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小石原・ふるさとの日々の暮らしから生まれる「作品作りへの挑戦」。(翁明窯元)

2017.3.6  

「自分の作品を作りたい」と思っていた20代

英彦山の麓にある、朝倉郡東峰村小石原。JRで博多駅からのアクセスは電車で約2時間、福岡から車で約1時間(高速利用)のため、足を伸ばして1DAY観光に訪れる方も多い地域です。ここで焼かれている陶器、小石原焼をご存知でしょうか。山に囲まれたのどかな風景の中で約350年に渡って焼物が作られてきた「焼き物の里」が小石原です。かつては酒壺・花器・擂鉢などが主に作られていましたが、時代は流れ、昭和20年代になると民芸運動が活発化し、広く「民芸陶器」として受け入れられ、昭和30年代には「用の美」としての脚光を集めるようになりました。現在は約50軒の窯が、「普段使いの器」として「用の美」を確立した作品を作り続けています。


※1代目である翁明さん、2代目の尚幸さんの作品が店内に並んでいます。

そんな伝統を持つ小石原焼で、「作り手」として関わる方にお話を伺いたいと、若いファンが多い翁明窯元・鬼丸さんの工房へ訪問し、2代目の鬼丸尚幸さんにお話を伺いました。

−先頃、日本陶芸展で文部科学大臣賞を受賞された事が新聞でも報道されていました。おめでとうございます。公募展などで発表をされているご自身の作品は青磁ですね。磁器は、母校である東京芸術大学時代から取り組まれていたことなのでしょうか?磁器と陶器を両方扱っておられる窯元さんは小石原でも珍しいと思うので、もしよければ、若い頃のお話を伺ってもいいですか?

「小さい頃から父親が陶芸をしているのを見てきたので、自然と自分も陶芸をやるものだと思っていました。本当に自然な流れですね。磁器は大学に入ってから作る機会があって、その時に薄さだったり、土ものでは出来ない工程の面白さを知って作り始めました。でも、学年が下の頃は、みんなで共同の窯を使うのでなかなか作れないんです。大学院ぐらいからだんだんと使える時間も増えていくんですが、今度博士過程になってくると後輩の指導とかが入ってきて、これまた自分の作品を作る時間が無くなってくるんです。指導する事で得る事もあったとは思いますが、論文に時間がとられていたりする事もあって、あの頃はきつかったですねぇ~。最後の1年は結婚して妻と東京で一緒に住んでいたので、とにかく論文を書き上げて、博士課程をとって、小石原に帰るぞ~!ってずっと思ってました。学校に残るという選択肢もありましたが、そこは考えていませんでした。自分の作品を作りたい、作るためには自由に使える時間と窯が欲しい、そのためにも小石原に帰らねば!でしたね」

小石原焼の窯元としての自覚

−そうなんですか。ご自身の作品(磁器)を作るためにも、小石原に戻って来るのが自然だったのですね。さて、小石原に戻って来られて、窯元としての仕事、ご自身の作品作りに取り組んでおられるわけですが、土ものと磁器ではやはり大きく異なると思うのです。鬼丸さん自身はどのように考えていらっしゃるんでしょう?

「土もの(陶器)と磁器だから、言うなれば対極のものですよね。両方に取り組む事で、自分の意識を切り換えられる利点があると思っています。とは言え、このままのペースでどちらもやっていくというのは年々難しくなるだろうなぁとは思っています。父もだんだん歳を重ねてきていますから。今年は個展に向けて1~2カ月時間をとる事が出来ましたが、それもいつまで出来るかなぁ。やっぱり段々と窯元としての仕事(陶器)の比重が重くなっていくんだろうなぁとは思っています」

−面白くもあり、悩ましいところではあるのですね。窯元としての仕事についてはどう考えていらっしゃいますか?

