映画監督の経験で街をPR
昨年の『福岡よかとこビジネスコンテスト(ビジコン)』で大賞を受賞した完山さんは、国際映画祭で受賞暦のある映画監督です。CMの演出もしたり、脚本も書けて、俳優として出演もするという映像作りのプロ。そんな完山さんは今、家具の街・大川市で地域おこし協力隊員として映像で街をPRしています。撮影・録音・編集を1人でやりながら、街の職人やイベントなどの魅力を大川市役所YouTubeチャンネルで発信しているのです。
※大川市役所YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCkjHP7LkUEbcfS2kqXvdc-Q
完山さんと大川市との出会いのきっかけは、吉本興業の“地域発信型映画”プロジェクトからの依頼で大川市を舞台に短編映画『想い出の中で』を監督する仕事でした。それまで大川市のことは知らなかったのですが、滞在するうちに魅力を感じて、たまたま知った地域おこし協力隊にこっそり応募。昨年夏に移住しました。その後、大川市役所からビジコン参加を勧められ、思いついたのが、大川にある空き家・空き倉庫を撮影スタジオに再生するプラン。今は対象物件を探しながら、そのプランを実現しようと動いています。
ビジコンをきっかけに、プロジェクトと出会いが生まれた
−大川市に移住までするのは思い切りましたね。
「住む場所を変えるのには抵抗が無いんですよ。高校生の時にブラジルに留学したくらいだし、ラテンのノリで(笑)というより、実は地方に移住している映画監督って多いんです。僕も世界中どこでもいいんですよね、英語もポルトガル語も話せるし。でも日本の地方がいいなと思っています。
今は東京とかの都市でもコンテンツが少なくて、地方の素材を持ってきてイベントするというやり方なんですよね。でもそれって面白くないというか、もう終わりだろうと僕は思っています。これからは地方にしかないものを探して逆に地方に行くんじゃないかな。
特に大川が気に入ったのは、人と歴史です。短編映画『想い出の中で』の撮影の時にすごくお世話になって、みんないい人たちだったんです。だから撮って終わりではなくて、何かしら関係を続けたいなと思っていました。地域おこし協力隊に応募した時にはそんな“ご縁”が理由だったんですけど、移住してみて思うのは歴史の深さです。
僕は在日3世で移民の人間で、育ったのも大阪のニュータウンだったので“ずっと大川で暮らして家具職人何代目です”とか聞くとカッコいいなというか、うらやましいし、すごく刺激を受けます。ずっと受け継いできているのはすごいなと思います。例えば床屋だって職人だと僕は思うし、ずっと大川を見てきた人たちです。そんな職人さんや大川の街の歴史もPRしているのですが、僕自身も魅力を感じているんです。
大川の人はまちづくりに一生懸命ですね。大阪や東京に住んでいた時には、まちづくりの話を巷で聞く機会はほとんどありませんでした。でも大川で飲み屋に行ったり、ご飯を食べに行ったりすると、他のお客さんやお店の人たちがみんなまちづくりについて話していて。政治とかについてすごく話をするんですよ。東京とか他のところだったら、“何かやってるんだろうけど”とか“上が決めたことだから”とか、あまりにも遠い存在に感じます。でも大川だと“こうなればいい”と話すだけじゃなく、実際に活動も一生懸命しているんです。イベントをやって盛り上げようとしたり。そういう人たちを、僕は映像でお手伝いしたいと思っています」
−撮影スタジオをつくるというビジコンのプランはどのように思いついたのですか?
