【Rethink Booksイベントレポートvol.1】 東川スタイル×糸島スタイル「これからのまちづくり」

今年6月に福岡の天神明治通り沿いに期間限定でオープンした『Rethink Books本とビールと焼酎と』では、私たち福岡移住計画では毎月第4水曜日にイベントを開催していくことになっております。

そして先日第1回目のイベントを開催しましたのでレポートにて報告します。タイトルは『東川スタイル×糸島スタイル〜これからのまちづくり〜』。

北海道旭川市から15kmほどのところにある、人口8000人のまち東川町には、この20年あまりで人口が14%も増え、現在60以上もの、魅力的なカフェ、ベーカリー、雑貨、クラフト作家など“小商い”が集まり、感度の高いセンスある移住者を引き付けているとのことです。
東川がつくってきた、まちの“スタイル”とはどんなものなのか、これまでの東川の軌跡と今をまとめた書籍『東川スタイル』の編集者である末澤さん、町づくりの実践に取り組む役場職員の菊池さんに東川のスタイルについてお話を伺いました。

九州からは、同じく全国の移住先としても注目を集めている福岡県糸島市より10年前に糸島市に移住し、地域の変遷を見てきた九州大学の坂口教授をむかえ、昨年実施された総務省ふるさとテレワーク『糸島スタイル』での活動を振り返りながら、糸島らしさについてもお話いただきました。

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“東川らしさ”を住民も理解している

ーまずは『東川スタイル』編集者の末澤さんと東川町役場の菊池さんに東川らしさについてお話を伺おうと思います。まず東川ってどんなまちでしょうか?

末澤さん:「私が東川に携わったのはここ1年半くらいなので、東川についてしっかりとは語れないと思いますので、そこは役場の菊池さんにお願いして、私はこの本を出したときにどう感じたのかという部分をお話したいと思います。」

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菊池さん:「まず位置的に言うと東川は北海道の中心ですね。隣接するのが北海道第二の都市旭川があり、旭川からは車で約25分のとろこに市街地があります。雰囲気としておしゃれなカフェやこだわりのお店が集まっていて旭川からも多くの人が訪れています。」

末澤さん:「そういう意味でいうと糸島市が福岡市に隣接していて、都市部から注目を集めているという部分で似ていますよね。東川の面白いところは様々あるんですが、8000人のまちでありながらここ5,6年で30店舗ほどカフェやショップが増えているということ、そして特徴として公務員の方の発想がいわゆる公務員と違うので、少しご紹介できればと思います。
東川の公務員の方の発想で“3つの無いはない”という話がありまして、“予算が無い、他でやってない、前例が無い”の無いを言ってはいけない。というまちの方針を町長が掲げていらっしゃいます。実際にそれを言ってはいけないことになってるんですよね?」

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菊池さん:「はい。“上水道が無い、国道が無い、鉄道がない”とかですね、最初に職員向けに言い出したのがこの言葉です。町長は他でやっていないことをまずやろうと、言い訳はしないでおこうという発想で、こういうような発想が職員に伝わって浸透していったような感じです。私自身も新しい取り組みということで担当が交流促進というところなんですけど、7年前に日本語研修事業というものをはじめて1ヶ月2ヶ月3ヶ月の短期研修を6年程続けたんですが、述べ1600人東アジアの国々含めて16カ国くらいから人きていただきました。国内ではなく海外に目を向けて交流人口を増やしていくということですね。今では専門学校にも日本語学科が出来て、ある程度の生徒数確保にもつながっています。研修や留学と言えど海外の方が東川にくることを観光客という風に捉えると3000万円から4000万円の経済効果は出しているんじゃないかと思いますね。」

末澤さん:「役場の方がこういった数字を意識して動いているのも特徴の一つですよね。さらに取材を通してわかったことですが、東川には町民が“東川らしさ”という価値観を持って生活しているのが感じられるんです。その、町民が“東川らしさ”というのを考え出したきっかけの一つが『写真のまち』という宣言を1985年に打ち出したことです。」