「小石原焼っていうのは、クラフト寄りの仕事です。この地で採取した土や材料で作るんです。それと食器でいうならば、料理が主役で器が引き立て役、そんな日常に馴染むものが小石原焼だと思っています。だから、うちの焼き物を使ってくださるお客様からの支えや要望があって作れるものですね。うちの場合、日頃は卸しをお断りしていているのも、窯にわざわざ足を運んで下さるお客様を大切にしたいという思いがあるからです。ですが、それでも小石原焼を求めて、わざわざうちにお話をいただいたりする事もあるので、そういう時はありがたいと思います」


※ここから小石原焼が生まれる。道具は手作り。

−なるほど。先だって発表されたスターバックスの「JIMOTO made シリーズ」のマグ、 Tobikannaも、そのような要望から生まれたお話なのですか?

「そうです。僕たちも後から知ったのですが、JIMOTO madeシリーズで小石原焼が検討された時期に、担当のスタッフの方が何度も小石原に足を運ばれていたそうなんです。1番最初はその事を知らなくてお断りしたんですが、その後も連絡をいただいて、そこまで一生懸命に関わろうとしてくれているのだったら・・・という事で、今回のお話をお受けしました。最初は、小石原焼には刷毛目、飛び鉋、櫛目という特徴的な技法があるので、その特徴を色々と盛り込んだマグカップを希望されていたんですが、やっぱり『主役=珈琲』が大事なんですよね。そこで、シンプルに飛び鉋だけを使ったものをこちらからも提案させていただいて、採用されたので一安心でした。加えて、“コーヒーの香りを深く楽しむことができるように400mlは入るサイズ、なおかつ口径を絞りこんだもの”というスタッフの方からの要望を基にして作ったんです。それは、自分からは出てこない発想だったので、面白かったです。準備はずっと水面下で続いていたんですが、秋の民陶祭が終わってからの制作だったので、本当に時間に追われていましたね。ここ最近で、何とか一息ついたところです」


※何度も試作を重ねてようやく完成したマグカップ。

「昨年は、妻の出産があって両親と僕では仕事がまわらないので、新しい方に入っていただいたりしています。仕事量がありがたい事に増えていて、実は今でも人手が足らなくてですね。陶芸の仕事はそれこそ70代・80代の方にも出来る仕事があるので、近くの方々に来ていただいています。コツコツとやっていただけるので助かります」
(ちなみに、パート・アルバイトは今現在も募集中とのこと!陶芸に興味のある方、コツコツ仕事が得意だという方はチャンスです!)

−さて、ここまでお仕事の事についてお話をうかがってきましたが、最後に、1番上のお嬢さんから昨年生まれた息子さんまで4人のお子さんを持つ父として、『小石原で暮らすこと』について教えていただけますか?

「子どもたちを育てるには、小石原は最高の環境だと思っています。自然に囲まれていて、周りのみんなで子どもをおおらかに見守りながら育てる気質があります。うちの子どもたちも素直に育ってくれています。とはいえ、田舎ゆえの細かいしきたりや『~ねばならない』が多い事も事実なので、そういう部分は子どもたちが大きくなるまでに、少しずつ変えていけたら。そして『小さい村だからこそ出来ること』を、自分たち世代が頑張ってやってていけたらいいなと思っています」

小石原焼の窯元として、そして田舎で丁寧に暮らす家族として、とても魅力的な鬼丸さん。翁明窯元の新作と、そして鬼丸さんご家族とふたたび出会える春の民陶祭が今から楽しみです!

【翁明窯元】
http://www.020oumei.info
福岡県朝倉郡東峰村小石原1126-1
TEL:0946-74-2186
営業時間:10:00〜18:00
定休日:不定休(お正月・お盆休み有り)

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高木 亜希子
千葉県出身。
うきは市浮羽町で自然卵の養鶏を営む【ゆむたファーム】の嫁。また【あきこ商店】として筑後地方の食に関わるヒト・モノ・コトを伝える活動をしている。