「福岡クリエイティブキャンプ」(以下FCC)は、主に首都圏で働くIT・デジタル系のクリエイティブ人材を対象に、福岡市内企業へのU・Iターン転職をサポートするプロジェクトです。
8月5日には東京八重洲の『ダイアゴナルラントウキョウ』でイベントが開催され、イベント第1部にゲストでお迎えしたCINRA,Inc.代表の杉浦太一氏のお話が好評であったため、福岡市/山下氏と福岡移住計画/須賀とのクロストークの模様をレポートいたします。
須賀:「今日は杉浦さんにいろいろな働き方への取り組みをお伺いして、これからの働き方について皆さんで考える場にできればと思いますので、よろしくお願いします」
杉浦さん:「よろしくお願いします。まず私たちの会社の紹介として、事業はメディアとWEBの広告、作成、ブランディングといったデジタルマーケティングを行っています。クリエイティブなジャンルのニュースやインタビューを掲載する『CINRA.net』やクリエイティブ系の企業に特化した『CINRA.JOB』という求人サイト。
その他、東京・京都・福岡・沖縄、アジア各地のクリエイターおすすめの場所を紹介する『Here Now』というシティガイドも運営しています。ファッションやデザインの切り口で魅力的な東京を紹介する『100 Tokyo』という経産省とのプロジェクトや、福岡市の観光情報サイト『よかなび』などインバウンド系の事業が増えてきています」
CINRAの働き方の改革
杉浦さん:「働き方に関して言うと、時間や場所にとらわれないフリー出社制度を試験的にやってみました。会社に来なくてもいいよ、その代わり決めたことはちゃんとやろうね という成果重視型の試みです。トライアル期間中、セブ島へ語学留学したり、ママが在宅ワークしたり、他社で働いたり、いろんな社員がいました。
この2、3年、働き方がキーワードになっています。やっぱり大きなきっかけは電通事件ですよね。労働時間が大きく問題になり、“やればやるほど格好良い”という価値観が見直されてきました。1980年から2015年までのGDPの割合を見ると、欧米は大きく変わらず、アジアでは特に中国とインドが上がっているのに対して、日本は下がっています。労働人口が減ってGDPが縮小し、相対的な国の経済力が落ちれば、残業云々の前に、そもそも望ましくない労働環境に置かれることもあるかもしれません。
だからこそ、世界に通用する強いチームでありたい。そこでやってみたことは、古い業界慣習や無駄を抜本的に排除して、社員を信用し自由を保証する改革です。その分、成果を見ていくスタイル。会社に来なくて良いけれど、面白い仕事を最も少ない労力で最大の成果を出していこうね、と。会社と個人の関係性として、フェアでハングリーな関係性を作りたいです」
須賀:「フリー出社制度の結果はどうでしたか?」
杉浦さん:「トライアル後に社員にコミュニケーションの質や量、健康度、やる気についてアンケートをとると、コミュニケーションの量はむしろ増え、質は上がり、ほとんどの社員が場所に縛られない働き方で意欲が上がったという結果でした。朝の出社時間が緩くなるだけで体の調子も良くなり、自由があると精神的にも楽になるようです。
自分の市場価値が高まると感じた社員がほとんどでした。フリー出社制度と成果制度の導入にほとんどの社員が賛成でした。良いことしかないなと(笑)。8月中旬から導入します」
変わる働き方の未来
須賀:「リンダ・クラットンさんの『LIFE SHIFT』という本によると、いまの40歳以下の日本人が100歳以上生きる可能性は50%だそうです。年金問題もあり、80歳までは働く必要があります。リンダさんは、場所や職を変えて人生のマルチステージ化を繰り返していく必要があり、それには変化を恐れずソーシャルキャピタルと言われる仲間を作ることへの投資も必要だと言います。
働き方のキーワードとして、場所や時間の選択と副業があります。杉浦さんが副業OKに至った思いは?」
杉浦さん:「副業解禁自体は多くの会社がすでに実施していますが、社員を縛っていること自体が、その人の成長の邪魔になっているというのが大きいです」
須賀:「今回は福岡がテーマでもありますが、福岡を外から見るとどう感じますか?」
杉浦さん:「個人的に一番魅力的なのは周辺環境です。コンパクトだけど便利な都市機能もよいですが、それ以上に、ちょっと車を走らせればすぐに他県の豊かな文化に触れられます。これは東京にはないです。
「暮らす」という視点で考えればこんなに良い場所ないですよね。場所にしばられなくなれば、福岡を住まいとして選択する人はもっと増えると思います」
須賀:「山下さん、福岡市としてのビジョンは何ですか?」
山下さん:「福岡は東京を目指しているわけではなく、福岡で働きたい住みたい人に集まっていただきたいと思っていて、アジアなど世界を目指す独立した文化圏になっていくと面白いと思います。ITやクリエイティブ産業が福岡の成長を盛り上げていけるよう行政として福岡で働きたい人のサポートをしていきたいと思います。
そういう意味でも始まったFCCは3年で登録者約380名、実際の転職者は約60名です。登録者の8割が20代後半から30代前半です。転職前の居住地は関東圏が6割です。FCCには福岡市内の企業約70社に参加いただいていますので希望の働き方をFCCを通して是非見つけていただきたいです」
須賀:「杉浦さん、ご自身の今後の働き方や10年後CINRAをどういう会社にしたいですか?」
杉浦さん:「個人的な欲求としては、言葉の壁がなくなるはずなので、世界中に行って色々な場所で仕事をしたいです。創業当初からいつかはじめたいと思っている、教育の分野にもチャレンジしていたいですね 」
場所や時間にとらわれない働き方をリードする杉浦さんのお話はいかがでしたか?
「自由」という言葉がトーク中に何度も出ていました。この自由で余白のある働き方がクリエイティブな仕事を生み出すのかもしれません。