大川に来てから数ヶ月経った頃に、市役所の方に“ビジコンに何か応募してみたら?”とお話をいただきました。その時に僕の中には、大川という地方に人を呼び込みたいという思いと、大川家具の売上が落ちたり縮小しているので復活させたいという思いがありました。それから、大川でしかできないことで、ここで僕にしかできないことは何かを考えたんです。
それで思いついたのが空き倉庫を活用した撮影スタジオです。どんな施設かというと、その中の美術品が全て大川家具なんです。そして呼び込むのは海外の撮影スタッフ。僕は海外の映画業界にもネットワークがあるので、撮影隊を呼び込むのにどこに売り込めばいいかとかもわかります。理想はハリウッド映画をそのスタジオで撮影することです。トム・クルーズが座るイスが大川家具とか。ハリウッド映画に登場すれば30億人とか40億人が観る可能性があって、そうするとすごいPRになると思うんです。重くて大きい家具も、映像にすれば世界中に発信できます。
大川がすごいのは、家具屋がたくさんあるので撮影に必要な家具をすぐに見に行けて、さらにそれを2時間とか長くても半日くらいで全部そろえられることです。運ぶための技術やトラックも大川は持っているんですね。だから必要になるとすぐにスタジオにセットできるんです。そして立地的にも大川は海外の撮影隊を呼ぶのに適しています。佐賀空港まで20分で来れますし、多様な地形を持つ九州のほぼ真ん中あたりに大川はあるので、外ロケのアクセスもいいんです。海のシーンを撮るなら糸島に1時間半、山なら阿蘇に2時間とか。室内シーンを大川で全部撮れるようになれば、大川は撮影のベース拠点になれるんです。
今はそのスタジオにするための物件を探しているところです。構想では大野島という筑後川の中の島に『OKAWOOD』という撮影スタジオをドカンと作ろうと考えています。でも実際に撮影に使うとなると騒音や照明や搬入搬出とかの課題がいろいろあって、まだ見つけられていないんです。そこで最初は小さいところから始めて、実績ができれば大きくしてちゃんと事業としてやるという方法も考えています」
−ビジコンに応募してみて良かったことは何ですか?
そもそもこういう大きいことまでは移住当初は考えていませんでした。ビジコンというきっかけがあったからこそ、期限内でぎゅっと集中して向き合って考えることができたんです。そしてビジコンをきっかけにしていろんな人に相談する事もできました。特に市役所のインテリア課の職員さんとか、商工会議所の方にはすごくお世話になりました。僕はこれまでビジネスプランをちゃんと考えたことがなかったので、ビジネス企画書の作り方や書き方、ビジネスプレゼンの仕方とかいろいろ教えてもらったんです。映画のプレゼンとはまたちょっと違うんですね。
そしてビジコンで優勝すると、空き倉庫を探すのも街の人に手伝ってもらえるようになりました。僕がただふらっと移住しただけじゃなくて、真剣に大川をPRする気持ちがあるということもビジコンで伝えられたと思うんです。僕自身について大川の人にもっと知ってもらえるようになりましたし、福岡市内や他の地域の人ともたくさん知り合えました。」
−移住起業を考える人にメッセージをいただけますか?
「福岡はアジアの中心になれると僕は思っています。これから海外とつながれる人材が増えれてくれば、さらにおもしろくなるはずです!」
【福岡よかとこビジネスプランコンテスト】
福岡県が主催となって、県内各地の地域資源を活かした新しいビジネスを創出するためのビジネスプランコンテストです。このコンテストは、地域資源と福岡県内において創業を希望する方のアイデアやノウハウを掛け合わせ、地域経済の活性化を図ることを目的に実施するものです。
応募された方は、市町村、商工会議所・商工会、金融機関等地域の支援機関のサポートを受けながらビジネスプランをブラッシュアップし、創業の準備をすることができます。
また、県内27市町村から独自にテーマを定めた賞が授与されます 。
http://fukuoka-yokatoko.biz
上記の『福岡よかとこビジネスプランコンテスト』に先駆けた福岡イベントが9月22日(木・祝)に開催され、完山さんも登壇します!
【福岡イベント】
《概要》
地域活性化のプロジェクトを手掛ける二人が魅力ある地域ビジネスの起こし方を語り、昨年度ファイナリストが地域への思いや取組みを語ります。
▽詳しいタイムスケジュールや内容、お申込みはこちらから
http://fukuoka-yokatoko.biz/fukuoka_event/
日時:28年9月22日(木・祝)14:00〜17:15
場所:福岡アジアビジネスセンター
(福岡県福岡市中央区天神 福岡ビル4階)
定員:50名(定員に達し次第締切り)
申込み期限:9月20日(火)
福岡での仕事づくりに関心のある方は是非ご参加ください。