【ぼくらが連れて行きたい店vol.35】大牟田の花屋「hanako」が考える“花を贈る”ということ(hanako)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

花を贈る幸せを伝え続ける人

福岡県大牟田市の西鉄新栄町駅を降りてすぐの商店街でひときわ目を引くアンティーク調な店。一見雑貨屋かカフェかのようにも見えますが、覗き込んでみるとそこには可愛らしいプリザーブドフラワーやドライフラワーが並んでいます。そう、そこはお花屋さん。どのような想いでこのようなつくりになったのか、ちょっぴりシャイな店主の吉田新さんにお話を伺ってきました。

−どうしてお花屋さんに?

若い頃によく女性にメイクをしてあげたり服を選んであげたりしていたんです。花を生ける感覚もそれに近いものがあって。きっと可愛いものを、より可愛く飾るのが好きなんでしょうね。就職する年齢になったときは特にやりたいことがなかったのですが「なんかせやんな」と思って浮かんだのが花屋でした。仕入れや配達のために運転免許が必須だと言われたので、18歳になったらすぐに免許を取って大牟田市内の花屋に就職しました。美容やファッションじゃなく花を選んだのは、昔母親が花屋をやっていたからなのかもしれません。今はじめた『hanako』という店の名前は母親の店から受け継いでつけました。

−素敵な由来がある店名なんですね。独立しようと思ったきっかけや大牟田を選んだ理由はありますか?

若い頃は地域を問わず、色んなところで働きました。中でも都会には色んな花屋があってすごく面白かったです。でも自分が本当に作りたいものは、自分の店を持たないと作れないなとも思うようになって独立を考えました。

この場所は僕が中学生くらいの頃すごく栄えていて、賑やかなところだったんです。それが大人になるにつれどんどん建物がなくなっていって、寂しかったですね。そんな大牟田じゃ仕事しても楽しくないとか、商売はできないとか言われていたけど、新しいやり方だったらやっていけるかなと。このまま大牟田が寂しくなっていくのは嫌ですし、若い人たちがもっと帰ってきてくれるように成功例を作りたいので、たとえ苦労してでもこの土地で頑張りたいんです。

−吉田さんは大牟田のことがお好きなんですね。『hanako』にはいわゆるお花屋さんっぽさがあまりないように感じるのですが、それも新しいやり方のひとつですか?

よく「何屋さんですか?」と聞かれますね。生花を入れる冷蔵ケースを置いていないからなのかもしれません。生花は少しでも新鮮で綺麗な状態のままお渡ししたくて、注文を受けてから仕入れるようにしています。冷蔵ケースがあると長く花を置けるので、どうしてもギリギリまで花を使ってしまいますからね。生花に特殊な加工を施したプリザーブドフラワーならアレンジメントの作り置きができるので、普段はそれを店先に並べています。

あえて花屋らしくない店構えにしている部分もありますよ。花屋だと隠しているわけじゃないのですが、花屋って少し入りづらくないですか? 買わないといけないっていう雰囲気があるというか…その抵抗をなくしたくて。それで、花を買う以外の目的の人でも店内へ入りやすいようにケーキを出したり、Wi-Fiを使えるようにしたりしているんです。実際に小さいお子さんを連れたお散歩中のママさんや、電車を待つ方、勉強場所として使う学生さん、色んな方が色んな目的で立ち寄ってくれていますね。

−確かに、何となく雑貨屋さんみたいでふらっと入りやすいです!お店のコンセプトもその辺りに通じるものがありますか?

そうですね、ショップカードに「月に一度花を贈ると世界がかわる」と書いているんですけど、それがコンセプトですかね。花を贈るのって気恥ずかしいじゃないですか。僕もシャイなのでその気持ちはよくわかります(笑)。でも花って想像以上に喜ばれる贈り物なんですよね。だから母の日とか誕生日とかイベントや特別な時に限らず、どんな時でも気軽に手土産感覚で花を贈ってほしくて。花は高いと思われている方が多いですが、実はアレンジ次第で安くてもボリュームがあって見栄えするものも作れるんですよ。そんな花もあるんだ、ここはそんな花を売っている花屋なんだ、というのを知ってもらうためにも、気軽に店内へ入りやすい雰囲気作りは大切にしていますね。

−手土産感覚でお花を贈るって素敵!安くて可愛いお花だったら色んなシーンで気軽に贈れますね。これから先はどんなことを?

花に興味を持っていない人にも花のことを知ってほしいと、いつも思っていて。興味を持っている人だけに向けた商売はしたくないんですよね。地方でやっていくからには、その土地とそこに住む人たちと一緒に育っていかなきゃいけないと思うので。そんな中でこれから先やりたいことや目標は沢山あるんですけど、そのうちのひとつが大牟田にいるすべての女性に花を届けることです。花を贈られた女性って、見ていてこっちまで嬉しくなるくらい幸せそうな表情をするんです。その表情を大牟田の男性たちにも見てほしいなと。まずはうちの店や花のことを男性に知ってもらうために、できることから取り組んでいこうと思っています。

『hanako』は、そこで過ごす全ての人に癒しを与えてくれるような空間。それは単に可愛い花が並んでいるということだけでなく、花やまちの人たちへ向けた吉田さんの温かな想いが溢れているからなのかもしれません。可愛いものに囲まれてのんびりしたいときや、大切な人への贈り物を探しているときは、『hanako』へ出かけてみてくださいね。

【hanako】
福岡県大牟田市新栄町16-1-2
TEL:0944-53-5303
営業時間:12:00〜20:00
定休日:月曜日

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