【ぼくらが連れて行きたい店vol.24】たくさんの笑顔が生まれる、小さなパン屋さん(ニコパン)

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
本コーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

運命の出会いに引き寄せられ

福岡県南部に位置する大木町。のどかな田園風景が広がるこの町に、今回ご紹介する『ニコパン』はあります。決してアクセスがいい場所じゃないけれど、町内の人々はもちろん、福岡市内や県外からも、ひっきりなしにお客が訪れる人気店です。そんな『ニコパン』を切り盛りする北島勇さんと美香さんご夫婦にお話をお伺いしました。

−おふたりは確かUターンですよね。どうして大木町でパン屋さんをしようと思ったんですか?

美香さん:「『ニコパン』をオープンする前、私は東京でテキスタイルデザイナーとして働いていました。仕事がすごく面白くて、毎日が充実していました。でも、ある日会社の人から“そろそろマンションでも買ったら?”といわれたときに気がついたんです。“私が望む生き方は、これじゃない!”って。そんなとき、同窓会で勇くんに再会しました。勇くんったら、結婚もしていないのに“家族で過ごす時間を大切にしたいから、パン屋になりたい。そのために修業をしている”と言っていて。すぐに“面白い!私も協力するよ”と、パンの食べ歩きを一緒にする約束をしたんです」

勇さん:「エンジニアとして働いていたときに、仕事に忙しく家庭をかえりみない上司や、体調を崩していく同僚をみて“あんな風にはなりたくない”って思っていました。昔から職人さんには憧れがあったので、思い切って会社を辞めて、パン職人の修業をはじめたんです」

美香さん:「勇くんは、最初は“東京都内か、海の見える町でパン屋をやりたい”って言ってたんですが、私が“大木町でやろう!大木町がいいよ!!”ってしつこく誘いました(笑)。大木町で生まれた私ですが、家が転勤族だったので、そんなに長く暮らしたわけじゃないのに、ずっと大木町のことが心から離れなくて。いつかここに帰ってきたい、根付きたいという思いがずっとあったんです」

−あの、ひとつ確認したいのですが…。この時点でおふたりは、結婚も、お付き合いもしていないですよね?

美香さん:「そうです(笑)。それなのに、私“大木町に帰ってパン屋をします”って会社に辞表を出しちゃった。でも、勇くんのことは人間として信頼できたし、人生の価値観も似ていたし、“この人となら家族をつくれるな”と思いました」

勇さん:「東京でパンの食べ歩きをするために再会したときに“会社を辞めて、大木町に帰ります”と突然いわれて。“はい、そうですか”みたいな(笑)。でも、“あぁ、この人ならパンを売ってくれるだそう”と思えました」

思い立ったらスグ行動!の美香さんと、じっくり・ゆっくり自分の道を進んでいく勇さん。一見するとタイプの違うおふたりですが、人生において大切にしたいことや希望するライフスタイルは、ほぼ同じ。だからこそ、同じ道を進むパートナーとして、結婚し、夫婦となり、家族となっていくのは、ごく自然な流れだったのでしょう。

パン屋という生き方

−『ニコパン』のコンセプトを教えてください。

美香さん:「お店の名前の通り、みんながハッピーになれるようなお店です。パンもこの材料じゃなくてはだめ!とこだわるのではなく、みんなが美味しいって食べてもらえるパンを作るようにしています。また、自分が子育てをしてみて思ったことは、田舎って子連れでいけるお店が以外と少ないんですよ。だから、赤ちゃんや子連れでも、気軽にこれるようなお店で、少しだけ非日常が楽しめる空間で、なんか楽しくて、わくわくできるような場所にしたいと思っています。だって、お母さんたちに“この町、いいな”って思ってもらえないと、子どもが増えていかないし」


−美香さん自身も2児のお母さんですよね。お店にきて、美香さんとお子さんが一緒にいるところをみると、なんだか私も癒されます。

美香さん:「子どもと一緒に働けるのは、本当に有り難いです。近所に両親が住んでいるので、なにかとサポートしてもらっています。パンを作るのは勇くん、接客は私、庭仕事は勇くんのお父さん、イベントのときは母が子守りをしてくれるなど、家族で協力し合いながらお店を切り盛りしています。大木町にこなかったら、こうした生き方、働き方はできませんでした」

勇さん:「赤ちゃんをおんぶしてパンを作ることもありました。子どもの成長を感じながら仕事をするのが理想だったので、すごく嬉しいです」

−今年で『ニコパン』は7年目を迎えますが、今後の目標はありますか?

美香さん:「まずは、雑貨を増やしていきたいなぁ。ちょっとしたお礼や贈り物を探しに『ニコパン』にくる方も多いし、可愛いもの、素敵なものをみると、気分があがるし、ストレス発散になるじゃないですか。パン以外でも、楽しい!というわくわく感を届けたいんです」


勇さん:「僕の夢は、いつか娘にレジをしてもらうことかな」

美香さん:「数年後には店舗を移転すること、人を雇うことも考えています。わたしたち夫婦がよく話すのは“どういう生き方をしたいか”ということ。そのために、どうしたらいいかを考え、話し合うようにしているんです。今はパン屋というカタチをとっていますが、自分たちの目指す生き方をするため、将来的にそのカタチが変わることもあるかもしれない。それはそれでいいかな、と思っています」

理想の人生を歩むため、大木町でパン屋をするという道を選んだ勇さんと美香さん。パンのおいしさもさることながら、ふたりの個性あふれるライフスタイルも人気の秘密なのかもしれません。

別にパン屋じゃなくてもいい。自分らしくいきていくために、なにをしていくかが大切と語る、おふたりの言葉がとても印象的でした。

【ニコパン】
https://www.facebook.com/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%91%E3%83%B3-300541453303587/
福岡県三潴郡横溝82-1
0944-78-1292
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜不定休

"ひと"の関連記事

keyboard_arrow_up