠点としてSALTを活用していきたいですね。気持ちのよいSALTのロケーションで、SALT周辺のおいしい食事付きの学びの場を作るとか。先日Facebookメンバーページでシェアされていた近所のピザ屋さんも宅配してくれるみたいですしね。
ーーそれはとても良いアイデアですね!最近はSALTメンバーページで飲食店情報をシェアするのが流行っていて楽しいですよね。最後になりましたが、石綿さんが今後取り組んでいきたいことやご自身の目標があれば教えていただけますか?
コミュニティづくりにずっと興味あることや、建築や建物も好きなので、例えばシェアハウスのプロデュースなどに挑戦してみたいですね。特に福岡でもSALTの西区周辺が居心地がよくて好きなので、このエリアで自分にできることをどんどんやっていきたいですね。
あとは、「バンライフ」に憧れていまして、バンを購入して息子たちと3人で九州をぐるっと回る旅をするのが直近の夢ですね。
彼らも今年で小学4年生と2年生。一緒に遊べる時間が日々少なくなってきているので、中学校に進学する前のこの時期に実現できたらいいなと思っています。