菊池さん:「当時は賛否両論ありました。単純に30年前に写真でまちおこしってなに?という感じですよね。それが町民にも理解されるようになったのは10年後にはじめた『写真甲子園』。全国の高校生を選抜で招聘して3,4日にわたって町民を撮りまくるわけですが、そのうちいい笑顔をつくろうとか、写真写りのいいようにしようとか町民自ら努力をするわけですよ。それを積み重ねていくことで馴染んでいって町民も『写真のまち』ということを逆に自信をもって言うようになってきました。」

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末澤さん:「今でこそアーティストインレジデンスみたいな話はよく聞くと思んですけど、20年前にフォトグラファーインレジデンスみたいなことをやっていたんですね。その時に携わった方にお話を聞くと“東川らしさって何だ”とすごく真剣に考えたようです。そういったことを町民が真剣に考え取り組み始め、続けてきたことが“東川らしさ”の背景にあるんじゃないかと思いましたね。」

菊池さん:「今、外からみると東川らしさを追求しているように見えるかもしれませんけど、内側にいると誰も追求というものはしていないんですね。気づいたら東川らしく生きていたという感じです。」

末澤さん:「取材を通してみていると、経済価値をいかに優勢していくかというよりも、こういう文化のまちづくりをやってきた結果のひとつなのかもしれませんが、生活文化をどうやってつくっていったら、より暮らしが豊かになるだろうか、より幸せに暮らすためにはどうしたらいいのかというところを、町民のみなさんが自然に考えていて行動されている感じがして、非常に学ぶところは多かったです。」

“うち物差し”で捉える

ー『糸島スタイル』については昨年総務省ふるさとテレワーク事業内で実施した『ジモト学』開催の経緯について九州大学の坂口先生にお伺いしようと思います。

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坂口さん:「糸島というのはいろんな人がつながるのが簡単とういうか、早いですね。友達の友達は友達というか、こういう関係性が糸島らしいと思います。ただ今の糸島ブームというかメディアのつくったイメージと現実の開きがあって、コミュニティの入り方とか地元にあるルールとかを知らずに来る方もいるので、そこはなんとかしないといけないなと思っています。そのギャップをいかにかしこく上手にやっていくのかを一緒に考えていきましょうということで『ジモト学』というものを実施しました。内容としては地元の自治会長などの長老たちを連れてのまち歩きや、自治会費の仕組みなどを学ぶということなんですが、このまちのルーツというか“うち物差し”で捉えることが非常に重要だと思うんです。いいとこだらけのイメージである“そと物差し”で来られてしまうと現実に直面して戸惑ってしまうと思います。東川もそうだと思うんです。メディアなどのイメージは最近のことであって、魅力に映る理由である部分は実践として意識せずにこれまでずっとやっていたということだと思います。」

ー最後に東川と糸島の両方に移住された経緯を持ち、現在は東川でお店を経営している桐原さんもゲストにお招きしているので、この2つに共通することをお聞きしたいと思います。

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桐原さん:「さっきあったように東川も糸島も大都市圏に隣接していて、自然が豊かで空港も近い、そして都会でも第一線でやっていけるようなユニークな人たちが集まっているところが共通点だと思いますね。そして共通する改善すべき点として住まいの確保というものがあると思います。東川の場合は条件のいい物件がネットに出ると数十分で決まってしまうんです。糸島と同じで住みたいという人が多くて、僕たちのお店にも、どうやって物件見つけたんですか?という感じで聞きにくることもあります。地元の方の紹介で流通することはありますが、まだまだ紹介するだけの物件が足りてないのでそこは課題かもしれないですね。地元の方の紹介というのもそれだけまちのコミュニティに入っていくこといけないと出てこない話なので。」

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ふたつの町が人を惹き寄せる理由として、もともといた地元の人が丁寧に町のこと、暮らしのことを考え実践してきた結果なのではないかと思います。表だけデザインされた町を見るのではなく、しっかりと内側を“うち物差し”で捉えることで、町にそくした自分らしい暮らし=スタイルを築けるのかもしれません。

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